最終話後残された人たち/カルフォルニア様







空気が、止まったきがした

空気が凍りつくってきっとこう言う感覚なんだろう。見開いた目は状況を把握しようと必死に働いているけれど何も頭に流れてこない

目の前では一瞬前まで閃光が行き交い、風を切る機体が二機踊っていたはずだ。
ワルキューレの歌が響き、それに乗せてもちこの声だって聞こえていた

それなのに、目の前を通り過ぎて行ったのは、コックピットが赤く濡れたジークフリードが一機



「な、どういうことだ・・・今のは、今のはなんだ・・おい、デルタ2、メッサー中尉・・!応答しろよ!!・・・メッサー!!!」


俺の声の他にも、ミラージュの動揺した声や、アラド隊長の怒鳴り声、チャックの困惑した声も聞こえた

どんなに、誰がどんな声をかけようとも、応答はなかった



もう歌は聞こえない







______________

「は、・・・どう言う事だ?遺体がない?あいつの?」

化学班やアラド隊長の口から飛び出たのは信じられない言葉だった
遺体が無いってどう言う事だ

「まぁ、細かいことを言えばメッサー中尉の遺体も、綺麗にとはいかない。白騎士に身体を撃ち抜かれているんだ・・あんなもの食らったら人の体は綺麗には残らないからな・・・そのすぐ後ろにいたはずのもちこ・御手洗だが、彼女の方は・・・綺麗に何もなかった。
彼女は現代の人間より体の作りが格段に脆く弱い。そのせいで跡形もないんじゃないかと言われたよ・・」

「な、ん、だよ・・・なんなんだよそれ・・」


この場に居る誰もが、少なくとも俺とミラージュ、そしてフレイアは動揺して居るはずだ
俺の声を聞いて隣まで来たアイツの頭のハートがクタクタにしおれている。色も濁って落ち込んでいる。

奥にいるワルキューレメンバーの4人の顔までは確認できない


「・・・メッサー中尉と、もちこが居なくなったことは事実だ・・」

「それで、それで良いのかよっ!なんで、なんで」

「良くはないさ・・・しかしそこまで突き詰めて調べることに意味はない。我々には、時間もないんだよ・・・」

「っ、それは」

不満ばかりが溜まって、疑心だけが募る
アラド隊長だって、納得なんてしてない顔だ

わかってる
わかってるのに、自分ではどうしようもないほどに苛立ちばかりが募る
止められないほどの憤怒が押し寄せてくる。

苛立っているのは遺体さえ見せてもらえない、別れも言えない状況になのか。
あの時助けに行かなかった自分の情けなさにか。
握りしめた拳は、落ち着けどころを失って、下を向いてはギチギチと悲壮な泣き声をあげている

「ハヤテ・インメルマン」

「!・・美雲・・・」

「貴方は何に怒っているの?自分に苛立っているのなら彼女に失礼だわ。私は、私たちは彼女の命の歌を感じたわ・・・メッサーのための、心を燃やす歌を・・・」

「・・・心を、燃やす」

「メッサーが、もちこが作った道を絶やさない為に私達は前に進むの。歌わなくてはいけないの。戦わなくてはいけないのよ」

コツコツと高いヒールを鳴らしてするりと俺の隣をすり抜ける。チラリと見えた手は固く握りしめられいて、白くなっている。

その表情は少し、いつもよりも険しい。
ああ、そうだ
こいつだって
みんなだって、悔しいに決まってる

「準備はいいかしら?分かったのなら自分に出来る事を精一杯しなさい。私達のステージはまだ終わっていないわ」

荒い砂風に吹かれ少しだけ汚れていようとも綺麗な長い髪をなびかせてくるりと振り返った彼女の瞳はほんの少し赤い


「ほんにもちこさんの歌、むっちゃゴリゴリやった・・・私・・・!・・歌う!」

「そうねフレイア・・メッサー君やもちこが頑張ってくれたんだもの。腐ってなんていられないわよね」

「フレフレ・・カナカナ・・・」

「ズキズキ・・・でも、負けられない・・」


そうだ
負けてなんていられねぇ

___ハヤテくんは楽しそうに飛ぶんだねぇ___

目を閉じると、いつだって優しげに微笑んでいるアイツの顔が浮かぶ


きっと忘れる事なんてない
悔しさが薄れることもきっとない

瞼の奥で俺の名前を呼ぶ声をぎゅっと抱きしめる

大丈夫だ

まだ俺は飛べる
お前の為に、仲間のために

絶対、勝ってみせるm
ALICE+