きて


珍しく部屋に散らかる資料や本を壁棚にしまったりして部屋の中を忙しなく歩きまわる。心が落ち着かない。なぜなら今日は、ようやく遠征を終え彼が帰って来るから。

「まだかな‥‥」

書斎椅子に腰かけ太陽の光が差し込む大きなガラス窓を見つめる。
確か最後に会ったのは一週間前ぐらいだったかな。時間遡行軍がとある時代に現われるのを予期し、彼が率いる部隊を派遣した。
想像以上の長期遠征に、刀剣達に対して申し訳ない気持ちがあるのだがそれよりも彼に会えない事が寂しくて仕方がない。

資料を再確認したりボーッとしたりを繰り返していると、突然扉のノックする音が部屋に響いた。ハッと立ち上がり気持ちも高鳴る。そしてガチャっと開かれる扉。

私の目に映ったのは、スラーっと背が高く、艶やかな長い黒髪、その黒を引き立てる朱色の衣装に身を包み、彼の憧れの人が身につけていた羽織を掛ける、

「兼定!」
「おっ、プリンセス!いきなり抱きつくかっ」

そう、私がずっと会いたくて仕方なかった人物とは今、困った様に眉を下げ、けれども私をしっかりと受け止めてくれる和泉守兼定。たくましい胸に飛び込み、顔を埋めて彼の匂いを沢山吸い込む。

「すごく会いたかったよ」
「ああ、俺も会いたかった」

顔を上げ、嬉しさで溢れんばかりの笑みを浮かべると、兼定は私の髪をそっと撫で、白い歯を見せ笑む。

交わり合う2人の視線。お互い自然と惹きつけられるように顔を近づけてゆく。瞳を閉じようとした時私は、あ、と声を上げ兼定の胸を抑えて制止させる。

「まず、報告!」

少し不満げな表情を浮かべる兼定。まるでお預けを食らった犬みたいだ、と密かに思いながら私は改めて書斎椅子に座った。書斎机を挟み目の前に立つ兼定。

ー ー ー ー

「うん、誰も負傷無く、無事帰還お疲れ様です。…今のところ歴史の変化も無し」

任務成功です、とニコッと笑むと安心したように胸を撫で下ろす兼定。

もう一度資料に目を通そうと視線を下げた時、目の前にいた兼定が既に私の横に立っていた。

驚いて彼の方に目を向ければ、神妙な顔つきで私を見ている。そして間の無い内に私は抱きかかえられた。

「えっ!ちょっ…兼…ん…」

兼定の唇が煩い私の唇を包み込む。
背には、ふかと身体の形に沈むソファ。何度か耳に刺激の残る触れるだけのキスを繰り返し、隙間から濡れた舌が入り込んで来て、それは私の舌に絡められた。

キスをしている間も、しっかり手は私の身体を焦ったく撫でていて、肩から審神者服の襟がずり下がり肩が冷んやりとする。

すると、名残惜しく唇が離され、次は耳元に生暖かい吐息がかかる。

「ぁ…ん、ねぇ…まって…」

何だかいつもと違う、そう感じて力無い声を上げるが耳から首に唇を寄せられ、軽いリップ音が耳に響く。

そして兼定の手がゆっくり私の下に伝っていくのに身体が僅かに跳ねた。

「まって…!」

精一杯に声を上げると、ハッとしたような顔で私の首元から顔を上げる兼定。視線が交じり合う。

「兼定?…すごく強引っていうか…激しいっていうか…いつもと違う…」

恥ずかしくて顔を晒し、ちらちらと兼定を見て歯切れの悪い言葉を返すと、まるで情け無いというように眉を潜める兼定。

「すまん、プリンセス。…余裕がねェんだ…」

兼定の言葉にハッと目を見開く。そして何だか気持ちが満たされるような感覚になり、はんなりと笑む。

「…兼定、私もだよ。一週間ずっと寂しかった…私も余裕がないの…早く兼定が欲しいの…」

来て、と余裕のない表情の兼定の頬を包み込めば、ハッと一瞬瞳を揺らし、そして直ぐにキスの雨が降ってきた。両腕を頭の上で纏められ、何度も角度を変えお互いを求める様に深く。

「もう…入れていいか…?」
「ぁ…ぅん…きて…」

耳元に弱い吐息がかかり、私は頷く。だって彼が私の身体に密着していてる下の方で硬いものが押し付けられているから。

おそらく私の中も我慢ならなくて愛液が溢れているのが意識しなくてもわかる。

そして、私の中にズブズブと兼定のものが入ってきた。

「ぁ…あ…んんっ」

久しぶりに感じたこの感覚に快楽の声が上がる。たまに聞こえる、兼定の男を思わせる低い余裕のない微かな吐息が更に私の官能的な部分をくすぐった。

そして、全てが奥に届いた時、浅く深くを繰り返す。

顔の横に沈む兼定の手。その腕が力を張り筋を立ていて男を感じ、私の目を刺激して子宮がキューっとなる。

「ん…ぁあ…だめ…もぉ…気持ちいいの…」

生理的な涙でぼやける視界と快楽を求め激しく揺れる身体に合わせて視界も上下に揺れる。

私はもう限界だ、頭の中は兼定の事ばかりになっていて、たくましい腕、鍛えられた大きな身体、揺れる髪、本能的に激しく打ち付ける腰の動き、全てが私を気持ち良くさせる。

「兼…もぉ…私…」

私の瞳に映った野生的な兼定の表情に胸がキューっとなり膣が締まるのと同時に私は果てた。後に続くように私の中で兼定の欲が放たれる。

「はぁ…はぁ…」

手の甲で口元を覆い、深く呼吸を繰り返す、しばらくして私の中から兼定のモノが出ていき、あ、と吐息をこぼし少しだけ中が寂しくなった気がした。

そして私の手を取り、兼定の唇が私の唇に優しく触れた。

閉じた瞳を開けると、兼定の真っ直ぐな心に浸透する瞳が交わる。
そして、どちらからとも無く溢れ出すように顔を綻ばせた。