じじぃを自称する程度には、自分は年寄りの分類であると則宗は自覚している。
一文字の頭を山鳥毛に譲り、自分は気ままな隠居としてのらりくらりしていたが、世の情勢はそれを許してくれなかった。
当初、歴史修正主義者とはまたとんでもないものが出たもんだ、と則宗は思った。思っただけだ。なにせ、神の末席には座しているが所詮自分は付喪神。出来ることなぞ何もないと決め込んで、世の中をのんびりと眺めていた。
歴史修正主義者なる者に築き上げた歴史が蹂躙されるのか、はたまたそれに抗う者達によって阻止され歴史が守られるのか。長い歴史をぼんやりと眺め続けるだけしかない刀剣である自分は、此度もただただ争いの流れを眺め続けるだけだ。
この時の自分は特殊な術で己が肉の器を与えられ、歴史を守る戦いに介入する羽目になるとは、全く想像もしていなかったのだ。だから自分自身に出来ることはないから眺めているかと客観的だった。

「いやしかし、この僕が今更大勢の子守りをするとは思わんかったな」

本当、何が起こるか分からんなあ。
則宗は口元を隠すよう扇子を広げ、わははと笑う。肉の器を与えられるのも想定外だったが、こちらはもっと想定外だった。
足元で蠢く塊たちをどうにか踏み潰さないように注意を払いながらも移動する為に片足をそうっと上げようとしたが、動いた足を掴まえるように紅葉のような小さな手の平がむぎゅりとズボンの裾を握ってきてしまい、則宗は五センチほどしか上げていない足を再び畳へと落ち着かせる。

「……坊主。今は良いが、厠に行く時だけは許しとくれよ?」

小さな塊の一つ。ズボンの裾を掴んで動きを封じた戦犯の両脇を掴み、目線が合うように持ち上げる。赤くクリクリとしたまあるい瞳が則宗をじいっと見つめてくるのでこちらもじいっと見つめ返し、ゆっくりと話しかけてみた。
――加州清光。
それが持ち上げた小さな塊の正体であり、ぷくぷくと丸く柔らかな頬の持ち主であり、この本丸の初期刀でもある刀剣男士の名でもある。

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