初陣


主から指令を受け、プリンセスは第一部隊と共に転送装置の設置されている建物へ向かっていた。門構えを超え、真っ直ぐに長く続く廊下を歩く。山姥切を先頭に連なる一同。その1番後ろでまだ馴染めていない為か、控え目について行くプリンセス。

「そういえば、僕たちが始めて会ったのはここだったよね、プリンセス」

ふと髭切が、場を和ませる為にプリンセスに目を向け言葉を発する。プリンセスは、某っと何か考え込んでいたようで反応が遅れ、慌てた様に顔を髭切に向けた。プリンセスと目が合い、ニコッと笑みを浮かべる髭切に、プリンセスは目を晒す。

「‥そうね。」

少々素っ気ないプリンセスの返事に場を和ませるつもりが、どうも更に強張ってしまった様だ。プリンセスは折角話しかけてくれたのに、なぜ自分は素っ気ない返事をしてしまったのだろうと顔を苦める。そんなプリンセスの様子に気づいた三日月は、特に話しかける訳でもなく黙って見守る様な視線を送るだけだった。

「プリンセス。改めてよろしく頼む。俺は、隊長の山姥切だ。まあ、俺の名前なんか覚えなくても良いがな。」

転送装置の円状の石盤に乗ると、皆の顔が良く見える状態に広がり、流石は隊を率いる隊長らしく山姥切が先頭を切って自己紹介をするが、自身を卑下する様な言葉も共に発せられた。

「僕は、髭切。でこっちが、え〜と」
「膝丸!兄者、忘れないでくれよ」
「冗談だよ、弟の事もよろしく頼むよ」

情緒が平行で、のんびりとした口調の髭切と、波のある口調の膝丸。2人が、どれだけ仲が良いかを思わせる息ぴったりの会話にプリンセスの心が少し和んだ。

「俺は、大典太光世だ。」

キリッとした鋭い目つきでプリンセスの瞳を捉えてから視線を落とし、何か言いたげに言葉を発っそうとしたが躊躇し1つため息を吐く大典太。やはり、プリンセスが共に任務に赴く事にどこか納得していない様だった。

「そして、俺が三日月宗近。まあ、じじぃでよい」

どこか貫禄の溢れる三日月の佇まいにプリンセスの瞳が揺れ、これが第一部隊か、と改めて一人一人再認識して息を呑んだ。

そして、転送装置が作動し、大きな地鳴りと共に目が痛くなるほどの光が石盤とプリンセス達を包み込んだ。



眩しさに閉じていた目を開けば、目の前に広がるのは緑広がる大地、そして地に点々と咲く小さな花々。ひらひらと羽を上下に動かし飛ぶ、蝶。その蝶に腕を伸ばし指に蝶を乗せる髭切が目にとまる。

「随分と、長閑な所だな」

どうやら此処は周りを一望できる山の途中の岸らしく辺りを見渡し、言葉を発したのは膝丸だった。本当にここで合ってるのか、とさらに続けると、山姥切が考え込む。

「一度任務の再確認をしよう」

山姥切の言葉に一同同意を示し、こんのすけの鈴からプロジェクターによって様々な分析データが表示される。

「主様からの今回の指令は慶長5年、山脈にて時間の壁を破るノイズが観測された。これを調査し時間遡行軍による歴史改変を阻止せよ、です」

それだけか、とこんのすけに問う山姥切にこんのすけは更に言葉を続ける。

「あと、もう一つ。詳しい事は、プリンセスが知っている、との事で。」

皆がプリンセスに注目する。一斉にプリンセスに集中する視線、プリンセスは少々強張った顔をしていた。

「今日がもし、慶長5年、4月17日であれば明日18日に、枝垂桜の変が起こります。」

重々しく口を開くプリンセス。さらに続ける。

「私の前主が、亡くなった日です。」

悔しそうに顔を顰めてプリンセスは口にする。すると大典太が、だからか、と何か一人納得した様に口にする。

「何故、刀剣の中に女が一人いるか、って事だ。」

素っ気なく言う大典太の言葉に、何処か引っかかるプリンセスは不審気な表情を浮かべる。

「‥貴方の態度、発言、全てが私の勘に触るの。言いたい事があるならはっきり言って下さい!」

自身よりも遥かに背の高い大典太の前に立ち、怒気の篭った辛辣な口調で鋭い視線を飛ばすプリンセスに、大典太は、1つ大きくため息をついた。

「なぜ女が、戦場に出る。」

大典太の言葉に、カッと目を見開くプリンセス。その顔には衝撃を受ける反面どこか哀しげだったがすぐにその表情は鬼の形相となった。そして、プリンセスは力一杯振り絞り、自身よりもはるかに大柄な大典太の胸ぐらを掴み、引き寄せる。まさかそんなことされるとは思わなかった為、いとも流れ流れに引き寄せられ間近に、プリンセスの鋭い視線が自身の瞳を貫く。

「今の貴方の発言に、イラつきました。私の力、女の力を見せます。私と、今、ここで、手合わせをして。」