もしもヒロインがヴォルドールに潜入調査に行っていたら/ユエ様
ふかふかの猫耳
ぬいぐるみのようにさらりとしていて、絨毯のようにふかふかかと思いきや、触ってみると意外にもゴワゴワしていて獣臭い
さわさわ撫で付けると、形状記憶能力でもあるのかすぐに元の尖った耳へと戻って行く。
「・・・・もちこさん。動かないでください。ペイントがズレます」
「ご、ごめん」
ムッとしたメッサー君に怒られた。
そう。今は惑星ヴォルドールへと向かう準備の真っ最中。あと数分で出発だというのだ。なのにふわふわ考え事だなんてそりゃ怒られるね。
ビシっと姿勢をただし、目を閉じて筆が止まるのを待つ。筆が止まったまま一向に再開されないので、片目をうっすらと開けて様子を伺うと眉間に皺を作ったままジッとこちらを見つめる瞳が2つ。
「・・・すいません。反対、したんですが・・・結局危険な場所に連れて行くことになってしまいました」
ゆっくりと開かれた口からこぼれたのは、萎れた声。叱られるのを待つ子供のような、そんな感じ
「・・・私は役に立てるのが嬉しいけど・・心配してくれてありがとう」
「・・・今度こそしっかり守りますので。離れないでくださいね」
「頼りにしております」
きっとあの時
あの惑星マティルドでの出来事が彼をそこまでさせているのかもしれない。
そうだった
彼はあの予言も知らない
私が数ヶ月ほど落ち込んで、色々気を配ってくれていたのは彼だった
きっと自分のせいだと責めたんだろう
何度も自分のせいだと
メッサー君のせいなんかじゃないと言ったって受け入れてもらえていたことは無かったと思う。
まぁ、若干嫌だなって思ってる事と言えばこれです。
「うっ、ぁぁ・・無理」
「我慢してください。レイナさんの合図で突入します」
やっぱりじゃん
むりすぎ
もちこちゃん瀕死だわ
機体嫌すぎるこのGは愛せないよ
伊達に旧式人類やってないのよなんとかしてワルキューレ・・・
歌でこの重力鎮圧して・・・
重い身体を引きずり、メッサー君の手を借りてなんとか、なんっとかバルキリーから降りるも、うーん・・・・フラフラだわ
もちこさんここでお留守番したい。
「・・・もちこさん、大丈夫ですか?荷物は俺が持ちます。」
「ありがと、メッサー君・・」
爽やかに荷物をかっさらって行くメッサー君はさすが男前。
しかしながらさすがは任務遂行マンである。
絶対お留守番させてくれないやつだね。
ついてこいと言わんばかりに私の荷物もしっかりがっちり持ち、手を引いてグイグイ引っ張られて行く。
俺についてこい系男子かな?メッサー君は。
ここからの潜入捜査のこなれ感半端なかった。
特にメッサー君とカナメさん。その爪どうしたん?って思う間も無く事は終わっていました。
メッサー君・・・貴方ってば演技できたんだね。メッサー君と目が合った瞬間に小さく親指を立てておいた。
案の定、人気の無い場所にみんなでひっそりと移動してから脇をゴスゴスやられましたよ。
あれ?お前何しに行ったって?
そうですね。私にもわかりません。
言っておくけど私が志願したんじゃ無いから。私ってば基本的に命令に対してイエスと頷くだけの能しかないから。
べ、べつに私が無能だって今気がついたわけじゃないんだからね
お前何しに来たんだよって目をするな!そこのインメルマン!お前も何もしていないのよインメルマン!
涙目になっている間にいつの間にやられたチーム分けされていて、情報収集する運びになったようだ。私本格的に要らなくない?
