※マンキンとのクロスオーバー
※審神者くんが既(冥)婚者
※嫁の名前はアヤコさん
「これよりっ! 主の持ち霊として子孫に託し、いつか来たる精霊王決定戦であらゆる猛者を倒すという大任を担うであろう尊き御霊プレゼンを始めるッ!」
「イヤー! 始めないで! 始めないで! そんなん始めないでェ!?」
ウオオオ! と野太く勇ましい雄叫びで盛り上がる広間で、本丸の主たる審神者だけは悲痛な悲鳴を上げていた。
顕現された刀剣男士は主たる審神者が霊媒師の類だと予め知らされており、そして殆どの時代で霊媒師というものは一定数いたこともあって左程珍しさもなく、また嫌悪の対象となることもなく、霊媒師という要素があるだけのただの審神者として今の今まで平和にやってきていた。
しかしつい先日、事態は一変した。
「そういえば主、主は代々霊媒師の家系だと言っていたな。平安の陰陽師と言えば安倍晴明が一般的に有名だろうがな、麻倉葉王という者も中々すごい術者だったのだぞ。はは、じじいだが陰陽師全盛期たる平安の頃の知識ならあるからな、頼ってくれても良いぞ」
「え、麻倉ハオ? 現王の名前じゃん。久しぶりに聞いたわ。おじいちゃん平安と平成は似てますけどハオが生きてたのは二百年前ですよしっかりして」
「ん?」
「え?」
その日は日向ぼっこと称して縁側でぼんやりと寛いでいた三日月と世間話をしていただけだった。そういえばと己が主の本職を思い出した三日月が、平安の時代に活躍したが現代ではマイナーのようであまり名の知られていない陰陽師の名を教えて謎のじじい風を吹かせようとしただけで、深い意図も意味もなかった。なかったのだ。
しかし審神者はその名に聞き覚えがあった。二百年前の生きていた頃にヤンチャしまくって歴代の精霊王達から信用ゼロで王になったらなったでフラワーなんとかとかいうとんでもねえ大会おっぱじめて精霊王達の面倒事に地上のシャーマン巻き込んだとかそういうロクでもない話で知った名であるが。
しかし現王が生きていたのは二百年前のことである。平安と平成って漢字が一文字しか違わないし、刀剣として長く在った付喪神にとっては時が過ぎ去る感覚が人とは違うから数百年単位の誤差は仕方ないんだろうなという審神者の能天気な脳みそは、物事を深く考えずにボケ老人への対応型ツッコミをしてしまった。
「精霊王?」
「え、なにその反応。ハオの話するってことはシャーマンキングの話がしたいんじゃないの? つか陰陽師繋がりがある晴明とハオがごっちゃになってんの? 晴明が参加してるかどうかねェ……いや流石に歴代参加者は知らんわ。うちも毎回参加はしてるし子孫にも参加させる気はあるけど、他の参加者ってなるとな…。ああいうのって基本的に本戦でがっつり活躍したやつじゃないとわかんなくない?」
「いや主、待て。話を進めないでくれ。その、シャーマンキングとやらの話をだな…」
「三日月もしかして参加したことあるの? それだと媒介側だろうから……えっ、やばくない? 誰と合体したん? 足利義輝? 山中幸盛?」
「待て待て、落ち着いてくれ。まずその、シャーマンキングの話をしてほしいのだが」
「…………ん?」
互いに話が中々進まず、審神者は首を傾げ三日月は大変困惑した。本丸内では比較的大らかな三日月が困り顔であることに追加の茶と御茶請けを届けに来た前田が驚き、主に何かされたんですかと三日月を庇うように立ち塞がって問う様は、まるで審神者が痴漢のような扱いで無罪の審神者はひっそり傷付いた。
そうして、シャーマンキングとそれに纏わる話をすることになり、その結果が冒頭の盛り上がりである。
「なんで……なんでぇ…僕は…僕はただシャーマンキングとシャーマンファイトの存在とかを話しただけなのに…なんでみんなあの世で安らかに眠ってる霊を叩き起こそうとすんの……僕にはアヤコさんって綺麗で可愛い最高の持ち霊がいるのに…」
「そんなナメクジみたいに畳にへばり付いて泣かないでくれ、主。刀なら主に天下取ってほしいし、あわよくば歴代の持ち主だった御方に再び活躍して頂きたいんだよ。しかもそのシャーマンファイトという戦いの場は規模が大きいし、勝てば天下が取れるなんて最高じゃないか」
