04


目の前に広がる、緑豊かな草原、小さな花々。穏やかに吹く風。

腹に手を触れると、先程突き抜かれた穴はなくて、血が一滴も出ていない。体の痛みもない、むしろ体が軽い。綺麗な自分の状態。

俺は、どうやら死んだらしい。

だが、もう死んだことに悔いはねェ。
大切な奴らに気持ちはしっかり伝えた。

けど、まだ伝えられてねェ奴が一人いる。
俺は何年もそいつの事を忘れてた。それもそうだ、20年も生きてりゃ、生まれた時の赤ん坊の時の記憶なんて忘れる。それを言い訳にしたくねェぐらいそいつには恩があり過ぎる。

会いてェ。

そう思った瞬間自然と足が動きだした。まるで、あいつの所に向かう様に。



たった一人、この緑豊かな草原に来て何日経ったかなんてもうわからない。

彼が生きているのか、それだけが気になる。

目を瞑れば思い出すの。
彼が私の名前を呼んだ事。
あんなに小さかった赤ん坊が、私の名前を呼んだのよ。

まさか、あんな形で再会するなんて思わなかったわ。
私はすぐにあの子だってわかったの。
あの子の成長が嬉しくて、たまらなくて、思わず泣きそうになってしまったわ。

今、彼は、どうしているのかしら。



見覚えのあるその後ろ姿にエースの足は止まった。やはり自分の足は彼女の元へ導く様に動いていたんだと。

「princess。」

ふと名前を呼ばれ、後ろから強く包まれたprincessは、その温もりですぐに誰が自分を抱きしめているのか解った。

「‥エース‥貴方‥」

ここにエースがいるという事で全てを悟ったprincess。涙が自然と次々とこぼれ落ちる。

「princess、聞いてくれ。俺は、死んだことに悔いはねェ。」
「‥でも‥貴方はまだ‥生きていなければならない存在よ‥」
「princess、俺はあっちでもう十分に感謝を伝えた。後はお前だけなんだ。」

さらにprincessを包む腕が強くなる。

「こんな俺の為に命をかけてくれて、ありがとう。」

「‥‥エース、一つだけ‥一つだけ聞かせて」

princessは、エースの方に体を向け、涙を流すエースを愛しく思う様に見つめる。

「貴方は、生まれて来て良かったって今、思える?」

「ああ‥もちろんだ。俺は、沢山の愛を貰った。」

そして、エースはprincessから流れる涙を掬い、その顔を包み込む。

「自分の子でもねェガキを育てて、そのガキに命をかけたヤツもいるんだ。」
「それ‥私じゃないの‥」
「ああ、そうだな」

2人を笑みを浮かべ、お互いを愛しく思う様に見つめ合う。
そして、エースとprincessはお互いが惹きつけられる様に額合わせる。

「エース、私は貴方を愛してるわ」
「princess、俺も愛してる‥命をかけたくなるほど」
「馬鹿。もう死んでるわ、私達」

「そうか」

2人の幸せそうな笑い声が、この広い草原に響いた。