旅の前に


「しばらくここを出ようと思うの。」

そう言い、先程までの行為を物語る様に裸でベッドに体を預ける2人のうち、女の方プリンセスが少し汗ばんだ男の胸に手を当て、決心した様に真っ直ぐに強い眼差しを送る。その目に興奮したのか男はプリンセスに覆い被さり、またも熱を持った自身を彼女の中に僅かに押し込む。

「あ‥話の途中‥なんだけど‥」

先っぽだけでも、自身の身体をその気にさせる宛行いに溢れる甘い吐息。さらに奥へと押し込まれて行く。ああ、先程よりも高く鳴く。その反応に、胸が踊ったのかゆっくりと良いところを突く、もっともっと、と自身も同じ様に動くと更に激しく奥まで突いてくる。軋むベッドの音。部屋に響く甘い鳴き声。

「もう‥だめ‥」

有頂天になる寸前に、強く、たくましい男の腕を爪が食い込む程に握りしめ、潤む瞳で一度、漢の眉をひそめた今にも頂点に達しそうな顔を捉えてからプリンセスは果てた。続く様に、漢も果てる。

ゆっくりと中を満たしていた物体が抜かれ、中の締まりが緩んだ事に、あ、とまた甘い吐息が溢れる。そして軽く触れるだけのキスをし、ベッドへ身体を預けプリンセスを自身の方へと引き寄せる。

「‥ワタル。貴方のその性欲にも関係する事なの。ちゃんと聞いて。」

真剣な眼差しで、訴える様に目を向けると、口元を歪め喉で笑う、ポケモンリーグチャンピオンであるワタル。

「はは、すまない。で行き先はどこへ?」

「‥カロス地方。」

ふーん、と興味がなさそうに鼻で言うワタルにプリンセスは少しぐらい興味を持ってくれても良いじゃないかと頬を膨らませると、ワタルは口元を歪め更に笑う。

「‥そうかそうか。寂しくなるなあ‥夜が。」

最後の言葉はいらないでしょと拳を握り軽く彼の厚い胸を叩く。そしてまたごめんごめんと笑いその叩く拳を意図も簡単に包み込んでしまう大きな手。

「けど、プリンセスのその眼は、行くなと言っても止まない眼だな。」

「なんだ。私の事よく分かってるね。」

少し照れくさくて茶化す様にそう言うと、ワタルも同じ様に「ああ良いところも全てな」と腰に手を回し引き寄せる。三回戦目はしないぞと引かれる腰を固定すると「冗談だ」と髪を少し強めに流れに沿って撫でる。それが少しだけ愛おしく感じ、眉を下げる。

「行ってこい。お前の世界はまだ広がる。」

その言葉は強く鋭く胸に響いて、最後の一歩、踏み出すための背を押してくれるものだった。

「‥うん。行ってくる。」