※悪い子は出てない
※審神者が喋ってる
「刀帳というものがございます。一度でもこの本丸に体現されました付喪神で有らせられる刀剣男士の方はこちらに記録されるのです」
「え、殆ど埋まってるけど。なに、その口振りからすると、もしかして真っ白なのが本来の仕様なの?」
説明してくれてるこんのすけには悪いけど、こちら側の視線は刀帳に釘付けである。パラパラ捲って確かめてみても大体埋まってる。蜂須賀くんに持たせて、同じように捲ってもらったが真っ白になることもなく、書かれている内容は消えなかった。
「あなや。まことだな」
「所々空白はあれど、概ね埋まっているね。今体現している刀剣男士は三振りしかいないし、そもそも他の刀は持ってすらいないようだが……」
蜂須賀が不思議そうに事実を口にするけれど、こっちも不思議で訳が分からないのでどうしようもない。審神者初めて一日目の新人がいきなりの問題発生に、正しい対処と不具合修正が出来る筈もないので大変申し訳ないが、こんのすけに全てを押し付け、いや、頼るしかない。
「主よ、何やら不備があるようだがな、まあ気にせずとも、これらは人が考え、作り出したもの。人は万能でも、完璧でもなく、このような失敗もあろう。多少の失態は笑って許すのが良い。これから先、長い付き合いになるのだろう?ならば妥協せねばな」
「わ、すごい。大らかで寛大。三日月さんめっちゃ神様っぽい」
「ははは。そうさな、一応こんなじじいだが神様だ」
そうだ、三日月さんほんわかぱっぱな雰囲気で田舎に住んでるおじいちゃんみたいな謎の安心感あるけど、めっちゃ神様だった。国宝級の顔面だから親しみとかそういうのは全然湧かない系の、刀の付喪神様だった。
蜂須賀くんから刀帳を返してもらって、これどうするの?とこんのすけにしゃがみつつ訊ねてみる。所々空白で、けれど概ね埋まっている刀帳簿を見せながら。
「ふぅむ……管狐も時代についていく為に日々ハイブリッド進化をしていますからね、親をメインサーバーとして、子である私達が情報を共有出来るように根っこの部分を繋げているのです。なので、他の本丸で同じことがあったかを調べます」
「へー、親ねェ。こんのすけの親ってどんなん?めっちゃ大きくて人間を頭からボリボリ食べるタイプ?」
「やめてください!憑き物妖怪の一種だからってそんな偏見!管狐への熱い風評被害ですよこれ!私めも泣きますよ!?こんのすけ泣くとすごいですからね!ウザさが!」
ひっくり返って腹を見せながらじたばたと駄々を捏ねるように体を動かすこんのすけに、ハイハイと相槌を打ちながら無防備なその腹をワシャワシャと撫で上げる。そうやって、無防備にぽんぽん見せているなら容赦なくワシャるからどうか覚悟してほしい、こんのすけ。アニマル最高。
しかし妖怪も日々進化してるのか。すごいな、流石技術大国日本。喩え人外でアニモーでも時代に合わせて進化するんだなぁ。たまげたわ。
「しかしこうも穴が空いているとは面妙な。不具合ならばこのように虫食いの如く、疎らに記録があるのではなく、全て書き出されているものの方が幾分かはすっきりするというもの。ぬしさまの手に渡る前に何故確認しなかった、管狐よ」
「しましたよ!?職務怠慢とかじゃないですからね!?こんのすけが確認した時には何の不備もなく、真っ白でしたし!大体、その刀帳は今朝方に下ろしてもらった新品ですよ!」
「じゃあ何故その新品の刀帳に字が刻まれておる。今、ぬしさまと契約しているのは我ら三振りだけ。なのにどうして契約しておらぬ、未所持の刀剣の名が幾つも刻まれておるのじゃ」
「知りません!こんのすけが知る訳ないじゃないですかぁ!助けてー!真面目に仕事した結果が冤罪とか絶望ですぅ!」
もうこんのすけ帰ります!おうちに帰りますぅ!とか叫びながら巣穴として使ってる管にチュルルンと滑り込もうとしてるので、まあお待ちよ、とその尻尾をひっ掴む。
「ま、鍛刀していればいつかは埋まるものなんだろうし、刀帳の謎は解けたら解けたですっきりするだけだから無理しなくてもいいよ。それよりもまずあれだ、資源使って一からやる鍛刀。作業中の鍛冶場って現代っ子としては大河ドラマとかでたまに見かけるかゲームでたまに見かけるか、あと写真でたまに見かけるかだけだからどうすればいいのか分からないんだよね。礼儀とかあるの?」
作業するんだから素足じゃなきゃ駄目とか、作業着じゃなきゃ駄目とか、火花飛び散るからゴーグル着用が義務とか、鉄は熱いから軍手装備推奨とかあるのだろうか。ド素人な審神者なものでそこら辺が全く分からない。刀帳よりもこちらの方が由々しき問題だ。礼節は重んじるべきである。
「そうですねえ、こういう時は習うより慣れろですよ審神者様。さ、とにもかくにもやってみましょう!つまりは初鍛刀です!チュートリアル再開ですよ!」
「なんでそんなにチュートリアルさせようとするの?」
「むしろ審神者様は何でチュートリアルしようとしないんです!?」
ここまでチュートリアルすんなりさせてくれない審神者初めて!!こんのすけ困っちゃう!とやはりジタバタしながら叫ぶこんのすけ。いや、別にチュートリアルしようとしないんじゃなくて、決められた手順を進めるしかないチュートリアルをやるより、ゆっくり自分のペースで一つ一つ覚える方が性に合ってるのだから仕方ない。それに刀帳の不具合がもうすでに発見されて手順が狂ってるだろうし、もう自由気ままでいいじゃないか。
「うーん、仕方ない。三人とも、新しい仲間増やすから鍛刀手伝って」
もがく様に蠢くこんのすけの首根っこを引っ掴み、三人と呼んではいるけれど一応は「三振り」に声をかけてみる。各々が返事をしながら手伝ってくれるという意思を示してくれたので、じゃあちょっと頑張ろうかな、なんて思いながら改めて気合を入れ直した。
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中古本丸だから刀帳もお察し。
こうやって仲間が平和に増える本丸です。