火砕流


princessは一人、島の裏側へ向かうため、急かされる気持ちで駆けていた。

嘘。嘘吐き。エンドポイントなんて子供だましだって言ってたくせに。

―クザン!エンドポイントを破壊したらみーんな死んじゃうの??
だあーバーカ。ただの子供だましだ。princessみたいなガキを脅かす為の作り話だ。―

princessの脳裏に浮かぶ幼い頃の記憶。

「princess!」

ただひたすら走るprincessに路地からちょうど出てきたチョッパーが名前を呼ぶ。それに気付いたprincess。

「チョッパー!ゼットは島の反対側の砂丘にいる!る!ルフィ達に伝えて!」

それだけを叫び走り続けた。
その間もprincessの脳裏には先ほどの海兵の言葉が浮かぶ。

―正義とは…!―

「私の正義…って…なんだったの…」

さらにprincessの脳裏に浮かぶ。昔よく目にしていただらけた正義の文字。

「教えてよ…」

息を切らしその場に止まるprincess。もうすでに島の裏側に到着していたのだった。

「…元大将ゼット…あなたの正義教えなさいよ。」

ネオ海軍がいるであろう火山を目に捉えprincessの言葉がぽつりと放たれた。


どうやら、第二のエンドポイントが破壊されたらしく火山は地を揺らし、そこから火が吹き溢れる。

ゼット、アイン、ビンズは少し山の高い所から落ち着いた様子で下っ端達に第二のエンドポイント破壊の完了、そして次の表明をしていた。すると、アインが閉じていた目を開ける。同時にゼットが笑みを浮かべた。

「来たか、麦わら海賊団、princess。」

ゼット達を睨む様に立ち構えるprincess。

「貴方達に、聞きたいことがあるの。」
「‥なんだ、言ってみろ。」
「貴方達も、私も元海軍。今じゃ立派な”海賊”よ。‥貴方達の正義って何だったの。」

princessの言葉にアインは、ただ冷酷な目でprincessを見下ろす。ビンズも表情は変えず黙って見るだけだった。ゼットは大きく口を開いて笑った。何が可笑しい。

「正義‥正義か俺たちは海賊じゃねェ!!」

来た。princessがそう思った瞬間、ゼットはprincessに向かってその剛腕を振りかざす。それを素早く避け、能力を放つprincess。避けるゼット。その顔は笑っていた。princessは、悟られぬ様無のまま攻撃を仕掛ける。

