お散歩先で
小さなポシェットバッグに、キズくすりと、シンオウ地方に行った際にレシピを教えてもらい、昨夜作った様々な味のポフィン、そして自分のパートナーのボールと三つの真新しい鮮やかな赤色のモンスターボールを詰めるプリンセス。
プラターヌから、三匹のポケモンの世話を任されて二日目。一日目は研究所内でバトルを行ったり、他のポケモンと触れ合わせたりと他のポケモンに対しての警戒心や触れ合うことを慣れさせる事をカリキュラムとした。そして二日目の今日はミアレの街を散歩する事を考えたプリンセス。その意図は、もっと世界が広いという事を教える、人間と触れ合い、慣れさせる事をカリキュラムとした。
「じゃあ、プリンセスいってらっしゃい」
「はい!行ってきます!」
高い天井に、ガラス窓から日が差し込む玄関で、日差しに目を細める様に笑みかけプリンセスを見送るプラターヌ。プリンセスは満面の笑みを返し、まだどこに何があるかもわからないミアレの街にワクワクする気持ちと共に繰り出した。
都会を感じさせる建物とヴィンテージ感を思わせるレンガ造りの建物が混合するミアレの街に目が奪われる。建物の間に所々にある狭い路地が、まるで自分の故郷であるアルトマーレに似ていることから自然とプリンセスの表情が緩んだ。
「なんだか懐かしいなあ…やっぱりこういう路地は通りたくなっちゃうんだよね…」
ひょこっと、ある一つの路地を覗き込み独りでに苦笑し、路地奥から零れる日の光に誘われる様にプリンセスは路地道を進んでいった。
路地道はちょと暗い。しかしそれが余計に路地を抜けた時に目にするものに感動を与えることをプリンセスは知っていた。だからプリンセスの足取りはとても軽快で、すぐにその先へとたどり着いた。
「わあ〜…思った通り」
キラキラと輝くプリンセスの瞳に映ったのは、周りは建物に円形に囲まれて、僅かな若草、中心には日の光を浴びてきらめく噴水、そしてミアレの住人とそのポケモンたちが時を過ごしていた。
プリンセスは、何て素敵な場所を見つけれしまったのだ、と心が無性に弾み、これを共有したいという気持ちが高鳴った。同時に腰にあるポシェットが揺れた。どうやらボールの中にいる子達がその気持ちに察したようだ。
プリンセスがポシェットから三つのボールを取り出すと急かす様にボールが激しく揺れ、そして三体の好奇心旺盛なポケモン達が声を上げ姿を現した。プリンセスを見上げ小さく声を上げるフォッコ。辺りをきょろきょろと見回して他のポケモンを見つけると嬉しそうに手を上げ走って寄っていくハリマロン。ケロマツは相変わらず置物の様にじっと佇んでいる。
「こんにちは〜」
とりあえずプリンセスはフォッコとケロマツを抱え、ハリマロンが触れ合いにいったポケモンの持ち主の女性に挨拶を交わした。女性も、こんにちは、と朗らかな笑みをプリンセスへと返す。
「このハリマロンちゃん、貴女の子?…とても人懐っこくて可愛らしいわね。」
もうすっかり打ち解けてしまっているハリマロンにプリンセスは驚きで、しかし社交的なハリマロンに思わず笑ってしまった。ふとハリマロンが触れ合っているポケモンがプリンセスにとって初めて目にするポケモンだった。
「私、ここにまだ来たばかりで…そちらの子は…?」
「あら、そうなのね!この子は、ホルードっていうポケモンよ、大きい耳が特徴でね、重い荷物を軽々と持ち上げてくれるの、とても助かるわ。」
女性の言葉に関心し、ホルードに目を向けて笑むとホルードは話が聞こえていたのだろうか、少々誇らしげな表情である。すると突然プリンセスに抱えられているフォッコが声を上げてプリンセスの瞳をじっと見つめてから、視線をプリンセスの腰にかかるポシェットへと向けた。どうしたのだろう、と疑問に思いながらも次第にフォッコの心中が見え始め、ハッととある事に気が付き、ニコッとフォッコに笑みかけた。
「…ポフィンっていうお菓子知っていますか?…」
フォッコとケロマツを下ろし、ポシェットから色とりどりのポフィンがたくさん入った袋を取り出した。女性は初めて目にする様で興味津々にポフィンを凝視している。フォッコとハリマロンはポフィンを目にした瞬間パッと顔を輝かせプリンセスの足元で跳ねていた。
「はい、どうぞ〜」
プリンセスが膝を曲げフォッコ達にポフィンを渡すと嬉しそうに受け取り、それはそれは幸せそうに顔を綻ばせた。
「ホルードも、どうぞ!」
ポフィンの入った袋を選んで取りやすい様にホルードに向けると不思議そうに匂いを嗅ぎプリンセスを見てから、良いのか、と問う様に自分の主人を見つめた。女性が、良いんだよ、とホルードに笑むと一つ赤のポフィンを手に取った。
