好き


新世界のとある小さな島に着港した赤髪海賊団は、毎度の様に酒場で宴を催していた。皆思い思いに酒を浴びるように呑み賑わっていた。しかしそんな中、1人不機嫌な表情を浮かべるprincess。
その目線の先には、左右に妖艶な雰囲気を持ち合わせた女性を座らせて次々と酒を呑む赤髪海賊団船長、四皇でもある赤髪のシャンクスがいた。

「はあ。おいおい。princess。表情に出過ぎだ。」

両手に頬杖をつきジッとシャンクスへと睨みを利かすprincessに副船長であるベンはため息を吐く。

「そう?...それよりアレが、四皇の赤髪のシャンクスなの?ただの女好きじゃない。」

ベンへと目線を移し、呆れたように言葉を投げ掛けるprincess。
赤髪海賊団では、末っ子の様な存在のprincess。しかしそんなprincessは船長であるシャンクスに想いを寄せていた。それに気づいていたベンはただprincessの愚痴を聞いていた。

「ねえベン。私って、そんなに男性心貪るほどの魅力ないかな...?」

少し潤めでベンを見つめシャンクスへと目線を突き付けるprincess。そんなprincessの言葉にベンは、タバコに火をつけ一服吸ってから言葉を出した。

「そんな事はない。十分魅力的だ。」

「...!ありがとう。ベン。」

ベンの言葉に目線をシャンクスから外し目を見開き一瞬驚きの表情を浮かべ、目を細め笑みを溢すprincess。ベンもその笑みに応える様に骨格を上げた。
賑わう周りの声と共にprincessの目に映るシャンクス。するとprincessは自身の飲み物を飲み干し、立ち上がった。

「ベン、私先に船に戻るね。...ここにいるの辛いし、何だか、疲れちゃった。」

「...そうか、船まで送ろう。」

「うん、ごめんね、ありがとう。」

一度シャンクスへと視線を向け、悲哀の表情を浮かべるprincess。そしてprincessとベンは賑やかな店から出て行った。

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暫くして船がある港へと着いたprincessとベン。ベンへと向きあいprincessは弱った笑みを浮かべた。

「ありがとうベン。もう大丈夫だよ。お店に戻って?おやすみ。」

「ああ。おやすみ。」

princessの頭へ手を添え慰めるかの様に一度撫でるベン。そんなベンに感謝するかのように更なる笑みを浮かべprincessは船内へと去って行った。そしてベンはタバコに火をつけ店へと向かう。

一人船内の廊下を歩くprincessは、自室へと向かおうとしたがそこを通り越し最奥にある船長室、シャンクスの部屋へと足を運んだ。恐る恐る部屋へと入ってゆくprincess。瞬間に感じるシャンクスの匂いにどこか懐かしさを感じる。入ってすぐにあるキングサイズのふかふかのベッドへと腰掛けるprincess。

「昔はよく一緒にここで寝てたなあ…。」

自身の身体をベッドへ預け、目を瞑り回顧する。しかし脳裏にふと浮かぶ先ほどの酒場での光景。

「…バカ。気付いてよ...。」

瞬きをすると今にも零れてしまいそうな目に溜まる涙。視界の潤みに耐えられず、涙が零れた。すすり泣くprincessの声が部屋に響く。しかし次第にその声は寝息へと変わった。

その頃、酒場へと着いたベン。相変わらず店は賑わっていた。戻って来たベンにすり寄る妖艶な雰囲気を持ち合わせた女達。ベンは軽く応対しシャンクスの元へ向かう。

「おお!ベン!お前どこいってた!」

ローテーブルを挟み自身の前に立つベンに酒の勢いと共に問いかけるシャンクス。ベンは一つため息をつく。

「不調を訴えたうちのお嬢さんを船まで送って来た。」

「…!princessか!?…すまないベン。俺は船に戻る。」

ベンの言葉に瞬時に立ち上がり焦りの声を上げ、酒瓶をベンに渡しシャンクスは颯爽とその場を去ろうとした。去ろうとするシャンクスにすり寄る艶めかしい女達。

「船長さん。どうしちゃったの?もっとあたし達と呑みましょう?」

「ああもっと呑みたいところだが、呑んでられない状況でな。」

すまないと女達を離れさせシャンクスは酒場を出て、船へと向かった。その後ろ姿をタバコをくわえ静かにベンは見送った。


_____

「princess!」

船に着き迷わず一直線にprincessの部屋へと向かったシャンクスだったが、その部屋にprincessはいなかった。

「どこに…!…まさかな…」

princessが他にどこにいるか推測を立て思いついたシャンクスだった。そしてすぐにその場所へ向かう。船の最奥にある自室へと。少し開かれたドアが見え、シャンクスは確信した。静かにドアを開けると廊下の明かりがベッドをほのかに照らし、そこには静かに毛布に顔を埋めて眠るprincessがいた。

「やっぱりここか。」

起こさぬ様に静かにベッドへと腰掛け、princessの髪へと触れるシャンクス。するとprincessは寝返りを打った。その瞬間princessの手がシャンクスへと触れる。毛布の柔らかさとは違う触れ心地に次第に瞼を持ち上げる。


「…!シャンクス!…どうして…?」

視界に映る赤髪に驚きの声を上げ、身体を起こすprincess。

「それはこっちのセリフだ。なぜ俺のベッドで寝てる。」

頬杖をつきprincessを見つめるシャンクス。わずかな明かりで見えるシャンクスの顔に恥ずかしさを感じ目をしっかり合わせる事が出来ず、視界を困惑させるprincess。

「それは、えっと…ごめんなさい…」

理由を述べることが出来ず、ただ謝り顔を下げるprincess。するとシャンクスはprincessの頭をそっと撫でた。その優しい温もりに視界が潤むprincess。その涙を流すまいと顔を上げ目線をあちらこちらに逸らす。

「princess。なぜ泣くんだ。」

シャンクスの言葉に、次々と流れ落ちる涙。止まれ。止まれ。そう願いながらも溢れ出てくる涙をシャンクスの指によってすくわれる。princessが言葉を発するのを優しく見守り待つ。

「シャンクスには、私は、魅力的な女性に見えないの…?」

言葉と共に潤んだ目でシャンクスを捉える。交わる二人の視線。princessの言葉に一瞬驚きの表情を浮かべるシャンクス。するとシャンクスは静かにprincessを自分の胸へと抱き寄せた。

「こんな猛者苦しい男たちのいる船に置いておきたくないほど、お前に魅力を感じてる。」

部屋に響くシャンクスの言葉にprincessは驚嘆としてしまった。ゆっくりと顔を上げシャンクスの目を見るprincess。

「俺は、お前が好きだ。」

強い眼差しと共に放たれた言葉。princessは目を見開き、ただその眼差しから目を逸らすことが出来なかった。

「…私も、シャンクスのことが、好き…!好きすぎて辛かったの!」

耐えきれず自身の思いを伝えるprincess。

「綺麗な女の人たちに囲まれてるシャンクスを見てるのが辛かった…!」

「…すまなかった。」

princessの苦悩の言葉に謝り、抱き寄せるシャンクス。

「でも、もういいの。シャンクスの気持ち聞けたから…」

潤んだ目と共に満面の笑みを浮かべシャンクスを見上げるprincess。その表情に耐えきれなくなったシャンクスは静かにprincessの唇へと触れた。味わうように触れるシャンクスの甘い接吻にうっとりとするprincess。名残惜しく離れて行く唇。princessの求める様な目線に気付いたのかすぐにまたシャンクスはprincessの唇に自身の唇を重ねた。