「切長くんもわりと時代的な意味で闘争本能高めのヤンキーだもんね……そんな僕の子孫に天下取って欲しいの…?」
「勿論取りたい」
「え、取ってほしいかっていう質問に取りたいって回答……あまりにも強い……切長くんを媒介としたO.Sで本戦勝ち抜いて己でテッペン取りたいっていう気迫を感じるこわい」
「俺こそが長義が打った本歌、山姥切。君の子孫を精霊王にするくらい、任せておけ」
「もしかしなくても持ち霊候補という名の尊き御霊プレゼン用意していたりします?」
「勿論」
本日の近侍たる山姥切長義も、懐から端末を取り出してプレゼンデータが用意していることを審神者に見せつける。熱量が凄い。他の男士達も事前準備しておいたデータを巨大スクリーンに映し出し、審神者の魂に響くようなプレゼンをする準備は出来ているという雰囲気である。
司会者のように皆の前に立ち、最初の一声を発していた鶴丸国永は「まずだな、」と振りのような声を出しながらちらりと燭台切光忠に視線をやってみれば、最初から段取りを決めていたかのように燭台切は手を上げて立ち上がり、普段はやたらと色気がある声色を殴り捨て、熱血漢のように勇ましい漢の声で喋り出す。
「やっぱり伊達政宗公こそ王の名を座する大会を制すに相応しいと思うよ!」
「いやここはじっちゃんだろ! じっちゃんなら主の子孫もしっかり教育して戦えるようにしてくれるって!」
「石田三成様はどうだろうか。あの人は不器用だけれども、きっと力になってくださるよ」
わあっ、と。刀剣をかつて所有していた人物の名が次々と出ては他の声によって音が掻き消え、そしてまた叫ばれる。資料などのデータを使ったプレゼンよりも先に始まった、声でのプレゼン大会に審神者は完全に置いてけぼりである。だって皆の声量が凄すぎて全然聞き取れない。
有名な人物の名前をたまに耳が拾うけれど、それに反応してしまうともっとすごい声量でプレゼンが始まってしまうしそのプレゼンを掻き消す為に違う誰かが別の人物のプレゼンを叫ぶだろう。ここ地獄だっけ? と審神者が思わず遠い目になってしまうのも仕方ないことであった。
別に持ち霊が増えるのは良い。霊である本人が同意してくれるのであればきちんと関係を築いて子孫の代まで世話になることについて、審神者は別に構わないと思ってる。しかし男士達の熱量があまりにも凄すぎて、ドン引きしてるのだ。
「主! 主が持ち霊を替えるならアヤコさんはしっかりと俺が面倒見るから心配ないんだぞ!」
「包丁お前いい加減にしてくれよ何が心配ないだホント覚えてろよアヤコさん狙うなって何度言えばわかるんだよホントふざけんなよ一期はもっとしっかり教育してよホントいい加減にしてよ今度アヤコさん狙ったら一期共々そこら辺にいるきったねーオッサンの霊とO.Sさせるからなこちとら身体張ってシャーマンやってんだからな」
「包丁謝りなさい今すぐ謝りなさい主本当に弟が申し訳ございませんだからどうか汚いオッサンをぶつけようとするの止めてくださいそんな拷問流石の私でも折れてしまいます」
青褪めながら即座に包丁の頭を掴み、畳に叩きつけるように筋力によるゴリ押しで頭を下げさせた一期一振はここ最近で一番鬼気迫った表情をしていた。汚いオッサンの魂を刀身にぶつけることがそんなに嫌だったらしい。誰だって嫌だろうが、一期にとっては折れるくらいに嫌らしい。審神者は今度からマジギレした時に積極的に使っていこうと心に決めた。
「そういえば主さんってアヤコさんと冥婚してるんだよね。次のシャーマンファイトには子孫を参加させるって言ってるけど、お世継ぎってどうするの?」
「子どもなら作ってあるから大丈夫だよ。僕は学生の頃は種馬だったからね、とっくの昔に用意してある」
「え、控え目に言わなくても最低」
「是非その言葉、僕の両親にも言ってやって。早い内に仕込ませて、厳選するのが家訓なんだ」
ははは、とおかしくもない話を乱藤四郎としながら笑う審神者は、三百年後にあるであろうS.Fに挑む己の子孫の持ち霊がもしかしたら決まるかもしれないプレゼン大会の賑わいを、眩しいものを見るような目で眺めていた。