「良かった…食べてくれるみたい。」
「んふふ、その子とても食いしん坊だから、それにしてもカラフルね、一つ一つ味が違うのかしら…」
「はい!色によって味が違いますよ」
「そうなのね〜、うちの子、とても甘いものが好きでね、辛いものが一切ダメなのよ…」
「そうなんですか!えっとホルードが取った味は…」
確認のためにプリンセスがホルードに目を向けると如何にも辛みを醸し出す赤色のポフィンが大きく開けた口の中に入っていった。ハッと大きく目を開き口も開けて、しまった、というような表情でホルードを見ていると、嬉しそうに咀嚼するホルードの動きが止まった、その顔は次第に歪んでいき、徐々に赤面していく。
その瞬間ホルードがハイパーボイスか、と思うほどに悲鳴を上げた。それは建物に囲まれる空間で倍以上に跳ね返り鼓膜が破れるのではないか、というぐらいのものだった。耳を塞ぐ女性とプリンセス。当然、小さなポケモン達も始めて聞く非常に大きな音にびっくりしているだろう。
暫くして、ホルードの悲鳴は鳴りやんだ。恐る恐る塞いでいた耳から手を離し、自然と閉じていた瞳を開き、フォッコ達は大丈夫か、と辺りを見渡した。最初に目に入ったのは、ポフィンを抱えたまま目をくるくる回し失神するハリマロン。更に周囲を見渡すが、ケロマツとフォッコの姿が無い。
「どうしよう!フォッコとケロマツがいない!!」
プリンセスの顔が徐々に青ざめていく。すると、中心にある噴水の水場がしぶきを上げた。水しぶきと共に現れたのは、元からそこにいた様に静かに佇むケロマツだった。
「よかった…後は、フォッコ…!」
ケロマツの発見に胸を撫で下ろす暇もなく、プリンセスの額に冷や汗が浮かぶ。とても、臆病な性格のフォッコ、恐らくホルードの悲鳴に驚きのあまりどこかに逃げてしまったのだろう。まだ右も左もわからない状態である、きっと独りで怯えているだろう、もしかしたら意地の悪い人に無理やり連れていかれてしまうかも…と嫌な予感が頭を駆け巡った。
「私、探してきます!もしフォッコを見かけたら、研究所までお願いします!」
「分かったわ!貴女、まだこの街に来たばかりでしょう?最近物騒な事件が起きているからお気をつけて!」
女性からの言葉に応える様に頷きながら、既に意識を取り戻しポフィンを頬張るハリマロンと平然と佇むケロマツをモンスターボールに戻し、プリンセスは駆け出した。
プラターヌから、三匹のポケモンの世話を任されて二日目。一日目は研究所内でバトルを行ったり、他のポケモンと触れ合わせたりと他のポケモンに対しての警戒心や触れ合うことを慣れさせる事をカリキュラムとした。そして二日目の今日はミアレの街を散歩する事を考えたプリンセス。その意図は、もっと世界が広いという事を教える、人間と触れ合い、慣れさせる事をカリキュラムとした。
「じゃあ、プリンセスいってらっしゃい」
「はい!行ってきます!」
高い天井に、ガラス窓から日が差し込む玄関で、日差しに目を細める様に笑みかけプリンセスを見送るプラターヌ。プリンセスは満面の笑みを返し、まだどこに何があるかもわからないミアレの街にワクワクする気持ちと共に繰り出した。
都会を感じさせる建物とヴィンテージ感を思わせるレンガ造りの建物が混合するミアレの街に目が奪われる。建物の間に所々にある狭い路地が、まるで自分の故郷であるアルトマーレに似ていることから自然とプリンセスの表情が緩んだ。
「なんだか懐かしいなあ…やっぱりこういう路地は通りたくなっちゃうんだよね…」
ひょこっと、ある一つの路地を覗き込み独りでに苦笑し、路地奥から零れる日の光に誘われる様にプリンセスは路地道を進んでいった。
路地道はちょと暗い。しかしそれが余計に路地を抜けた時に目にするものに感動を与えることをプリンセスは知っていた。だからプリンセスの足取りはとても軽快で、すぐにその先へとたどり着いた。
「わあ〜…思った通り」
キラキラと輝くプリンセスの瞳に映ったのは、周りは建物に円形に囲まれて、僅かな若草、中心には日の光を浴びてきらめく噴水、そしてミアレの住人とそのポケモンたちが時を過ごしていた。
プリンセスは、何て素敵な場所を見つけれしまったのだ、と心が無性に弾み、これを共有したいという気持ちが高鳴った。同時に腰にあるポシェットが揺れた。どうやらボールの中にいる子達がその気持ちに察したようだ。
プリンセスがポシェットから三つのボールを取り出すと急かす様にボールが激しく揺れ、そして三体の好奇心旺盛なポケモン達が声を上げ姿を現した。プリンセスを見上げ小さく声を上げるフォッコ。辺りをきょろきょろと見回して他のポケモンを見つけると嬉しそうに手を上げ走って寄っていくハリマロン。ケロマツは相変わらず置物の様にじっと佇んでいる。