むむ、この感じのチーム分けだと私は新人だからフレイアちゃんのいる3人組でしょう
話も聞かずにぼんやり景色をたのしんでしまっていたので遠くに進んだ彼女等に追いつく為舵を切る。
よし、と意気込んで小走りに駆け寄った瞬間。
否、駆け寄ろうとした瞬間、ぐん、と腕を引っ張られて勢いで後ろに倒れこみそうになる。
結構強めに誰かにぶつかったが、完全に向こうが有罪である。
ぷんぷんだ。
引っ張ったの誰だ。
「何してるんですか・・俺から離れないでって言ったでしょう」
「すいません」
メッサー君でした。
ぐぅ
引っ張られる事数時間
数時間もたったかどうかは定かでは無いけれど、なんせ携帯もなければ時計も持ってないのである。探偵も真っ青な推理力で推測すると今はおそらく2時間は経ってる。
「ごめんね、もちこ。ほんとはもっとゆっくり観光しながら調査が理想だったけど、なんせ物騒な案件だし・・・どこもかしこもマインドコントロールされた軍の人達でいっぱいでしょ。」
はぁ、とため息をついたカナメさんは指で不自然にワルキューレサインを作る
そうするとどういう原理かわからないけれど、ブンっと指先からデジタル時計のような数字が飛び出し、時間を表示している。
「もう40分も経ってたのね」
あ、全然違った
倍以上違う
「・・・もちこさん」
「わっ何?メッサー君」
カナメさんが別方向に向かい情報収集しているみんなと連絡を取っている間、いつのまにかすぐ隣に立っていたメッサー君がこっそりと耳打ちしてくる
少しびっくりして大袈裟に振り向いてしまった。
メッサー君も驚いたのか、表情は変わらずも、頭上に鎮座している猫耳がピクピク、と動いた。
よりリアルなヴォルドール人に見せるために神経伝達?ができるらしい。詳しいことはよくわからないけど、レイナさんが言うには、簡単な感情のパターンに反応して動くらしい。すごい。未来ってすごい。
私が未来の科学にドキドキしている事がどうやらメッサー君には丸わかりだったのか、ふ、と笑うと頭をポンポンされた。
や、やめて
恥ずかしい・・・
「ふ、もちこさん、耳垂れてますよ。」
「ぎゃっ、恥ずかし、もう!いいでしょ!色々初体験なんだから!感動してるの!」
「それにしてもキョロキョロしすぎですよ」
「う、すみません・・」
「・・・嘘ですよ。ちょっとくらい観察しても大丈夫です。・・・実は、俺もちょっと浮かれてるんです」
ん?浮かれて、る?
メッサー君の横顔を見上げると、少しだけ眉を下げてチラリと私を見ると、また真面目な顔をしてあたりを観察する。
「もちこさんが同行するのに反対はしましたが、もちこさんのヴォルドール人の変装も見れましたし。映像や土産じゃなく、一緒に景色が見れてますから・・・」
少し、嬉しいんです
そう言ったメッサー君の顔は最近の張り詰めた表情の中では一等輝いていた。
「・・・うん。私も。嬉しい」
どんな美しい景色も、どんなキラキラとしたお土産も確かにすごくすごく嬉しい。
生きて帰ってくるみんなの話を聞くのが楽しい。
でも、見上げた空、吸い込んだ空気の匂い、踏み込んだ土の硬さ。全てを一緒に体験できるのは格段に嬉しいのだ。
伸ばされた手が、私の手を優しく包む
ほんの少し冷たい手を握り返す
「合流よっ、もう、私も混ぜてね」
「わっ」
「!」
キュ、とカナメさんが私の空いている手に自らの手を絡ませてくる。
「ちゃっちゃと終わらせて、お土産も買っちゃって無事みんなで帰りましょ」
「ふふ、はい」
可愛らしく猫耳を震わせてウインクする彼女は本当に女神かもしれない。
両手から感じる熱に、じんわりと幸せを感じた。
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この先も書くか迷いましたが、ifですのでこのへんで
リクエストありがとうございました
ALICE+