鶴の恩返し
プリンセスは着慣れない衣装を身につけ、装飾品を施し、鏡の前で身なりの確認を行った。ほんの僅かな訓練を終え、無事ようやく審神者として、刀剣男士と共に本丸に赴くのだ。
「なんか…しっくりこない…」
今まで目にしてきた審神者がどれほどこの衣装が似合っていたか、思い返すと鏡の前に映る自分の姿は随分と様になっていないように見えた。
それでも、プリンセスは正真正銘、審神者となったのだ。よし、と声を張り上げプリンセスは審神者としての第一歩を踏み込んだーー。
「そろそろ…ついた頃かな…」
刀剣福祉課、職員部屋で先輩は、先ほど挨拶に来た、すっかり審神者となってしまった元刀剣福祉課職員の彼女とーー彼女の刀剣男士の姿を心に浮かべ、雲一つない空を見上げた。
同じく、どこかの雲一つない空の下ーー。
山地に囲まれたとある本丸の門構えに審神者と五体の刀剣男士がたたずんでいた。
「これが…私たちの本丸ですか…」
プリンセスは、未だ信じられないという様な表情を浮かべ本丸に目配せた。すると、隣にたたずむ三日月宗近が彼女を優し気な瞳で見つめた。
「ここから、始まるんだ」
プリンセスは顔を上げ、溢れる喜びを顔に浮かべ大きく頷いた。すると、プリンセスの手がギュッと握られた。彼女が驚いた様子で顔を下げると、今剣が無邪気な笑みを浮かべプリンセスを見上げていた。
「皆で、せーのっ!で飛び越えよう!」
「面白いじゃねぇか」と何処か乗り気の和泉守兼定に堀川国広は「兼さん楽しそう」と顔を綻ばせた。
そして皆が一直線に並び、加州清光が軽い口調でいう。
「はーい、じゃあ俺が言うね、せー…」
「ちょっと待った!」
突然、背後から響いてきた大きな声に皆、肩を跳ね上げさせた。恐る恐る振り返るとそこにはーー。
「鶴丸国永!どうして…!」
あの時ーー蔵で横たえていたあの鶴丸国永がそこにはいた。輝かしい程に笑みを浮かべ「よっ!驚いたか?」片手を上げている。
プリンセスは、元気そうな彼の姿にホッとしてはいるものの、なぜこの場にいるのか不思議で仕方が無く、首を傾げた。
「どうしてここに…?」
「…あんたが審神者になったって聞いて飛んで来たんだぜ?」
大きく瞳を見開き、瞬かせる彼女に鶴丸国永は、相変わらずだな、と一度ふっと笑みを浮かべ、真剣な眼差しを注いだ。
「審神者が教えてくれたんだ。俺も主も君に恩があるから…力になりたいんだってな」
確かに彼の言う通り、鶴丸国永と今の彼の主の引継ぎを行ったのはプリンセスであったーー。
そして鶴丸国永は、当惑した様子で自分を見つめるプリンセスの肩に、とんっと手を添えた。
「俺の主は今日から君だ」
プリンセスは、彼の言葉に胸が一杯になり瞳を潤ませた。
「鶴の恩返しってやつか!」
プリンセスとの別れの時ーー彼女が冗談染みていった言葉がこうして現実となったことに、プリンセスは思わず、ふきだす様に、くすくすと笑った。鶴丸国永も大層満面な笑みを浮かべていた。
そして皆も、突然現れた銀白の鶴のーーその恩返しを受け入れる様に顔を綻ばせた。
「なんか…しっくりこない…」
今まで目にしてきた審神者がどれほどこの衣装が似合っていたか、思い返すと鏡の前に映る自分の姿は随分と様になっていないように見えた。
それでも、プリンセスは正真正銘、審神者となったのだ。よし、と声を張り上げプリンセスは審神者としての第一歩を踏み込んだーー。
「そろそろ…ついた頃かな…」
刀剣福祉課、職員部屋で先輩は、先ほど挨拶に来た、すっかり審神者となってしまった元刀剣福祉課職員の彼女とーー彼女の刀剣男士の姿を心に浮かべ、雲一つない空を見上げた。
同じく、どこかの雲一つない空の下ーー。
山地に囲まれたとある本丸の門構えに審神者と五体の刀剣男士がたたずんでいた。
「これが…私たちの本丸ですか…」
プリンセスは、未だ信じられないという様な表情を浮かべ本丸に目配せた。すると、隣にたたずむ三日月宗近が彼女を優し気な瞳で見つめた。
「ここから、始まるんだ」
プリンセスは顔を上げ、溢れる喜びを顔に浮かべ大きく頷いた。すると、プリンセスの手がギュッと握られた。彼女が驚いた様子で顔を下げると、今剣が無邪気な笑みを浮かべプリンセスを見上げていた。
「皆で、せーのっ!で飛び越えよう!」
「面白いじゃねぇか」と何処か乗り気の和泉守兼定に堀川国広は「兼さん楽しそう」と顔を綻ばせた。
そして皆が一直線に並び、加州清光が軽い口調でいう。
「はーい、じゃあ俺が言うね、せー…」
「ちょっと待った!」
突然、背後から響いてきた大きな声に皆、肩を跳ね上げさせた。恐る恐る振り返るとそこにはーー。
「鶴丸国永!どうして…!」
あの時ーー蔵で横たえていたあの鶴丸国永がそこにはいた。輝かしい程に笑みを浮かべ「よっ!驚いたか?」片手を上げている。
プリンセスは、元気そうな彼の姿にホッとしてはいるものの、なぜこの場にいるのか不思議で仕方が無く、首を傾げた。
「どうしてここに…?」
「…あんたが審神者になったって聞いて飛んで来たんだぜ?」
大きく瞳を見開き、瞬かせる彼女に鶴丸国永は、相変わらずだな、と一度ふっと笑みを浮かべ、真剣な眼差しを注いだ。
「審神者が教えてくれたんだ。俺も主も君に恩があるから…力になりたいんだってな」
確かに彼の言う通り、鶴丸国永と今の彼の主の引継ぎを行ったのはプリンセスであったーー。
そして鶴丸国永は、当惑した様子で自分を見つめるプリンセスの肩に、とんっと手を添えた。
「俺の主は今日から君だ」
プリンセスは、彼の言葉に胸が一杯になり瞳を潤ませた。
「鶴の恩返しってやつか!」
プリンセスとの別れの時ーー彼女が冗談染みていった言葉がこうして現実となったことに、プリンセスは思わず、ふきだす様に、くすくすと笑った。鶴丸国永も大層満面な笑みを浮かべていた。
そして皆も、突然現れた銀白の鶴のーーその恩返しを受け入れる様に顔を綻ばせた。