ミアレシティ


そして、プリンセスはサトシ達と別れ、13番道路を超え、遂にミアレシティに到着した。円を描くように全ての路地が繋がった、カロス地方の中心の街。

「わあ‥凄い美しい街‥」


キョロキョロと街の至る所を目に留めるプリンセスは、如何にも他所から来たような風貌丸出しだった。しかし、プラターヌ博士の研究所にどうやっていけば良いかわからない。

「‥どうか、なさいましたか?」

突然かけられるソプラノ音の落ち着いた声。プリンセスは振り向き、その人物を目に留める。その女性は、白い肌に黒髪のベリーショート、しっかりと凛した眉に、黒を引き立てる純白の衣装を着た美しい女性だった。美しい人。プリンセスの彼女に対する第一印象はそれだった。

「この街にあるプラターヌ博士のポケモン研究所に行きたいのですけど、道がわからなくて‥困ってます」

そう言って少し困ったように笑むと、女性はその整った顔を歪ませ口元に笑みを浮かべた。

「そうなんですね。私で良ければ、案内させていただきます。」

「‥!是非。お願いします。」

そしてプリンセスとその女性は研究所を目指し歩き出した。

「お名前を聞いても宜しいですか?」

「‥カルネよ。」

プリンセスがそう問いかけると、女性は少し間を置いてから口にする。そして、カルネもプリンセスに同じ質問を問いかける。

「私は、プリンセスです。」

プリンセスがそう答えると一瞬、隣を歩くカルネがこちらに目を向けた気がした。

「プリンセス‥さん‥どちらからいらしたんですか?」

「ジョウト地方です。‥知ってますか?」

この街の発展した、都会風景に自身の出身地が劣っている様な気がして少し自虐的に聞くプリンセス。

「もちろん知っていますよ。‥行ったことはないのですが和の趣が強く歴史深い地方だと聞いてます。」

「んふふ、私よりジョウト地方に詳しい気がします」

そう言って、笑むプリンセス。更にカルネはプリンセスに問う。

「プリンセスさんは、カロス以外にも何処か訪れたことが‥?」

「凄く旅に慣れている様な気がして」と更に付け加えるカルネ。プリンセスは回顧する様に遠くを見つめ穏やかな表情を浮かべる。

「そうですね。まずジョウトから繋がっているカントーに行って、そこからホウエン、シンオウ、イッシュ‥と長い旅をしましたね。」

「まあ、凄い‥何処も有名な地方ばかり。」

「そうですか?懐かしいなぁ。何処に行っても新しい出会いが会って、全てが新鮮だったわ‥」

そう懐かしむ様に笑むプリンセス。

「では、常に様々な地方に訪れる方なんですね。」

カルネがそう問いかけると、うーん、と少し考える様に声を詰まらせるプリンセスに目を向けるカルネ。プリンセスは少し困った様にカルネに笑む。

「それがね、この前まで、長くジョウトに留まっていたの。トレーナーならではの障害が生じちゃってね。‥初心に戻ろうって」

「そしたら想像以上に長居し過ぎてしまいました」と少し困った表情を浮かべながらも微笑みかけるプリンセスにカルネは、目を離す事が出来なかった。

「‥カルネさん?」

立ち止まり、自分をジッと見つめるカルネに少し戸惑う様に名前を呼ぶプリンセス。するとカルネは、一瞬眉を少し上げ、青い瞳を動かして口元を抑え微笑んだ。

「私ったらゴメンなさい‥凝視してしまったわ。‥あ、丁度研究所に着いたみたいね。」

カルネが手を伸ばし目を向ける方を見ると、大きな鉄の門に、その両脇にはモンスターボールのオブジェ、この街並みに沿った美しい建物。とてもポケモン研究所には見えなかった。

「カルネさん、こんな見知らぬ観光人に丁寧に案内してくれてありがとうございます。」

そう言って頭を下げるとカルネは「いいえ」と言葉にする。そして、交わる2人の視線。

「カルネさん、次会う時は、是非貴女とバトルがしたいわ。」

プリンセスがそう言うとカルネは瞳を大きく開き驚きの表情を浮かべた。カルネは一言も自分がトレーナーと言うことは言っていない。最初から気付いていたかの様に笑むプリンセス。

「‥いいえ、それは、私がお願いする立場です。プリンセスさん。いいえ、五冠チャンピオンプリンセス。是非私と私のパートナーとバトルして下さい。」

どうやら、カルネもプリンセスの素性を知っていたらしく、懐かしく呼ばれるその威名に、呆然としてしまう。そして、伸ばされる手。2人は握手を交わした。

「プリンセスさん、カロス地方にはさらなるポケモンのパワーを発揮させるものがあります。‥プリンセスさんとそのパートナーならすぐにそのパワーを発揮出来るでしょう。詳しくはプラターヌ博士に聞いて下さい。では、また。」

別れ際にカルネはそう言って去って言った。