お昼寝


目を瞑っていてもわかるぐらいに、ほわほわと温かい日差しが、縁側で寝転ぶ私の身体を包み込んでいる。

「ん…」

髪を撫でる指先。
ちょっとくすぐったい。

薄っすらと閉じている瞼を上げれば、ボヤけた視界に映るのは、私の髪を撫でながら和やかな表情で目を瞑る小狐丸。

長い睫毛に、シュッとした鼻筋、薄い唇。妖艶に肩に滴る輝かしいほどの銀色の髪。全てが完璧すぎるその顔立ちをじーっと見つめてみる。

うとうとと首が動きながらも私の髪を撫でる手は止まない。

「…好き」

思わずこぼれてしまった言葉。
しかし、彼はビクともしない。
聞こえない様に小さく呟いたのだが、少し気づいて欲しかったという思いがあって、悔しげに眉をひそめた。

相変わらず、うとうとしている。

静かに手を挙げ、その完璧すぎる顔、頬に指を添える。しなやかで艶のある肌触りに少し嫉妬してしまう。

「好き」

先程よりも大きめの声で呟く。
それでも、やはり長い睫毛は下を向いたまま。

はあ、と一つため息をつき、渋々私は手を引こうとした。

その時ー

小狐丸の頬に添えた私の手に重なる温かい大きな手。
同時に、先程までうとうとと首を揺らし長い睫毛を下げていた小狐丸の瞳が細目に開けられ、薄っすら笑みを浮かべ私の目を捉えている。

「ぬしさま」

彼は狐のはずなのに、今はまるで猫の様だ。
私を慈しむ様に、私の手に頬擦りをして名を呼ぶ。

可愛い。
小狐丸の姿にそんな事を思って気持ちが何だか溢れそうになった。

「もお…可愛い!」

いや、溢れてしまった。

我慢出来ず、起き上がり小狐丸の大きな身体を精一杯包み込んだ。

私の突然の行動に、きっと小狐丸の目はまん丸の状態だろう。

でも、すぐに私の背に片腕が回ってきて、もう片方の腕は、私の髪を優しく撫でている。

はあ、幸せ。とことん幸せだ。


「ぬしさま」

もう一度、名を呼ばれた。
小狐丸の顔を見ると、頬を僅かに赤らめ、どこか照れくさそうに笑みを浮かべている。

「わたしも、すきですよ」

彼から発された言葉に私は更に気持ちが高ぶり、先程よりも強く小狐丸の身体を包み込んだ。