幼き頃


「…おいベン!!なんだあれは…!!」


赤髪の男、シャンクスは自分の船より遥かに小さい海に流される小舟に指を指した。


「おかしら、ありゃあただの小舟だ。」

横目で見ながら冷静に答えるベンにシャンクスはそれぐらい分かると声を上げた。そしてシャンクスは目を細める。

「なんか、乗ってねェか?……ありゃあガキだ!ガキが乗ってる…!」

誰か小舟を出せと声を上げ指示するシャンクス。そしてシャンクスはprincessの乗る小舟に寄り、気を失っているprincessを抱き上げ自身の船に運んだ。





「気を失ってるだけだ。ただ何日間も飲まず食わずの生活が続いてたんだろうな。」

船医の言葉にシャンクスは気を失ってるだけだと言うことにホッとしてベッドで眠る少女の頭を撫でた。

「起きたら沢山食わせてやるからなあ」

柔らかい笑みを浮かべるシャンクス。


「頭ァ、そのガキが目覚ました後どうするんだ」

壁に寄りかかりシャンクスに問いかけるベン。シャンクスはベンの方へと顔を向けニカっと笑う。

「仲間にする!」

「あんた、お人好しにも程があるだろ」

呆れたように言葉を出すベン。シャンクスはベンから顔を離し眠る少女の顔を見た。

「数日間も飲まず食わず。それに1人で船に流されてたんだ。これから行く場所もねェだろ。
なら、コイツを見つけた俺らが面倒見てやんないとダメだろ?」

な?ベンと自分を見るシャンクスにベンはハァと1つ息を漏らし

「あんたには敵わねェ」

ポツリと言葉を零し困った笑みを浮かべその部屋から出て行った。




シャンクスは毎日眠っている少女に付きっ切りだった。数日して、princessは空腹に意識が堪え兼ねたのか目を覚まし、体を起こし辺りを見回す。


「……赤い髪の毛…」


自身の眠るベッドに赤い髪を垂らしうつ伏せで寝息を立てるシャンクス。princessは、見たことのないその赤い髪に手を伸ばし触れた。

意外とサラサラ…


すると寝息が静まりムクッと頭が上がった。その赤い髪の人物と目が合うprincess。

「お前!!起きたのか!!

おいベン!!!ベーーーン!!」


先程まで静かに寝ていた赤髪の男が大きな声を上げprincessはビクッと肩をビクつかせた。

「お前さん、2日間も寝たきりだったんだぞ?」

ドアの方へ顔を向けていた赤い髪はいつの間にかprincessの方へと顔を向けていた。

その時、ぐーっとお腹の音が鳴った。princessは自身から鳴ったことに顔を赤め俯く。その姿を見てシャンクスはprincessを抱き上げた。

princessは抵抗するわけでも無くただ驚きの目をシャンクスに向けた。

「今から飯だ飯!お腹空いただろ?」

シャンクスは自身を見る少女に目を向けニカっと笑う。しばらく歩くと賑やかな声が聞こえ食べ物の良い匂いも漂ってきた。そして食堂に着きシャンクスはprincessをイスに座らせその隣に自身も腰掛けた。

princessは目の前の光景に目を驚かさせた。沢山の食べ物。そして長いテーブルとその周囲に腰掛ける人達。みんな楽しそうに笑っていた。


「お頭ァ、もうお腹空いたよ」

「おうおう、待たせたなっ」

princessは戸惑いながらシャンクスを見上げた。するとシャンクスはprincessに目を向けニカっと笑う。

「そんじゃ、食べるぞ〜」

「「いただきます」」


シャンクスの声の後に続き声を上げる仲間達。

「さっ、お前さんも食べろ」


お皿いっぱいに乗せられた食べ物。それを差し出したのはベンだった。

「……ありがとう。」

ベンに目を向けポツリと零すprincess。すると周りからもこれも食べなあれも食べなと笑顔で差し出される。困った表情を浮かべるとシャンクスがそんなに食えるかと声を上げた。そしてprincessは少しずつではあるが食べ始めた。





しばらくして長いテーブルにたいあげられた食べ物は全て無くなっていた。

食事を終えた頃シャンクスはprincessに目を向け、その視線に気づいたprincessも目を向けた。

「お前さん、名前なんて言うんだ?」

今更かとツッコミを入れるベン。

「…princess。」

ポツリと零す。

「そうかprincessか…良い名前だ!!………

お前たち!!今日からここにいる
princessは俺らの仲間だ!」


シャンクスの言葉に驚くprincess。しかし周りにいるシャンクスの仲間は誰一人驚くことなく一瞬静けさに包まれたもののすぐによろしくや宴だなど声を上げ笑顔をprincessに向けた。


「princess、俺はここの船長シャンクスだ。よろしくな?」

「……シャンクス。」

princessは顔を斜め下にそらし照れるようにポツリと呟いた。

そうだそうだと笑いprincessの頭を撫でるシャンクス。



そしてそこからprincessは赤髪海賊団で2年間を過ごした。


princessと過ごして行く中で次第にシャンクスはprincessの様々な事を知っていった。水を操る能力者である事、あの時小舟に流されていた意味。そして何よりも母の事だった。


「私、ママの事少し覚えてるの。」


「おお〜う、聞かせてくれよ。」

海に沈む太陽を眺めながらprincessとシャンクスは話していた。

「おじぃちゃんから聞いた話なんだけどね。ママは、海軍大将っていう偉い人だったんだってでもね、それやめちゃって海賊になったんだってさっ」

princessの話にシャンクスはまさかと思いprincessに驚きの目を向けた。

「princess……!そのママの名前は…わかるか?」

「うん!…Ms・D・ハナ!!ママの名前だよ!」

無邪気な笑みを浮かべ嬉しそうに母の名前を口にするprincessにシャンクスは懐かしい面影を感じそして少しのポカンとした切なさと大きな衝動に襲われた。