吉原炎上編


丁度、鳳仙と神威の戦闘が始まった頃だ。
月詠達は密かに準備を始めていた。

「…ぬしらに話しておきたいことがある。」

沈黙していた空気の中月詠の声が響いた。

「…1年前、プリンセスがいなくなってから吉原の唯一の日輪(太陽)も消えたのじゃ。…日輪が吉原に連れ戻されたころ、丁度、プリンセスがこの吉原に来たのじゃ。…8才じゃった。まぁ、ここ吉原では8才など珍しいものではなかった。」

一ぉい。日輪。一

と、日輪はその声の主鳳仙を見た。
すると、その隣にはまだ幼いプリンセスの姿があった。

一なんだい。…鳳仙。一

キツく鳳仙を睨む日輪。
鳳仙の隣にいたプリンセスは日輪の元へ投げ飛ばされた。

一!!!…あんた、なにしてんだい!?最低だよ!一

日輪はプリンセスを自分の胸に抱き鳳仙に強く言った。それを見てフンッと笑った鳳仙。

一日輪。お前が育てろ。…それは、わしの娘だ。一

鳳仙は立ち去った。その言葉に日輪は目を見開いた。そして、眉をひそめ優しくプリンセスを抱きしめ。

一あんたのことはアタシが守るから。…あんなやつに似ないでおくれ。一

その日から、日輪には笑顔(太陽)が戻った。
日々のプリンセスの成長が嬉しかったのだろう。周りから見たら、親子だった。

………

「わっちは、吉原の、日輪太夫の太陽もまた見たいのじゃ…。」

その話を聞き、しばらく沈黙が続いた。


「…それだけじゃ。…すまぬ。わっちがもっと早くに逃がしていれば…。」

「謝る必要なんてねーよ。元から俺達ゃ逃げるつもりなんざ更々ねーし。」

「むしろ感謝しています。助けてくれたし、百華の着物も貸してもらっちゃって。」

「いや。…本当に行くのか、ぬしら。」

「行かなきゃ、晴太君が死にます。」


「行けばぬしらも死ぬ。夜兎が五人。軍隊一個あっても足りぬぞ。」

「兄貴(アイツ)は私がなんとかしなきゃいけないネ。」

「誰がためにいく。晴太か、日輪か。」

「…ちょっくら、2つお日さん取り戻しに行ってくる。」

銀時はゆっくりと立ち上がる。

「こんな暗がりに閉じこめられるうちに、みーんな忘れちまった太陽を…。どんな場所だろうとよ、どんな境遇だろうとよ、お日さんはあるんだぜ。てめーの太陽(おひさん)がよ。」

銀時は鉄で覆われた黒い空を見上げる。

「雲に隠れて見えなくなっちまうこともよくあるがよ。それでも空を見上げてりゃ、必ず雲のすき間からツラを出す時がやってくる。 だからよォ、俺達ゃそいつを見失わねーように、空を仰ぎ見ることをやめちゃいけねーんだ。背筋しゃんとのばして、、お天道様まっすぐ見て、生きていかにゃならねーんだ。」

「……もう1つの太陽は日輪のことか。」

「あぁ、あの怪力女がいなくなってから笑顔(輝き)を失っちまったんだろ??」

「……。」

全員、準備万端と立ち上がる。

「空を見とけって。あの鉛色の汚ねェ空に俺達が、バカでかい太陽(おひさん)打ち上げてやるってな。」

「…悪いが断る。わっちも、共に行くからのう。」

「!月詠さん、それはダメです。」

「吉原との戦いに、吉原の人間連れてくわけにはいかねー。てめー、裏切り者になるぜ。」

「言ったはずじゃ。わっちが護るのは日輪じゃ。吉原に忠誠を誓ったことなど一度もない。晴太を見殺しにするほうが余程の裏切りぞ。…それに、わっちは成長したプリンセスの姿が見たいのじゃ。例え戦うことになろうとも…。」

煙管を口から放した月詠は、振り返り微笑する。
その顔には、育て親(親)の顔があった。

……

その話を新八から聞きプリンセスは目から大粒の涙を流した。

(…日輪…!)


「さぁっ!行きましょう!」

「…出来ない。…あたしは日輪と月詠に会うことが出来ない。」

「!なぜですか!?」


「…この1年であたしは変わった。…たくさんのヒトを殺し、たくさんの血を浴びた。…そんなあたしが太陽を見ることなんて…許されない。…見るしかくがない。…それに、本当の息子、晴太にも会えたんだ。あたしなんてもうお邪魔だよ。」

「勝手に自分に鎖かけてんじゃねぇーヨ!!!」

我に返った神楽が、叫んだ。

「会いたいなら会えヨ!!!…ガキのくせに調子のんじゃねぇヨ!!!…親を笑顔にさせんのが子供の役目だろぉ〜!!!」

苦しいはずなのに声をあげる神楽に

「…あたし…会いたい!…日輪に…会いたい!!!」

プリンセスは涙を流し叫んだ。

「じゃぁ!!行きましょう!!!」