02


「お前、和の国出身なのか‥?」

外の天気、時間の感覚さえも把握できない牢獄でエースが来てから2回目の睡眠から目覚めた時、エースの問いにprincessはあくびを1つし、そうよ、と流す様に応える。

「確か、そんな国もあったわね。」

どこか遠くを見つめ言葉を零すprincess。すると、princessは突然吹き出す様に笑った。

「そういえば、ロジャーに出会ったのもその国だったかしら。」

自分の故郷に対して、少し疎遠のある呼び方をするprincessに不審を感じるエース。

「私は、あの人のお陰で自由を手にしたの。」

どこか懐かしむ様に口にするprincessにエースは更に不審感が募る。

「和の国はね、あまり他の国を受け入れない鎖国国家なのよ。‥私の生まれた村は特にその影響が強かったわ。」

少し哀しげな表情をするprincessは、話を続ける。

「だから、他所の物を口にしただけで殺されてしまうことがあったの。‥まだ幼かった私は、山奥に1人で遊びに行ってはその辺にあるキノコとかきの実を食べてたんだけどね‥そんなある日、見たこともない不思議な色・形をした実を見つけて、好奇心で食べちゃったのよね」

少し困った様に無邪気な笑みを浮かべるprincess。エースが口を開く。

「その実って、”悪魔の実”か?」
「そう、”悪魔の実”だったわ。‥不味くて全ては食べなかったわ。その日は家に帰ったの。そしたらね、家に帰って早々母親がこの世のモノでは無いものを見るかの様な目で私を見て言ったのよ。「この女狐が」って。」

エースは、princessの話に心が惹かれたかの様に黙って聞いていた。

「そしたら、すぐに村の人達がやって来て私を見て、皆んな母親と同じ様な目をしてたわ。そして、すぐに村の村長も駆けつけて、私を見て言ったの「拘束しなければ」って。そこからはあっと言う間に、布みたいなものを被されて、抱えられて、とても冷えた山奥にたった一人、檻の中に閉じ込められたわ。」

princessの話にエースは漠然と驚愕するばかりだった。

「何故、閉じ込められたのか何も理解が出来なかったから、ただ日が昇っても落ちても泣いて過ごした。‥そんな日々を繰り返して、ある日、顔のやつれた白髪の老婆が檻の前に現れたの。その時すぐにわかったわ。自分の母親だって、やっと助けに来てくれたんだって嬉しくて、本当に嬉しくて呼んだのお母さんってそしたら、またあの目をして言ったの「まだ生きてたのか、女狐」って」

一度、深呼吸をし、知らず知らずのうちに感極まっていた自身の心を落ち着かせるprincessを見るエース。

「その時やっと気づいたの。自分の姿が、金色の毛並に、九つの尻尾を持つ、本当に母親が言った通り、狐だったわ。」

すると、暗い牢獄に強い光が輝いた。それは、princessの背の方から、左右に柔らかく揺れる九つの尾だった。その姿にエース、そしてジンベエは言葉を発することができずただ黙って目視してしまった。

「そこから何年か月日が経って、また一人、次は男がやって来たの。その男が、明らかによそ者だってすぐにわかったわ。」

穏やかに笑みを浮かべるprincess。背から伸びていた九つの尾は消えていた。

「その男が、ロジャーだった。‥彼はとても警戒する私に対して何食わぬ顔で話しかけて来たの。‥でも、その彼から伝わる気が、何だか、不思議で、惹きつけられた。彼の話は聞いてて凄く面白かったわ。思わず言ってしまったのよ。」

ー私も、この檻から抜けて色々なところに行ってみたい。

なら、俺がお前をこの檻から出してやる。自由に生きろ!ー

「あの日、あの瞬間、ロジャーの言葉、私は一度も忘れた事がない。」

princessの声が微かに震えているのにエースは気づいた。

「そこから私はロジャーの仲間になって世界を旅したわ。‥以上、これが私とロジャーの出会いよ。」

話し終えるprincessは、いつもの様に笑みを浮かべエースを見つめる。その瞳は潤いを増していた。

「princess」

いつもは「お前」と呼ぶのに突然名前で呼んで来たエースにprincessは思わず、貼り付けていた笑みを崩して、驚きを隠せない表情でエース見る。

「俺には、ろくでもねェ父親の何の記憶も‥何の恩もねェ‥」
「‥うん、そうね。」
「だけど、お前のその話は、なんて言うか、心が惹かれた。‥話してくれてありがとう。」

少し照れるように言葉を詰まらせて言うエースにprincessは、また貼り付けた笑顔を取り乱してしまった。

「エース。」
「‥何だよ。」

また、すぐにいつもの様に笑み名前を呼ぶprincess。その顔はどこか悪戯心のある目をしていた。

「もう一回、名前を呼んでみて」
「何でだよ!」

暗く淀んだ牢獄に微かに穏やかな空気が流れた気がした。