鈍感な彼女


「参謀総長!出動命令をお願いします!」

革命軍本部のとある一室にて、女の声が響いた。参謀総長と呼ばれるサボは机を挟み、目の前で立ち尽くし自分を強い眼差しで見つめ、そう言葉を上げるprincessに一つため息をつく。

「‥断る。」
「!何故!」

これで、十何敗だろうか。革命軍に加入してからprincessは一度も戦地に赴いた事がなかった。決して弱いわけではない。むしろ、自然系の悪魔の実を食べた能力者であって覇気も使いこなす、戦闘に優れた才能を持っているにも関わらずだ。

「参謀総長の補佐と任命されてから毎日毎日、事務仕事ばかり‥飽きました!」

princessの言葉に耳は傾けるも、苦い表情で言葉を発しないサボ。

「ひどいです。‥私は、参謀総長の力になりたいのに‥それだけなのに‥」

ついに、泣き出したprincess。サボは流石に慌て始め「泣くな」と言葉をかけてもprincessは泣くばかりだった。

「ならば、出動命令を‥!」

そしてサボは立ち上がり、princessの肩に手を置き、顔を上げさせる。

「princess、お前は、俺の側にいるだけで良い。」
「‥え‥」

サボの予期せぬ言葉に思わず小さく言葉を零すprincess。すると突然背に触れる手。頬に触れる男らしい、たくましく硬い胸。princessはサボに抱きしめられたのだ。

「‥それがお前の仕事だ。」

そう耳元で言えば、princessは一度体をビクッと跳ねさせる。しばらく沈黙が続き、サボはprincessが理解したのかと思い、princessの顔を伺う。

すると、princessは、目を潤ませたまま不満そうな顔つきで頬を膨らませていた。

「意味がわかりません。」

princessの言葉に、サボは豆鉄砲を打たれた様な表情でprincessを見つめた。そしてまた一つため息をつく。

「‥わかった。だが、俺から離れるのは許さない。その条件を守れるなら良いぞ。」

そう言えば、鈍感な彼女でも流石にこの意味が理解できるだろうとサボは思った。

「はい!勿論です!参謀総長の命をお守りする為に私は戦地に赴くんです!決して死んでも離れませんから!」

違う、違うと心の中で突っ込むサボ。彼女の乗り気な態度に少し呆れる。

「私が、参謀総長を守ります!」

それでは失礼しますと部屋を出て行くprincessにサボは一言零す。

「それ、俺が言いたかった台詞なんだけどなァ」

鈍感なのか、彼女にはストレートに言わないとどうやら、自分の気持ちに気づいてもらう事が出来ないみたいだ。