03
外はすっきりしていて太陽が私を照らす。
親子や中学生、サラリーマンなどたくさんの人とすれ違う。
私は携帯の画面を見ながら一言放った。

「迷った」



家を出る前に携帯で地図を出して転校先の学校を調べた。
頭の中にルートは入ったが、どうも地図と実際の道は違うらしい。地図よりもはるかに道が多い。右を見ても左を見ても新しい道が見えてくる。ここどこだ。
現在も携帯相手に睨めっこ中。どうしてこうも地図と違うのか。
こうなったら誰かに道を尋ねるしかない。そう思い一歩踏み出した。
その時、背後からポン、と肩をたたかれた。

「ね!君どうかしたのー?」

くるりと後ろを振り返ると、小学2,3年生くらいのツインテールの女の子がいた。
服装は赤いチェックのスカートに黒い上着。さらにその上に、大きな赤いリボンのついたスカートと同じ模様のケープ。私の着ている制服に似てる。

「んん?見ない顔だなー同じ学校だよね?」
「うん、まあ」

制服が一緒、つまり同じ学校なわけだ。この子に案内してもらう方が早いだろう。

「実は学校までの道が分からなくて迷っちゃって」
「え!?うちの学校の人なのに!?」

女の子は吃驚した顔をした。そのあとはっ、と何かに気付いたような顔をする。

「あ!もしかして転校生?」
「うん」
「噂の転校生に最初に会えるなんてラッキー!学校までの道案内はこのややちゃんに任せなさい!」

噂になってるのか私。
胸に手をポン、と当てて言い切ったこの女の子はややという名前らしい。
そろそろ学校行かないと遅れる気がする。鼻歌を歌うややちゃんに腕を引っ張られながらのろのろついていく。
そこでピタリ、とややちゃんが止まってくるりと私を振り返った。

「…何?」
「んー…」

ややちゃんは私の顔をじーっとみている。なんなんだ。

「…まあいいや!多分近いうちにまた会うことになるよ!」

同じ学校に居る限りまた顔を合わせるだろ、と言いたかったが、にこーっ、と笑顔を見せてくれたややちゃんが妹のように思えて、無意識に頭をなでてしまった。

「…なんかお姉ちゃんみたい」
「私も今、あなたの事が妹みたいに思えたよ」

そんな話をしながらあっという間に学校に到着。


すると、何故か私が着た瞬間に横からキャーキャー歓声が聞こえ、道をササッとあけられた。
ややちゃーん!や、やや先輩ー!、と聞こえてくるから私の事ではない。隣に居るややちゃんだろう。
それに対し、みんなおっはよー!と言いながら手を振るややちゃんは慣れているようだった。
急にややちゃんはキョロキョロとあたりを見渡し始めた。ピタリ、と目を止めたと思ったら大きな声で叫びながら手を振り出した。
その場へ目を向けると、すごくキラキラしたオーラを放ちながら歩いてる人が3人くらい。周りの人たちはキャーキャー叫んでる。
ややちゃんは手を振った後私の方へ顔を向けた。

「用事できちゃった!また会えるけどとりあえずここまで!ややちゃんの道案内は終了でーす!」
「ありがとう。助かった」
「職員室までは分かる?」
「まあ…勘で何とか。あそこの人の山がなくなればたどり着くと思う」

元気いっぱいのややちゃんにお礼を言い、ちらりと人の山を見る。
するとややちゃんがパーッと走って行って、たまっている生徒たちに何かを話しているのが見えた。すると一瞬にして散る生徒。

「はい!これで通れるでしょ?」
「う、ん。本当ありがとう」
「じゃ、まったねー!」
「またね」

激しく手を振りながらキラキラ集団へ向かって走っていくややちゃんに、控えめに手を振った。
さてと、職員室行きますか。

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