完結後メッサー君と喧嘩すれ違い
喧嘩、なのだろうか
それとも呆れられてしまったのだろうか。
前者なら少し嬉しい。対等なようで。自分を好いてもらっているようで。
後者なら、胸が痛む。
何も変わらず、小さな事に腹を立てた自分に。
俺の知らない彼女の生活を知っている人がいるように、もちろん自分にも彼女の知らない過去はある。そんな事当たり前だ。近いようで遠い距離に苛立っていたのかもしれない。
ただ会えた喜びでいっぱいだった自分は、1つ手に入ればもっともっとと強請る駄々っ子のように、今や嫉妬と欲望でぶくぶくと肥えたただの動物のようだ
遠くに見えている彼女の背中はあんなにも近く感じていたのに今は夜空の星ほど遠く感じて、ため息が出た。
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「もちこちゃんさぁ〜、ちょっと可哀想じゃね?」
「う、何が」
「はいはい。俺もそう思う」
中庭のベンチで足をぶらぶらさせているこの男、同級生の米屋は、気だるげに、しかし至極愉快そうに顔を歪めた。
そのすぐ隣に居た出水もビシッと手を挙げて居た。
ぐぐぐ、こいつらは要らないところばっかりよく見てる
「何そんなに怒ってんのよ」
「怒ってなんていません」
「嘘つけー」
ケラケラ笑う出水は長い指でグサグサ頬を刺してくる
やめろ
「あのイーレフェルトくん?すごい見てるじゃんか。俺らと一緒に居すぎてこっち来れないんじゃね?」
「えっやばい。イケメン外国人な上に友人にも気を配れるなんてやばい。それに比べてもちこちゃんたらこんなとこで何してるのかなぁ〜俺たちから見ても結構避けてんじゃね?あいつのこと」
「う、うぐ」
わかってる
わかってるけど。
あの世界ではなかった壁が、思いのほか高かったと思い知ってしまったのだ。
背の高い彼を見つけるのは簡単だけれど、私の視界は嫌なものほどよく拾うのだ。
いつだって彼の隣には可愛らしい女の子
自分の姿と比べるたびに少ししょぼくれてしまうのは仕方ないだろう
何をとっても平凡であの頃のように私と彼を繋げるものは何もない。
何もないただの凡人である私が、 彼に選ばれるとは思えない。
あの頃を懐かしく思う気持ちもある
でもあの時ほど異常な空間でもない。私と彼を縛り付けるものは何もないのだ。
ふと、あの時の気持ちが蘇る。
同情や、病的な何かがあったとしても私の気持ちは彼に傾いていた
あの時ほど近づきたいとか、同じようにしたいとか、そこまでは言わない
だけど、だけれど
どうしても心の中の醜い自分がメッサー君と誰かが並ぶ姿を見ると嫉妬で叫び出すのだ
どうして自分じゃないのか、自分以外の誰かと親しくするなんて、と。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
何で自分のものじゃないかなんて、そんな事思ってる自分が恥ずかしい
このまま自分の気持ちが落ち着くまでどこかに隠れてしまいたい
「なに悶えてんの」
「あ、イケメン君に美女が話しかけてる・・・・なーんちゃって」
このオールバックイケメンめ。
うっかりメッサー君が居る教室へ目をやってしまったじゃないか。
そこに彼の姿はなかったけれど。
「もし、あのイケメンに彼女ができたら、いや?」
「そりゃ・・・」
ほんの少し距離を縮めて、しゃがみこんだ米屋がベンチに座る私を覗き込んだ
その顔は少し優しい
「でも、できれば、喜んであげたい・・・」
祝福、できるだろうか
自信はない
「もしあのイケメンに彼女ができたら・・・俺と付き合ってくれる?」
「よし、俺でもいいぞーなんなら2人ともと付き合うか?」
「なにそれ!」
ニヤリ、とニヒルな笑みを浮かべる横で、はーいはーい、と挙手をして名乗り出る出水もまた同じ顔をしていた。
彼らなりの励ましなのか、よくわからないけれど、晴れやかな青空に似合わないどんよりとした雰囲気から一変して穏やかな空気に変わった。
「ありが」
ありがとう2人とも、元気でた
そう言ったつもりが、途中で大きな手のひらが私の口を覆って出したはずの言葉が自分の口に戻ってきた。
見上げようとすると、引き寄せる力が強くなり、思わずよろけてしまう
「それは許容できません」
失礼します
そう、普段よりも幾分か低い声が聞こえて、この手の持ち主がわかった。
口に添えられた手は外されたけれど、腕を引っ張られ、すぐに近くの校舎に入ってしまったため、友人2人を置き去りにする形になってしまった。
歩く速度が止まるのと同時に、壁に体を押し付けられる。
背中にひやりとした温度が伝わってぶるりと体が震えるのがわかった
ダン、と首横に打ち付けられた腕が視界に入る
そろりと視界を上へ上げると、メッサー君のギラリと光る瞳が、薄暗い校舎の中で光る
「・・・・どうして、何ですかさっきの。あの2人と付き合うとか、聞こえましたが」
「え?・・・ああ、それは、」
「ありがとう、と言うつもりだったんですよね。俺が遮らなければ承諾するつもりだったんですか」
「な、ちが、それは」
「あの2人は本当に友達ですか?それとも」
「ちょっと待ってって!」
イライラと責め立てる声が、まるで私が悪いことをしているように決めつけいる言い方に聞こえてくる。そもそも、なぜ私がこんなにも責められ叱咤を受けているのだろうか。それがもうおかしくはないだろうか。
「何でそんなこと言うの?・・・・それってメッサー君に怒られなくちゃいけないことなの?」
メッサー君の目が大きく見開かれる
ぐ、と口元に力が入る
変な事言っただろうか
いや、言ってないはずだ。
なのにどうしてか変な汗が出て視界が歪む
自分で言った事なのに、どう返されるのか怖くて怖くて心臓がうるさい。胃の裏がぞわぞわして、息が苦しい。
「・・・、そう、ですね」
俺には、関係ありませんでした。すいません
目の前に差し出された返事に、きゅ、と息が詰まった
自分の思いはこれで散ったのだろうか
しかし、これで解放されるはずの体はまだ壁に貼り付けられたままだ。
「それでも」
さっきよりも近くで聞こえた声にびくり、と顔を上げる
随分と近くにあるメッサー君の顔は苦しげに歪められ、瞳は不安に揺れている
その表情は、まるであの時のまま
ヴァール症候群に苦しんでいる時の彼の表情と酷似している
「貴女が、誰かに取られてしまうそうなのに黙っていられるほど、紳士ではいれません・・・冷静になれそうにもない・・・」
切なげに揺れる瞳がより一層近くで歪む
その言葉の意味と、グッと近づいた距離にかぁ、と体温が上がるのがわかる。
「俺が見ているのは貴女だけです・・・・もちこさんだけが欲しい」
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完結後もしくはifで付き合ってる設定、すれ違いからの喧嘩で焦るメッサー君との切ないお話
との事でしたが、す、すれ違ってない・・・ズレズレな気がします・・
ちゃんとご希望に添えているでしょうか
もし期待通りじゃなかったら申し訳ないです
ALICE+