後ろから包まれ


「ただいま〜、プリンセスちゃん、銀さんが帰ったぞー」

夜の0時を過ぎ寝室で、寝る前のパックをしている時に玄関がガラッと勢い良く開けられ酔っ払いが声を上げる。

「うわっ、これは非常に面倒臭い。」

もう少し遅い時間に帰ってくると思い、就寝する前に今日1日の疲れを癒す時間を過ごしていたのに、想像以上に早く帰宅した銀時にプリンセスは、はあ、と大きく溜息をついた。

「おお〜い、銀さんが帰って来たんだぞ〜、プリンセスちゃん〜」

これは絡まれたら面倒臭いやつだ。プリンセスは次第に近づく声に悪寒が走る。
「寝てしまおう」起きてるよりは、寝ている方が流石に彼方も気を使うだろうと思いプリンセスは素早くパックを外し部屋の電気を消して布団の中に逃げる様に入り息をひそめる。

「プリンセスちゃーん」

バッと勢い良く開かれる襖。足音が近づいて来て、プリンセスの眠る布団の側に銀時はしゃがみ込み、プリンセスの顔を覗く。何か凄い見られてる気がする。

プリンセスはこそばゆく、しかし顔には出さない様に、んん、と寝言と共に銀時がいる方向とは逆の方に寝返りをうつ。

「そおかそおか〜プリンセスちゃんは寝てるのか〜」

そうそう、起きてるけどね、寝てるよ。だから早くその突きつける様な視線を外してと願いながら寝たフリをするプリンセス。すると、酒の匂いが近くなり布団の中に入り込んできて、絡められる脚。そして後ろから腰にかけ腕が回され包まれる形になった。

ふあ、と大きくあくびをする銀時の声を耳元に感じ、プリンセスは閉ざしていた目を開け、腰に回される銀時の手に触れそれを握りしめる。すると、銀時も同じ様に握りしめた。それが嬉しくて、少し照れ気味に笑む。

「‥おかえり、銀時。」

「やっぱり、起きてんじゃねェか」

ポツリと静まる空間に言葉を零すと銀時があたかもわかっていた様に言い、さらにプリンセスに密着した。

「うん‥起きてたよ。それよりお酒くさい。」

「うるせェ、寝るぞ」

そんなたわいの無い会話をして、心が何だか温かくなるのを感じる。銀時の方に顔を向けようか悩むけど、こうやって後ろから包まれることに幸せを感じて今夜はこのままの形が良いとしみじみと乞う。

「おやすみ、プリンセス」

「‥おやすみなさい、銀時」

さらに強く、しかし優しく後ろから包まれて笑みが溢れる。次第に意識が遠のいていく。プリンセスは幸福感に満たされながら夢の中に落ちた。