「こんにちは〜」
とりあえずプリンセスはフォッコとケロマツを抱え、ハリマロンが触れ合いにいったポケモンの持ち主の女性に挨拶を交わした。女性も、こんにちは、と朗らかな笑みをプリンセスへと返す。
「このハリマロンちゃん、貴女の子?…とても人懐っこくて可愛らしいわね。」
もうすっかり打ち解けてしまっているハリマロンにプリンセスは驚きで、しかし社交的なハリマロンに思わず笑ってしまった。ふとハリマロンが触れ合っているポケモンがプリンセスにとって初めて目にするポケモンだった。
「私、ここにまだ来たばかりで…そちらの子は…?」
「あら、そうなのね!この子は、ホルードっていうポケモンよ、大きい耳が特徴でね、重い荷物を軽々と持ち上げてくれるの、とても助かるわ。」
女性の言葉に関心し、ホルードに目を向けて笑むとホルードは話が聞こえていたのだろうか、少々誇らしげな表情である。すると突然プリンセスに抱えられているフォッコが声を上げてプリンセスの瞳をじっと見つめてから、視線をプリンセスの腰にかかるポシェットへと向けた。どうしたのだろう、と疑問に思いながらも次第にフォッコの心中が見え始め、ハッととある事に気が付き、ニコッとフォッコに笑みかけた。
「…ポフィンっていうお菓子知っていますか?…」
フォッコとケロマツを下ろし、ポシェットから色とりどりのポフィンがたくさん入った袋を取り出した。女性は初めて目にする様で興味津々にポフィンを凝視している。フォッコとハリマロンはポフィンを目にした瞬間パッと顔を輝かせプリンセスの足元で跳ねていた。
「はい、どうぞ〜」
プリンセスが膝を曲げフォッコ達にポフィンを渡すと嬉しそうに受け取り、それはそれは幸せそうに顔を綻ばせた。
「ホルードも、どうぞ!」
ポフィンの入った袋を選んで取りやすい様にホルードに向けると不思議そうに匂いを嗅ぎプリンセスを見てから、良いのか、と問う様に自分の主人を見つめた。女性が、良いんだよ、とホルードに笑むと一つ赤のポフィンを手に取った。
「良かった…食べてくれるみたい。」
「んふふ、その子とても食いしん坊だから、それにしてもカラフルね、一つ一つ味が違うのかしら…」
「はい!色によって味が違いますよ」
「そうなのね〜、うちの子、とても甘いものが好きでね、辛いものが一切ダメなのよ…」
「そうなんですか!えっとホルードが取った味は…」
確認のためにプリンセスがホルードに目を向けると如何にも辛みを醸し出す赤色のポフィンが大きく開けた口の中に入っていった。ハッと大きく目を開き口も開けて、しまった、というような表情でホルードを見ていると、嬉しそうに咀嚼するホルードの動きが止まった、その顔は次第に歪んでいき、徐々に赤面していく。
その瞬間ホルードがハイパーボイスか、と思うほどに悲鳴を上げた。それは建物に囲まれる空間で倍以上に跳ね返り鼓膜が破れるのではないか、というぐらいのものだった。耳を塞ぐ女性とプリンセス。当然、小さなポケモン達も始めて聞く非常に大きな音にびっくりしているだろう。
暫くして、ホルードの悲鳴は鳴りやんだ。恐る恐る塞いでいた耳から手を離し、自然と閉じていた瞳を開き、フォッコ達は大丈夫か、と辺りを見渡した。最初に目に入ったのは、ポフィンを抱えたまま目をくるくる回し失神するハリマロン。更に周囲を見渡すが、ケロマツとフォッコの姿が無い。
「どうしよう!フォッコとケロマツがいない!!」
プリンセスの顔が徐々に青ざめていく。すると、中心にある噴水の水場がしぶきを上げた。水しぶきと共に現れたのは、元からそこにいた様に静かに佇むケロマツだった。
「よかった…後は、フォッコ…!」
ケロマツの発見に胸を撫で下ろす暇もなく、プリンセスの額に冷や汗が浮かぶ。とても、臆病な性格のフォッコ、恐らくホルードの悲鳴に驚きのあまりどこかに逃げてしまったのだろう。まだ右も左もわからない状態である、きっと独りで怯えているだろう、もしかしたら意地の悪い人に無理やり連れていかれてしまうかも…と嫌な予感が頭を駆け巡った。
「私、探してきます!もしフォッコを見かけたら、研究所までお願いします!」
「分かったわ!貴女、まだこの街に来たばかりでしょう?最近物騒な事件が起きているからお気をつけて!」
女性からの言葉に応える様に頷きながら、既に意識を取り戻しポフィンを頬張るハリマロンと平然と佇むケロマツをモンスターボールに戻し、プリンセスは駆け出した。