ベッド


「‥何?すごい視線が痛いんだけど」

まあ確かに、私と貴方が愛を育む場所で私の愛しのパートナーであるグラエナと私がイチャイチャしてるのが鼻につくのはわかるけど。

「そんな顔しなくていいじゃない。」

ねー、グラエナとリップ音を鳴らし見せつけるかの様にキスしてみると更に気に食わないのか、眉間に皺を寄せる。しかし貴方だって良く自分のパートナーとしている事じゃない。ね、今だって貴方の膝の上で丸く眠ってるその子。

「それに、ギーマだって、その子とよく私に見せつける様にイチャイチャするでしょ?」

ほらこーやってともう一度、見せつけるようにグラエナにキスをする。そしてグラエナの柔らかい癖になる匂いを放つ毛並みに顔を埋める。

「‥レパルダス。申し訳ないが、あっちに行っててくれるか。後でしっかりお前がして欲しいことをやってやるから。」

甘えた様な声で返事をし、主人にすり寄ってから「貴方より上なのよ」と訴える様に私を見るレパルダス。しなやかに、ギーマの膝から下り、リビングの方へと歩いて行く。

そして、ギーマは立ち上がりベッドの方へ、私とグラエナの方へとやって来た。

「グラエナ。お前の主人は少しやり過ぎた。‥そこを退いてくれ。」

ギーマの強い視線がグラエナに注がれる。グラエナ、この男の眼差しに負けるな。そう願いながら2人を交互に見ていると、グラエナが、うう、と唸る。

「そうよ、グラエナ。彼の言葉に従う必要はないの。」

グラエナが勝つ。そう思った。しかし、やっぱりこの男は違う。さすが四天王、悪の使い手。

「グラエナ。退け。」

その一言で、グラエナの唸りが、くうん、と鳴き声に変わり頭を低く下げ颯爽とベッドから下りリビングの方へと向かって行った。

グラエナと呼んでも彼は戻ってこない。

「酷いわ!あの子凄く怖がってたじゃない」

怒りと共に彼を睨むと、彼は涼しげで、しかしそこには人に恐怖を与える様な表情で私を見下す彼がいた。これは、まずい。そう思いベッドから起き上がろうとしたのだが、それは見事に阻止され、逆に押さえつけられる形になってしまった。

頭の上でまとめられる両腕、私の目に映るのは、天井と如何にも悪を秘めた様な男、ギーマ。ニヤリと口元を歪める彼に私は負けじと睨みつける。

「何?怒ったの?‥貴方だってよくやってるでしょ。」

「なんだ、嫉妬か?」

図星を突かれた。そう思い、けど悟られない様に目をそらすと、喉から笑うギーマ。

「なんだ、図星か。」

その言葉に、カー、と全身に熱が回る。交わる2人の視線。それが嫌で顔を横に向けると無理やり戻され、押し付ける様に、重ねられる唇。このままじゃ、ギーマのペースに乗せられる。そう思い絶対に応えないぞと唇を強く閉じる。

あ、ダメ。
やっぱり彼には敵わない。だって私の良いところを全て分かってる。彼の甘い口づけにほのかに開けてしまった唇。それを逃すまいと彼の舌が私の中に入ってくる。包み込む様に絡められ、ただうっとりするばかり。深く。熱く。此方がまだやめて欲しくないと求めてしまう。

しかし、彼はそれを止める。物欲しそうに、まだ足りないと求めて潤んだ目を向けるが彼はニヒルな笑みを浮かべる。

「一つ。言っておきたいことがある。確かに、俺はレパルダスや自分のパートナーをお前と同じ位に愛するぜ、だが、このベッドで愛するのはお前だけだぜ、princess」

彼から発せられたその言葉。確かに。貴方は、このベッドにレパルダス達を絶対に乗せない。見たことがない。私だけだ。その事実に気づいた時、もう既に彼は私に二度目の深いキスをして、私はもうそれを受け入れていた。