奥手な彼には紫のアネモネを


美しい青い空と森の恵み溢れるカロス地方。その中心にある高い塔が街のシンボルとなるミアレシティ。その全ての道が繋がるストリートにあるフラワーショップ。そのフラワーショップからは常に色とりどりの花が甘い香りを放っており、またそこの店主であるプリンセスは自身のパートナーである赤、青、黄、橙、白のフラージェスと共に店を営んでいた。

そんなプリンセスを目的として花を買いに来る客が多数いるのだが、その中にはカロス地方でポケモン研究を行うプラターヌ博士も含まれている。

「やあ、おはよう。プリンセス、フラージェス。」

「‥!おはようございます!今日も早いですね、プラターヌ博士。」

花に水をやるプリンセスはプラターヌの声に気づき太陽の様に満面の笑みを浮かべ振り返る。また、彼女のパートナーであるフラージェス達も返事をするかの様に声を上げた。毎朝、一番にやってくるプラターヌ。いつからか、これがプラターヌの日課となっている。

「今日も、お勧めの花選んで貰えるかな?」

「そうですね‥今日は‥」

難しそうに真剣に考える様に、プラターヌの前を通り過ぎ店内へと入って行くプリンセスの姿に見惚れるプラターヌ。
そんなプラターヌを見てフラージェス達はクスクスと笑う。

「君達には、もうバレバレかい?」

そんなフラージェス達を見て少し参った様に眉を下げ笑みを浮かべるプラターヌにフラージェス達はいつ気持ちを伝えるのかと問うように声を上げた。

「そうだなあ。生憎、ライバルが多いもんだからね、早く伝えなきゃとは思うんだけど。」

臆病なもんでとさらに眉を下げ笑みを浮かべるプラターヌ。
フラージェス達は呆れたようにプラターヌを見てから自分達の作業を始めた。

「博士!お待たせしました。今日はこのお花です。」

丁度良いタイミングで店内から出てきたプリンセスは、プラターヌへ黄、白と淡い色合いのブーケを手渡す。

「今日も素敵な花を選んでくれてありがとう。また明日も頼むよ。」

「はい!こちらこそいつもありがとうございます。また明日も待ってます!」

プラターヌの言葉に溢れんばかりの笑みで返すプリンセス。すると、トンとフラージェスがプラターヌの背を押すかのようにあたる。先程よりも少し縮まるプリンセスとプラターヌの距離。中々ない2人のこの距離にプリンセスはすぐ真上にあるプラターヌを恥ずかし気に見つめる。
そんなプリンセスに気持ちが溢れそうになるプラターヌ。

「プリンセス。いつものお礼がしたいんだ。‥今夜空いてる?良かったらご飯に行かないかい?」

「!‥是非!連れて行ってください。」

少し照れながら誘うプラターヌにプリンセスは溢れてしまいそうになる嬉しさを抑えながらも笑みを浮かべ返事する。交わる2人の視線。そんな2人をやっとかとばかり思ってしまうも、優しく見守る様に見つめるフラージェス達。

今夜、お互いがお互いを思う気持ちを伝える事が出来るのかはフラージェス達もわからない。ただ、この2人を繋いだこの場所で主人の帰りを待とうと思うフラージェス達だった。



紫のアネモネの花言葉は「貴方を信じて待つ」