※2012年より前に書いた特級呪物
※ログ残ってたから供養



「マスター。購買で売ってる物が限られてるからとはいえ、毎日それだと不健康極まりない」

お昼頃になると、聖杯戦争中と言えども食堂はそれなりの賑わいを見せる。夕方のアリーナ解放の時間まで暇だからお腹を満たそうと売店でカレーパンを購入したところで、サーヴァントからの一言。

「でもココ、惣菜パンしかないよ?」

生徒会NPCの誰かが「購買にあるのは元になった人物の趣味だ」みたいな事を言っていた気がする。そのNPCはパン好きのようだから、総菜パンしかない筈だ。おにぎりがどうのこうの、とかリクエストの話をした気がするけれど叶えられる様子はなさそうだし。
食堂の入口付近にいる生徒会NPCの言葉をぼんやりと頭の片隅に思い出しつつ返してみれば、共に戦ってくれている相棒であるアーチャーが額に手を添えて呆れたように息を吐く。

「一つ提案がある。マスター、今後は昼食はマイルームで済ませてくれ」

マイルーム。この聖杯戦争で個人個人がそれぞれ与えられている部屋であり、私の場合は2−Bがマイルームとなっている。
乱雑に積み上げられた、けれども中々のバランスで下乗を保っている机や椅子達と赤い布が印象的、というかそれしかない私達のマイルーム。そこで昼食を取れと、サーヴァントは言う。
別に提案を受けても構わない。
しかし疑問が浮かんだ。宛がわれたマイルームを脳内で思い浮かべると出てくる当然の疑問。

「でもマイルームにはキッチンなんてないから、結局購買で買うことになるよ」

「心配は無用だ。君の昼食ならば私が作ろう。何、材料さえ揃っていれば後はどうにでもなる」

おお、と声が漏れる。
自分で言うのも何だが、引き当てたサーヴァントは高性能(ハイスペック)だ。自分を役立たずなどと言っているけれど、此方からしてみれば至らないマスターを支えてくれる頼もしき相棒。
彼が「心配は無用」と言うのなら、次の昼食からは総菜パンからの脱出となる。そう確信した。
記憶(メモリー)記録(ログ)も抜け落ちたので自分の知ってる食事の味はやきそばパンやカレーパンだけだ。だから彼が用意してくれる昼食というものは、自分にとっての未知の味。何だかとても楽しみである。

「うん、解った。楽しみにしてるね、アーチャー」

「任せろ。自慢ではないが、料理にはそれなりに自信があるものでね」

いつもよりも少し楽しげに笑う彼を見て、嗚呼、この人は料理が好きなんだろうなと感じた。この表情はとても新鮮。もっと早くに知っておけば良かった。
私のお腹と舌は満足するだろし、アーチャーも楽しい。なら、それで良いと思う。
ほぼ真っ白の自分の記憶(メモリー)。そこに彼の作った美味しい昼食を私が食べるという毎日の行為が加わるのは、ほぼ確定した未来だった。




「あ、ねえアーチャー。昼食なんだけど、辛い物は止めてね」
「了解した。しかしどうして《辛い物》と限定したのだ?」
「ほら、三回戦の6日目に『本日限定!』みたいな煽りで売られてた麻婆豆腐があったでしょ?初めてパン以外が売ってたから思わずいっぱい買っちゃったけど、私どうやら辛い物苦手みたいで、あれ食べた瞬間舌がヒリヒリしちゃってその日一日味覚がおかしくなっちゃったの。だから辛いのは抜きにして?」
「…………マスター、アレは常人なら誰もが…いや、辛さに耐久がある者とて味覚が狂うものだぞ…」

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