文化的な男士


「歌仙、少し良い?」

今日は、内番が入っておらずプリンセスは本丸にある歌仙の部屋へと訪れた。

突然の訪問だったが歌仙は、文化的な思考があるためか、すぐに茶と菓子を用意する。向かい合う2人。

「それで、何か言うことがあるって事だよね?」

腕を組み眉を潜め何かを考えているのか中々、言葉を発しないプリンセスに歌仙が問いかけると、ゆっくりと口を開くプリンセス。

「燭台切や鶯丸は、どうも私を悦ばせる言葉を言ってくれるの」

少々疑問に思い、もう少し詳しく、と表情を浮かべているとプリンセスは以前の炊事当番の時と畑当番の時の出来事を語った。なぜ僕に相談する、と心に思う歌仙。しかしその理由はすぐにわかった。

「それで、歌仙も何か、私を悦ばせてくれるかなって」

しれっと言うものだから歌仙は呆気にとられる。するとプリンセスは、それに面白がった様に楽しそうに笑みを浮かべた。

「冗談、冗談よ」

未だクスクスと笑い続けるプリンセスに歌仙の心に少々意地の悪い気持ちが浮かんだ。

「じゃあ、プリンセス」
「‥ん?‥どうしたの‥?」

先ほどよりも低音の口調で近づいてくる歌仙。プリンセスは少々不安げに後ずさる様に姿勢を崩した。

「これだったらどう‥?」

バサっと畳に倒されるプリンセス。その目に映るのは、天井と歌仙の近すぎる整った顔だった。
両腕はしっかり畳に押さえつけられ、足の間には歌仙の片足が入り込み、妙に下半身に緊張が入る。

この状況に呆然と歌仙の瞳に捉えられ晒すことができずにいるプリンセスに更に、顔をプリンセスの耳元に寄せる。

「プリンセス、これは?」
「!‥歌仙‥やめて‥」

耳もとに感じる歌仙の甘い吐息にプリンセスは弱く吐息混じりな微かな声で精一杯に対抗する様に言葉を零した。

そんなプリンセスの声に歌仙は、ハッと顔を上げプリンセスの顔を見ると、その顔は赤面しており、目は潤いを増し、口は微かに開かれ歌仙を弱々しく見つめていた。

「!プリンセス、ごめんやり過ぎてしまった」

畳に押さえつけるプリンセスの腕を離し、歌仙は顔をそっぽへ向ける。その顔は少し焦りを見せていた。

体勢を立て直し、その場に座り直すプリンセス。顔は未だに赤く染まっており、歌仙が口元を寄せた耳を抑えていた。

「歌仙‥色男め‥」

プリンセスが、照れ隠し気に目を逸らしながら言うものだから歌仙は、その姿が、どこか愛おしく思った。