万屋


「新八〜、帰ったぞぉ〜」

「もお〜どこまで行ってたんですか〜?
今日は妙に遅いじゃないですかあ〜って‥誰!?」


玄関の方から聞こえる銀時の声に
新八は、おたまを持ち玄関の方へ顔を向けた。
しかし、その先には銀時、定春ともう一人
小柄な女性がいることに驚きの声を上げた。

プリンセスは、ぺこりと軽く頭を下げた。

「なんだヨ〜。朝から騒がしいネ‥‥うぉぉお!誰ネ!その女!」


目を擦りながら寝癖頭の神楽が新八と並び玄関へと顔を向け神楽も驚きの声を上げた。


「だあ〜、うっせーんだよ!
まあ、とりあえず、上がれ。」


銀時はダルそうに頭を掻きながらプリンセスにそう言い放ち靴を脱ぎ居間へと向かった。
そんな適当な銀時の態度にプリンセスは
困ったような表情を浮かべた。

「まあ‥そんなところでもアレですし‥
上がってください。」

「そうネ。銀ちゃんもそう言ってるアルし。
上がるネ!」

「‥は、はい‥」


新八と神楽からのフォローの言葉もありプリンセスは、お邪魔しますとぺこりと頭を下げ、新八と神楽につづき居間へと足を運んだ。




「まあ、軽く言うと、コイツは俺の幼馴染み?で、戦友。」


「はい、その通りです‥‥てか、この玉子焼きすごく美味しいですね。」


「いやいやいや‥軽すぎでしょ。」

「新八!!!玉子焼き美味しいって〜!
良かったな〜。新八と銀ちゃんのも食べてヨロシイネ!!!」

「わっ、本当ですか?貰っちゃいますよ。」

万屋の緩い空間に、すでに馴染んでいプリンセス。
プリンセスは、新八の玉子焼きに箸をのばした。

「これから、そのお〜プリンセスさんは
どうするんですか?」

新八の問いにプリンセスは、箸を止めた。
そして、手元に箸を置き、腿に手を乗せ
顔を下に向けた。

「‥‥んて‥‥な」

「ああ?何言ってんだ。おい。」

プリンセスから発せられる微かな言葉に
耳を向ける一同。しかし、小さすぎて所々聞き取れず銀時は苛立ち聞き返した。


「行く場所なんてない‥の。」


「んなもんわかってら。
ここに入ればいいだろ?な?プリンセス」


銀時のその言葉にプリンセスはパッと顔を上げ
銀時の方へと顔を向けた。そんなプリンセスの目には涙が浮かんでいた。

「そうですね。行く場所がないならここにいてください。まともな人が必要ですし。」

「そうネ!もおプリンセスここに馴染んでるネ!
一緒にいたいアル‥」


プリンセスの目に浮かぶ涙をみて新八と神楽も賛成した。

「ありがとう‥すごく嬉しい」


鼻をすすりながら涙を拭くプリンセスに銀時は、自分の玉子焼きをプリンセスの皿へ静かに移した。

「改めまして、Msプリンセスです。
よろしく、銀時、新八君、神楽ちゃん!」

満面の笑みをプリンセスは浮かべた。