【本編の夢主】
尼僧名は円拝。
現代での名前は、縁道マル子。
黒髪黒目。
名前の元ネタは縁、ひいては同音の、始まりも終わりもない円から。母音は天海に合わせた。
何度も何度も『ある期間』の生死を繰り返している、出自不明の尼僧。
ループから抜け出したい一方で、なぜループするのか知るため・きちんと死に渡れるようになるために全国行脚しているが、もはや諦観もしている。
すぐ死ぬ。何度も死ぬ。よく殺される。
一回死ぬ度に、古い方からひとつ記憶を無くしている上に、前回の記憶は引き継がれたり引き継がれなかったりしている。弱くてニューゲーム。
たまに時軸そのものを間違えて生死を繰り返しているので、記憶や歴史に辻褄が合わないこともあり、一層混乱の中にいる。
夢主が生死を繰り返していることを知っているのは、ほんの一握りの武将のみ。
彫刻の腕が良いので、仏像を彫ることでなんとか日銭を稼いでいる。
幽霊や獣が苦手。基本的に非力なので、言葉の通じない相手や何をされるかわからない者は怖い。
護身用の刀子を一本持ち歩いている。
錫杖を手に持ち、行李を背負い、常に袈裟と白帽子に身を包んでいる。
自身の仕事道具である鑿槌だけは、必ず血に触れさせないようにしている。
鑿槌を仕舞ってある箱の袋は常に下賜されたものだが、時軸によって相手が違う。
義理堅い性格ではあるので、受けた恩はなるべく忘れないためにも礼を尽くすようにしている。
でも慇懃無礼なので口が悪い。
【未来の夢主】
未来という名の現代。学生。
彫刻の腕で既に名前がぼちぼち知れている。
前世で尼僧をやっていた記憶は全てまるっと忘れており、欠片も覚えていない。
将来的には、文化財修復に携わる仕事がしたいと思っている。
飛騨の姉小路は材の買い付けで知り合った友人。
姉小路は夢主の前世を知っているが、覚えていない方が夢主は幸せだろうと考えているので、わざわざ話題にしたりしない。
明智が前世を覚えているまま夢主の前に現れたことで、夢主が『また』殺されてしまうのではないかと危惧している。
【関係性】
闇属性持ちは、夢主が人生周回していることをなんとなく感づいている。
竹中は気付いている上で、自身の余命を有効に使うため、夢主から他の時軸のことを聞き出す記録係を買って出ている。夢主が忘れ去ったた記憶も、竹中ならば多少わかることもある。
彼自身は繰り返していない人物だが、どの時軸の竹中も『夢主とはこういう業の背負った者である』ことをなんとなく知っている。
お市のみ、夢主が明智のせいでこうなっていることに気付いているが、要領を得ない語り口のために誰にも伝わっていない。
信長はそもそも夢主に興味がないが、献上してくる土産が悪くはないのでそこまで睨んでもいない。
大谷は夢主の纏う幾重もの糸に絡め取られたような、呪い同然の不幸を面白がっている。
猿飛は、真田が無邪気に夢主に懐いている手前、あまり勝手なことは言えないが、何かおかしな行動を見せればすぐにでも殺す気でいる。
石田だけが夢主の事情に気付いていないが、いつだって気付く心の余裕もない。
そのほか、武田・徳川・姉小路が夢主の状態に気付いている。
松永に出会すと必ず爆死ルートまっしぐらになるので、死ぬのは怖くはないがこの男に殺されるのは死ぬより怖いという複雑な恐怖心を抱いている。
松永は夢主の終わらない死に気付いている上で、生きる力を根刮ぎにしてから毎回きっちり今生を奪っていく。
【始まりの過去】
元々は、畿内の田舎の農村の子だった。
奉公に出された寺で、彫刻の才を見出される。成人して後、尼僧として別の寺に住んでいた際に、まだ信長と出会うより以前の明智と会っている。
何かが明智の琴線に引っかかってしまったのが夢主の運の尽き。
その後、本能寺の変・山崎追討戦を経て死んだ明智の躯を供養したのは夢主だった。
後の豊臣時代に、流行病で一度目の死を迎えている。
二度目の生は現代。
芸大生の夢主。前世を抱えた明智に見つかる。
夢主を頼りにここまで歩いてきたのに、それでも記憶を思い出してくれないことに痺れを切らせた明智の手によって、某地で崖から突き落とされる。
そのまま普通に滑落死できればよかったのに、幸か不幸か戦国時代にトリップ。
何がなんだか状況を掴めないまま山賊に殺されて二度目の死を迎える。
三度目、四度目、五度目、と繰り返し死んで目覚めて、ようやく事の重大さに気付く。
なお、この二度目以降の戦国での時軸は、そもそも一回目である前世の時軸ではないので、夢主はもうずっと繰り返すことを強いられている。
【明智光秀】
元凶のひと。
どうか自分を救ってほしい、という呪いじみた願いを始まりの夢主に掛けて死んだ。
そのくせ、繰り返す時軸によっては当の明智本人も夢主のことを覚えていない・あるいは本当に知らない。
なのでタイミングが悪いと、明智の機嫌次第で夢主はすぐ殺されてしまう。夢主殺害ランキング堂々の一位は明智。
『戻ってきた』ときにその場で明智に見つかっても即死すると決まっている。
そんなに思い出してほしければ、さっさと自分から伝えればいいのにそれをしない明智は、自分を救ってほしい気持ちの他に、自ら気付いてくれなくては意味がないという思いと、いま邪魔をしないでほしいという気持ちが常にせめぎ合っているので、いつも肝心なことは話さない。
天海になって初めてようやく他人を慈しみ導くことを覚えたので、夢主も自身の望む方へ歩かせたい。
【円】
はじめの夢主は明智のことを大層慈しんでもいたし、愛してもいたので、そこさえ今の夢主が思い出せればたぶんこの輪廻から解脱できるし、明智のことも救えるのだけれど、明智の呪いが中途半端に蝕んでいるせいで夢主はなにも満足に思い出せない。
明智が諦めない限り、夢主は死に続けるし明智も救われることはないので、このシリーズには終わりも始まりもずっとない。同じ円をずっとぐるぐる。たまに逸れて別の線を描いても、また同じ円に戻っている。
ただ、腐れ縁なのだろうな、と薄々感じてはいるので、まったくチャンスがないわけでもない。
ある時点で、夢主に闇属性が付与されるときがくるけれど、別にそれで何か思い出したり進展もたぶんない。
このシリーズには始まりも終わりもない。
【←もどる ↑Site top】