02
今日は何だか、空が雲で覆われ太陽も隠れ夏にしては妙にどんよりと涼しい日だった。そして、プリンセスと桂が会うようになってから初めての天気だった。
「‥雨でも降るのかな。」
外の淀んだ空を見上げ、不安げに口にする。いつものように、桂と会う時間帯になり茶屋へと向かう。昼下がりも空は今にも雨が降り出しそうなほど濁っていた。
茶屋に着くと、昨日と同じ様に縁台に先に桂がいた。遠くから見ると桂の表情が少し暗い気がしたプリンセスだったが特に何を思うわけでもなく声掛ける。
「こんにちは。お坊さん。」
「坊さんじゃない、ズラだ‥あ、間違えた。桂だ。プリンセスか、すまない少し芒としていた。」
今まで見たことのなかった少し動揺した様子の桂にプリンセスは、一瞬止まり驚くもすぐに口元を押さえ笑う。
「今日の桂さん、何だかいつもと違う」
笑みを浮かべたまま隣に腰を下ろし、いつもの様に茶と団子を頼むプリンセス。ふと桂の元に湯のみが無いことに気づき追加でもう1つ頼む。やはり今日の桂は少し抜けているというか、何かを凄く考え込んでしまっている気がした。
普段からそんな冗長なわけでは無いがいつも以上に喋らない桂。そしてプリンセスもそれと合わせる様に、静かに茶を飲み、団子を食した。
「‥すまない。今日はあまり話を聞くことが出来なかった。‥また‥」
別れ際、2人は向かい合い、プリンセスはいつもと同じ様に「また明日」とさようならを告げると思ったのだが、桂は「また」とその後の言葉を言うか、言わまいか、悩み結果、それを飲み込んだ気がした。
プリンセスは不安げな表情で桂を見つめる。桂の目は、プリンセスの目を見ていたがそれでも何処か遠くを見つめている様な目をしていた。
そして、お互い目を離しそれぞれの帰る場所への道に向かって歩き出した。足を止めて、振り返るプリンセス。桂は真っ直ぐ道を歩いていた。プリンセスはその桂の後ろ姿が、遠くに、小さくなっていくのが、何だかこれから先、明日、明後日と、「もう会えないのでは無いか」とその様な衝動に襲われた。そう思った瞬間にはもう、桂の元へ走りだした。
「待ってください。ちゃんと、また明日‥って行ってください‥」
何処か遠くへ行ってしまいそうな桂を引き止めるかの様に桂の背に抱きつき、服をギュッと強く皺になるぐらい掴む。
「もう、会えないのでしょうか‥明日、明後日、ここに来ても、もう‥会えな‥い‥」
ついには涙が溢れて、それは次々と言葉を発するごとに流れ、息が詰まる。プリンセスの震える声に桂は惜しむように眉をひそめ、目を閉じた。
「桂さん‥私、貴方のことが‥」
そう、「好き」とプリンセスが言い掛けた時、桂はプリンセスを自身の胸に引き寄せ、そして強くプリンセスの身体を包み込んだ。
「‥桂‥さん‥」
「プリンセス、今は、まだ、すまない。‥少し待っていてくれないか。」
その言葉にプリンセスは桂の胸から頬を離し桂を見上げる、桂はその涙で赤くなった瞳を少し悲しげな表情で見つめた。
このまま離してしまうと彼女は支えがなくて膝から崩れ落ちてしまうのではないかと、それほどプリンセスは震え「離して欲しくない」と拒むような瞳を向けていた。
しかし桂は一度目を閉じ、そして開きプリンセスから離れ、プリンセスに背を向け歩き出した。
その後ろ姿にプリンセスは、引き止める言葉も見つからずただ黙って潤む視界の中でその遠く離れて行く姿を見つめていた。
「‥雨でも降るのかな。」
外の淀んだ空を見上げ、不安げに口にする。いつものように、桂と会う時間帯になり茶屋へと向かう。昼下がりも空は今にも雨が降り出しそうなほど濁っていた。
茶屋に着くと、昨日と同じ様に縁台に先に桂がいた。遠くから見ると桂の表情が少し暗い気がしたプリンセスだったが特に何を思うわけでもなく声掛ける。
「こんにちは。お坊さん。」
「坊さんじゃない、ズラだ‥あ、間違えた。桂だ。プリンセスか、すまない少し芒としていた。」
今まで見たことのなかった少し動揺した様子の桂にプリンセスは、一瞬止まり驚くもすぐに口元を押さえ笑う。
「今日の桂さん、何だかいつもと違う」
笑みを浮かべたまま隣に腰を下ろし、いつもの様に茶と団子を頼むプリンセス。ふと桂の元に湯のみが無いことに気づき追加でもう1つ頼む。やはり今日の桂は少し抜けているというか、何かを凄く考え込んでしまっている気がした。
普段からそんな冗長なわけでは無いがいつも以上に喋らない桂。そしてプリンセスもそれと合わせる様に、静かに茶を飲み、団子を食した。
「‥すまない。今日はあまり話を聞くことが出来なかった。‥また‥」
別れ際、2人は向かい合い、プリンセスはいつもと同じ様に「また明日」とさようならを告げると思ったのだが、桂は「また」とその後の言葉を言うか、言わまいか、悩み結果、それを飲み込んだ気がした。
プリンセスは不安げな表情で桂を見つめる。桂の目は、プリンセスの目を見ていたがそれでも何処か遠くを見つめている様な目をしていた。
そして、お互い目を離しそれぞれの帰る場所への道に向かって歩き出した。足を止めて、振り返るプリンセス。桂は真っ直ぐ道を歩いていた。プリンセスはその桂の後ろ姿が、遠くに、小さくなっていくのが、何だかこれから先、明日、明後日と、「もう会えないのでは無いか」とその様な衝動に襲われた。そう思った瞬間にはもう、桂の元へ走りだした。
「待ってください。ちゃんと、また明日‥って行ってください‥」
何処か遠くへ行ってしまいそうな桂を引き止めるかの様に桂の背に抱きつき、服をギュッと強く皺になるぐらい掴む。
「もう、会えないのでしょうか‥明日、明後日、ここに来ても、もう‥会えな‥い‥」
ついには涙が溢れて、それは次々と言葉を発するごとに流れ、息が詰まる。プリンセスの震える声に桂は惜しむように眉をひそめ、目を閉じた。
「桂さん‥私、貴方のことが‥」
そう、「好き」とプリンセスが言い掛けた時、桂はプリンセスを自身の胸に引き寄せ、そして強くプリンセスの身体を包み込んだ。
「‥桂‥さん‥」
「プリンセス、今は、まだ、すまない。‥少し待っていてくれないか。」
その言葉にプリンセスは桂の胸から頬を離し桂を見上げる、桂はその涙で赤くなった瞳を少し悲しげな表情で見つめた。
このまま離してしまうと彼女は支えがなくて膝から崩れ落ちてしまうのではないかと、それほどプリンセスは震え「離して欲しくない」と拒むような瞳を向けていた。
しかし桂は一度目を閉じ、そして開きプリンセスから離れ、プリンセスに背を向け歩き出した。
その後ろ姿にプリンセスは、引き止める言葉も見つからずただ黙って潤む視界の中でその遠く離れて行く姿を見つめていた。