「お前さんの戦い方は本当によくも悪くもアイツ似ている」

princessの攻撃を避けながら口にするゼット。princessの脳裏に浮かぶのはただ1人、自分の元上司、クザンだ。

「だから言った。お前さんは能力に頼りすぎだ!」

その言葉と同時にprincessの脇腹に鋭く、何かが撃たれた。

「何これ‥力が抜ける‥」
「それは、海楼石で作られた玉だ。」

地に崩れ落ちるprincess。その場で深く呼吸をし、立ち上がろうとするが立ち上がれない。princessに近づくゼット。

「逆に聞こうprincess!お前の正義は何だったんだ!?」

その剛腕でprincessを強く掴み、自身より高く上げるゼット。その圧迫に苦痛の声を上げる。

「ハァ‥貴方達は所詮、”海賊”よ!」

princessが口にした瞬間、ゼットは額に青筋を浮かべさらに力を込めた。princessの叫び声が上がる。

「ゴムゴムのライフル!!!」

突然響き渡る声にゼットは振り返り、その伸びて来た腕を自身の腕で止めた。

「‥ル、ルフィ!!!」

腕が伸びて来た方へ目を向けると、そこにはルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップがいた。

「princessを離しやがれ!」

腕を戻し、怒気のこもった声を上げるルフィ。ゼットは、その言葉にニヤリと口元を歪め「いいだろう」と言いprincessを投げやった。

「princess!!!」

強く投げられたprincessを両腕を伸ばし抱きとめ自身の元へ腕を戻すルフィ。

「ルフィ‥皆んなごめんなさい、私一人で‥」
「このクソジジィ、おろすぞ!」


ルフィの腕の中で弱るprincessを見て怒りの声を上げるサンジ。ルフィはさらにゼットへ怒りをぶつける。

「おっさん!仲間を元に戻せ!」

ルフィがそう口にするとゼットは、2人の部下の名を呼び、それに応える様に返事をし、動き出すアインとビンズ。

「女剣士は、俺がやる」
「あんのクソマリモ、抜け駆けしやがって‥princessちゃんは、休んでてな!」

そしてゾロとサンジも駆け出した。ゾロはアイン、サンジはビンズとそれぞれの戦いが繰り広げ始めた。

「仲間を戻したければ海賊のやり方で来い!!」

口元を歪め笑み挑発する様に笑みを浮かべるゼットにウソップが冷や汗を浮かべながらも、攻撃をしようとするとそれを止めるルフィ。

「ウソップ、ゼットとは一対一でやる!princessの事任せた。」

そう言ってprincessをウソップに託し、ルフィは走り出した。ウソップの腕の中で微かに視界に映るルフィの後ろ姿を見てからprincessは意識を手放した。

ぶつかり合うゼットとルフィの拳。マグマ山が音を上げ、マグマが噴出する。街に降り注ぐマグマ石、それは次々と街を破壊していく。

「ウソップ‥」

重い瞼を上げると、微かにprincessの目に映ったウソップの顔。

「おお!princess!意識取り戻したか!って‥ぅおお!」

一度princessに目を向けるウソップだったが目の前にマグマ石が降って来た事で其方に目を向け声を上げる。同じ様にprincessも目を向けると、どうやら遂にマグマ山が噴火した様だと再認識した。

「このままじゃ‥私達皆んな死んじゃう!‥逃げなきゃ!」

声を精一杯上げるが届かない、そして体が思う様に動かないprincessだった。

「時間切れ」

その言葉と共にピンクの煙玉の様なもので去っていたゾロの目の前から消えたアイン、そしてサンジの前から消えたビンズ。ルフィはゼットと激戦を繰り広げていた。

「スマッシュトルネード!」

言葉と共に風が舞い上がり、その流れに乗せられルフィは浮き、帽子が飛んだ。そして放たれる何発もの玉。それを受け止めるルフィ。

「俺はゴムだから弾丸なんて効かねェ!」
「‥‥‥そうかい。」

破格な笑みを浮かべ、ゼットは先ほどprincessに撃ったものと同じ、ライフルでルフィの肩にそれを向けた。

「力が‥抜ける‥」

その場で崩れ落ちるルフィ。距離を縮めていくゼット。

「自分の能力を過信し油断する能力者には、よく効く。」

そう言ってルフィの麦わら帽子を掴み取るゼット。帽子を持ち立ち去って行くゼット。

「返せ‥!それは、シャンクスから預かった帽子だ!」

声を上げ、ゼットに向かい走るが、剛腕で掴み上げられ苦しむルフィ。

「四皇で罵り上げられるあいつも‥俺の計画に気づかず無力に死んでいくのだ。」
「シャンクスを馬鹿にするな」

声を張り上げると、ゼットは腕に力を込めてルフィを遠くへ光と共に飛ばした。

「ヤベェぞ、火砕流というやつが始まったみたいだぜ」

その頃、ゾロ、サンジ、ウソップ、princessは合流し、火山を見上げていた。

「ウソップ、ルフィはどこだ」

逆さまに砂に突き刺さるウソップを立て直し、ゾロは出血で苦しむprincessを哀れむ気持ちを抑え担ぐ。

「ルフィ!ルフィ!ルフィ!」

砂山々を駆け出し、見つけたルフィは気を失いボロボロの状態で倒れていた。ウソップはルフィを担ぎ、急かされる思いで走り出す。

火砕流はどんどん街を飲み込んでいく。それに追われながらも走り続けるゾロ、サンジ、ウソップ。

「ここは‥」

princessは意識を取り戻し、むくりと起き上がると目から入ってくる情報で、ルフィが散々にやられ気を失っている事、そしてバナナボートに乗り街を下っていること、火砕流に追われている事と、全ての事態が同時に入ってきて混乱が生じた。

「何!今どうゆう状態なの!」
「おお!princess!目覚ましたか!」
「princessすわぁん、おはようございます」
「と、とりあえず、重心右ー!」

皆、焦りながらも思い思いに口に、princessは未だ混乱状態だ。そして街を迷路の様に下っていくバナナボートだったが、路地を抜けたとこで壁にぶつかりそのままその場に落とされてしまった一同。

「もう、やるしかねェ」

火砕流に向かって構えるゾロ、サンジ。ウソップは腰が抜けた様にただ漠然と見上げる。

「皆んな!どいて!」
「‥!?princess!」

3人の後ろで、座っていたprincessが、海楼石によるダメージで苦い表情を浮かべながらも立ち上がった。同時に大きく火砕流が波の様に上がる。

「アクア…エイジ!」

火砕流に向かって手を伸ばし、言葉と同時にその手から水の壁が広がってゆく。そしてまた、同時に青い光が一点に輝きそこからprincessの水を凍らす様に、広がっていき、火砕流は水から氷となり、氷柱の様に連なった。

「‥ク‥ザン‥?」

ふと感じた懐かしい覇気。princessはそのまま力を使い果たした様に崩れ落ち意識を手放した。