あんたが神威?


ここは江戸。宇宙船が行き交うターミナルの中、一人の夜兎であろう男その名は阿伏兎。彼は今一人の女の子を探している。
なぜ彼がこの夜兎族にとっては相性の悪い地球にいるかというと、話は数日前に遡る…


「鳳仙の娘!?…鳳仙の旦那娘なんかいたのか…すっとこどっこい」

宇宙海賊春雨第七師団宇宙船の中、ここの団長である神威と副団長の阿伏兎は話していた。

「…で、 阿伏兎その鳳仙の旦那の娘をこの第七師団に連れてきてくれ♪ 」


じゃぁ頼んだよ…あ、もちろんこれは鳳仙の旦那からの頼みだと無邪気な笑みを浮かべ神威は立ち去った。

そして、今に至る。

(いやいや…顔もわからないのにどうやって探せっていうのさ…このすっとこどっこい)

心の中で呟きながらもそれらしき人物を探した。
と、その時どこからか声が聞こえた。

「ねぇ…あんたが神威??てか夜兎…??」

阿伏兎はどこからの声だ?と思いながら周を見渡した。しかし、それらしき人物は見当たらない。
その時またー

「下!あんたの目の前の下!ここにいるんだけど」

ぁあと思いながら阿伏兎はその声の主を見た。

(え…まってまて…この子が鳳仙の娘…??おじさん想像と違くて驚いちゃってるよ…え…え?)

心の中でたくさんのことをつぶやいていると

「だから、あんたが神威??もぅ2回目なんですけど」

とその鳳仙の娘らしき人物がまだ幼さの残る顔を上目遣いであげながら聞いてきた。
しばらくジッとプリンセスの目を捉える。

「ぁあ〜…俺は阿伏兎だ。…多分お前さんが言ってる神威ってのはうちの団長のことだ 」

阿伏兎は言い返した。
すると、さっきまで冷たい人に懐かない猫のような態度をとっていた子が笑顔で

「なるほど…!阿伏兎ね!あたしはプリンセス、よろしくね!」

とまるでさっきまでの人物を思わせない様な変化に阿伏兎は呆然としたが二人の間にあった壁が少しなくなったと感じた。

そして二人は宇宙船に乗り込み春雨第七師団宇宙船に向かった。ここでプリンセスはなぜ第七師団宇宙船があるのにそれで向かいに来なかったのか疑問に思ったが大人の事情かと思い聞いたりはしなかった。

「プリンセス…お前さん宇宙船初めてだろ?」

と阿伏兎に聞かれプリンセスは

「うん…初めて、今までずっと吉原にいたから…」

と初めての宇宙に興奮しながらも懐かしい記憶を思い返すように答えた。

阿伏兎がその言葉に返事をしようとした時…

「…あ!そうだ、月詠と日輪から貰ったらお団子があるんだった」

た〜べよっと言いながらまた無邪気な幼さの残る笑顔でその団子を食べ始めた。
阿伏兎も食べる?と聞いてきたので、あまり甘いものが好きではない阿伏兎だが、その笑顔に負け1つ貰うことにした。