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 透き通るような風が、自分の背を後押しするかのように吹きあがる。腰にぶら下げていたベルとランタンが軽くぶつかり、鈍い音を鳴らした。
 モンドの城門を慣れたようにくぐり、顔見知りに軽い挨拶をして騎士団本部に向かう。途中で酔っ払いに絡まれたがいつもの事だった。
 騎士団にはジンから許可されていた為、顔パスで自由に出入りが許されていた。まあ、一般人の出入りもあるため許可は殆ど形式だけのものと化している。
 廊下を歩きながら騎士団内部はいつも人が少ないな、と辺りをみて思った。外での活動が多いと聞いていたが、本部がこうも手薄でいいのかとここに来るたびに思う。


「アルベド、いるー?」


 とある研究室の前でノックをしながら中にいるはずの人物に声をかける。が、返ってきた返事はこの部屋の主ではなく可憐なお弟子さんの声であった。
 アルベドの弟子であるスクロースは、すこし頬を赤く染めながら勢いよく扉を開ける。急いでいたのか少し息も切れていた。


「名前さん!すみません先生は、今ちょっと出かけてて・・・・」
「ああ、いいよいいよ。気にしないで。頼んでいたものを受け取りに来ただけだし、きっと彼のデスクの上にあるから。中に入ってもいいかい?」
「はい!ちょっと、散らかってますけど・・・・」


 研究室はいつも散らかっているから気にしていないよと彼女に声をかけて部屋に入る。うん、いつも通りすごく汚い。
 床に落ちている試料や紙を踏まないように、アルベドのデスクに向かう。彼の机は綺麗なのに何故こんなにも部屋は汚いのか、これもいつのもことだが疑問に思う。
 苦笑いで目当てのモノを探していると、スクロースが私も外に用が、と言って頭を何度も下げながら部屋を出ていった。
 スクロースはとても律儀な子だなと思いつつ、彼の師匠を思い出し、彼に似なくてよかったと思うほど彼は少し常人離れしていた。


「ところで、頼んでいたやつどこだろう?というか、今日会いに行くって手紙をだしたんだけど・・・・」


 あきれながらデスクを漁るが頼んでいたものは見当たらなく、結局アルベドが戻ってくるのを待つしかなかった。
 椅子に座ってアルベドのデスクをぼうっと眺める。比較的綺麗にされているが物が多く、散らかっているように見えた。仕方がない、とデスクを少し綺麗にしていると彼のスペアらしき手袋を発見した。数枚あることから頻繁に交換していることがうかがえる。
 少し魔が差してその中から一組の手袋を拝借する。


「結構あったかいし、大きいや」


 手袋をはめてみると見た目以上に暖かく感じ、そういえば彼は欲雪山に上っていたことを思い出した。ならば防寒もしっかりしているはずだ。しかし、しっかりはめても指の先があまる為少しだけ指先が冷える。
 私とアルベドの身長差がある為か、手の大きさも違うようだった。細身で女顔のくせに、そういうところは男の子だよなあ、と思うと何だが急に恥ずかしくなり、急いで手袋を外して元の場所に戻そうとした。


「おや、もう来ていたのかい」
「!、アルベド」
「ん?」


title by icca

 
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