「太宰クン」「オダサク」笑いながら互いの名を呼び合うこの酔っ払い達は、何故自分を挟んでいるのだろうと三好はうんざりとした。席に着いた時、隣には堀がいたはずなのに、いつの間にか両隣を無頼派二名に陣取られているではないか。誠に遺憾である。
「織田君、織田君」楽しげに名を呼び合っていたはずなのに、気づいたら、太宰の声が少し震えてた。呼び方だっていつもとは別であるし、声はどうしようもなく、頼りなさげであった。
「君はよくやったし、今もよくやってる。俺はちゃんと分かってるよ。俺は織田君と一緒にいるのがとても楽しいんだ。君と一緒がいいよ」あらまあ、と織田は笑って、続きを促している。
「織田君、なんで俺と一緒に逝かなかったんだろうね。何で先に逝ってしまったんだろうね」
最早独り言だ。太宰は独り呟いているだけで、相槌も何も求めちゃいない。
「ま、気にせんといてええよ、三好クン。吐き出させとき、思う存分。どうせ明日にはケロッとした顔してるで、この子」カラン、と氷が音を立てて、織田の持つグラスの中で踊っている。
「気にせんでええって、オダサクさんいつもこんな独り言聞いとるんスか?」
うん、聞いとるで。太宰クン酔うとしょっちゅう前の話を持ち出してくるから。そう答えて、グラスに残った酒を織田は飲み干した。
「こんなぐだぐだ言うてるけど、結局太宰クンはワシの後にすーぐ来てくれたから、もうそれでええと思うんやけどね」
グラスをテーブルに置きながら、織田は呟くようにそっと囁いた。

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