御三家


3つのモンスターボールを両腕に抱えて軽快な足取りで研究所の廊下を歩くプリンセス。その顔は雲1つない空の様に晴々としている。

「さてと…ハリマロン!フォッコ!ケロマツ!出ておいで!」

研究所内にある中庭で、プリンセスは声を上げモンスターボールを空に向かって投げた。同時に光が放たれ、三体のポケモンが姿を現わす。

「みんな、注目!」

プリンセスの声に反応して、まるで警戒の示さないハリマロン、ビクッと身を震わせて縮こまるフォッコ、静かに目を瞑って佇むケロマツ。はっきりと性格の分かりやすい三体のポケモン一体一体に目をやり、これは大変そうだ、とプリンセスは苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、まず自己紹介するね、私はプリンセス。貴方達がトレーナーさんをしっかり、サポート出来るように3日、お世話します。…よろしくね」

ちょこんとプリンセスを見上げるハリマロン達の視線に合わせる様にしゃがみ込み笑みを浮かべるプリンセス。

そんなプリンセスにハリマロンは嬉しそうに小さな両手を上げて跳ねている。

「あなたはとても人懐っこい性格そうね。」

警戒心を一切見せないハリマロンに笑みを浮かべ頭を撫でれば気持ち良さそうに目を細めるハリマロン。その表情は更にプリンセスの顔を和ませた。

「あなたは、すごく落ち着いた性格ね、マイペースって言うのかな…」

何処を見ているのか、一切体を動かさずジッとそっぽを向いているケロマツにプリンセスは微苦笑する。

そして最後に目をやったフォッコ。プリンセスが見るなり体を震わせ身を縮め不安げな表情でプリンセスを見つめている。

「あなたは、ちょっと臆病な性格なのかな…大丈夫、安心して何も怖くないよ」

安心させる様に笑み、ゆっくりフォッコに手を伸ばすプリンセス。そしてフォッコは控えめにプリンセスの指先に鼻を寄せ匂いを嗅いでる様だ。すると少し不安げな表情を浮かべていた顔が緩んだ気がした。

「さて、じゃあまずバトルをしてみましょうか。」

プリンセスの言葉に首を傾げるハリマロンとフォッコ。ケロマツは相変わらず石像の様に一切微動だにしない。





プラターヌは、現在取り掛かっている研究にひと段落つけ、気分転換ついでに中庭へと向かっていた。

「おっ、やってるやってる」

ガラス窓越しにプラターヌの目に入ったのは、ハリマロンとケロマツのバトルだった。

その姿は、なんとも可愛らしく思わず笑みがこぼれてしまうプラターヌ。

「プリンセス、調子はどうだい?」

「!…博士!」

プリンセスの隣へと並ぶプラターヌ。2人並んで、ハリマロンとケロマツのバトルを目にする。

「あの子達はきっとバトルというか、じゃれ合うのが好きなのかもしれません」

技を繰り出し戦うというよりかは、遊んでいる様に見える二匹に眉を下げ笑みを浮かべるプリンセス。

プラターヌも同じ様にその二匹に目をやる。ふと、プリンセスの腕の中で抱えられるフォッコが気になった。

「その子は、あまりバトルを好まない性格かな?」

プリンセスの方に体を向け問うプラターヌに、プリンセスは困った様に笑みを浮かべ、自身の腕に抱くフォッコに視線を落とした。

「少し臆病な面があるかもしれないですね…でも、きっとこういう子は、強くなりますよ。」

プラターヌは、ハッと一瞬瞳を見開いた。プリンセスの口調は自分の言葉に自信があるかの様に強く、気が篭っていた。

「本当に、自分が守りたいと思える素敵なトレーナーさんと出会った時。きっとこの子は、強くなります。」

プリンセスの瞳は、どこか懐かしいものを思い返す様に揺らめいていた。

「ただの長年の感なんですけどね…」

照れ傾げにプラターヌへとはにかむプリンセス。

この時プラターヌはとてつもなく感嘆した。やはり、ポケモンマスターというのはどこか偉大であると。

「プリンセス。」
「!はい…?」

突然、名を呼ばれもう一度プラターヌの瞳に自身の瞳を交わす。

プラターヌの瞳は、真っ直ぐ、とても力強かった。

「君に任せて良かったよ。」

タレ目を更に下げ、目を細め笑むプラターヌ。

プリンセスは、そんなプラターヌの言葉と表情に心が満たされ、張り裂けそうになった。