同じ境遇


「こうやって揃ったのは、いつぶりだろうな。」

はじめに口を開いたのは薬研だった。
本丸のある一室にて、長谷部、宗三、薬研、そしてプリンセスがいた。

「あなた達に、またこうして出会えて私は嬉しいわ。」

薬研の言葉に返事するプリンセス。
その声には気持ちが高まり口先が震えるのを抑えるように力が込められていた。

「プリンセス、主からも伝えられたと思うが俺たちがここにいる理由は時間遡行軍の歴史修正の阻止だ。」

ことの核心をつく長谷部。

「ええ‥わかってる‥ただ、私には、剣を振るう知識がない。」

伏せ目がちに言葉を零すプリンセスに宗三が近づき、その隣に座る。宗三へと顔を向けるプリンセス。その顔は不安気に歪んでいた。

「プリンセス、僕達はよく似ている境遇でしたね。」

宗三の左右異なった色の瞳がプリンセスの瞳に交わる。

「‥宗三、貴方は剣を振った時、怖くなかった‥?」

私は怖いの、と後から震える声で言葉を零すプリンセス。すると宗三は口元に穏やかな笑みを浮かべた。

「プリンセス、僕達は刀剣として生まれながらほとんど戦場に立つことはなかった。でも、こうして人の形を得て戦うことが出来るのです。」
「宗三‥」

思いのこもる強い口調で語る宗三。

「これ程、嬉しいことがありますか?」

プリンセスは、宗三の一言にハッと目を見開いた。

信長の愛刀として懐に収められていた宗三。お市の守り刀として懐に収められていたプリンセス。この2人にしか理解できない境遇。
プリンセスは一度深呼吸をし、宗三に笑む。

「宗三、貴方には、やっぱり敵わない。」

そしてプリンセスは立ち上がり長谷部に目を向ける。その目は何かを決意した様に真っ直ぐ強かった。

「行きましょう‥賤ヶ岳へ。」



本丸に鈴の音が響く。本丸の中心にて集まるのは、長谷部、宗三、薬研、大和守、加州、そしてプリンセスであった。

「隊長の長谷部だ。次の出陣先は1583年、賤ヶ岳に決まった。」

隊長の長谷部を前にプリンセスは凛とした表情で話を聞く。

「つまり、賤ヶ岳の戦い。柴田勝家の敗北を無かった事にしようとしているのでは無いかと主の予想だ。」

柴田勝家が戦に勝てばお市も死ぬ事はない、プリンセスは、その様な歴史の変化もありなのでは無いかと思う気持ちを消し去る様に首を振るう。

その様子に気づいた大和守は、自身もその様な経験がある故、同情する様に眉を下げ見つめる。

「それから、プリンセス、主からこの様な伝言を貰った。」

その場にいた皆が、何だ、と不思議そうにその言葉を待つ。

「心の迷いは、断ち切れとの事だ。」

長谷部から発せられた主からの伝言にプリンセスは深く頷き、長谷部に覚悟を決めた眼差しを向ける。そのプリンセスの眼差しに長谷部も頷く。

「出陣だ!」

時空転移装置が黄金の光を放つのと共に長谷部は声を上げた。