心配性彼氏02


その夜、当たり前に実弥はゆき乃の家へと向かった。

想定の範囲内ではあったが、チャイムを鳴らした実弥が開口一番に「何で動いてんだァ」と目を見開いて怒っていたので、余りにも理不尽だとゆき乃は少し腹を立てた。

足の痛みもあって、普段よりも怒りの沸点が低くなっていたのだ。



「動かなかったら誰が鍵を開けるのよ!実弥が来るのは分かってたけど、鍵開けたままにしてたらそれはそれで怒るくせにっ!」

「そりゃそうだな…悪かった」



実弥はバツが悪そうに頭をかいて謝ると、顔を膨れさせて怒っているゆき乃を片腕で引き寄せ、自分の胸元に抱き留めた。

心配して慌てて来たのだと、ゆき乃も分かっていた。

急いで仕事を終わらせてきてくれたんだと。



「まだ痛むかァ?」

「うん、すっごく痛い。でも……実弥が来てくれて嬉しい。今日だって、私のためにしてくれたこと、凄く凄く嬉しかった。ありがとう」

「別に当たり前のことしただけだァ」

「あんな事当たり前にしてくれる彼氏なんて実弥しかいないよぉ!」



実弥の胸元から顔を少し離して見上げたゆき乃は、少し顔を赤くした実弥と目が合った。

そォかよ、と照れてた実弥をやっぱり可愛いと思ったが、それを口にしたのがいけなかったのだと瞬時に察知した。

カッコイイならまだしも、実弥は可愛いと言われるのが好きではないのだ。

チッと舌打ちが聞こえたと思ったら、またもや軽々と抱き上げられたゆき乃。

行き着いた先は、ゆき乃のベッドだった。



「ちょ、え…実弥?」

「可愛い男は姫抱っこしたりもしねェし、こんな事もしねェだろ」

「……こんな事?」

「……」

「こんな事って…どんなコト?」

「わざと惚けやがって」



呆れるように吐き出された言葉と共に、口許を緩めた実弥がゆき乃の唇に自身のを重ねた。

強く押し付けられた唇は、すぐに食むように優しく動く。

ゆき乃の唇を確かめるように啄み、唇で十分に感じた後は、舌でその形を確かめ口内へと侵入していく実弥は、熱くなる体を少しずつゆき乃の方へと沈めていった。

だけど、途端に聞こえた「痛ッ」という声に、我に返ったようにその体を起こした。



「悪ぃ、怪我してんの忘れてたぜェ…大丈夫か?」

「うん」

「ハァ…夜勤続いてたしでゆき乃に会えたのが久々だったからなァ、つい」

「もう!一体ナニしに来たんだか!」

「煽ってきたのはゆき乃だろォがよ」

「ごめーんね!」



体を起こしたゆき乃が実弥に抱きつくと、苦悶な表情を浮かべた実弥だったが、「仕方ねぇ…一緒に寝てやるかァ」とゆき乃を後ろから抱き締めながらそっとベッドに横になった。



「ごめんね、実弥」

「バーカ、謝んじゃねぇ!治ったら思いっきり抱いてやるから覚悟しとけよォ」



お腹に回っていた実弥の腕が強くなり、思わずゆき乃は顔を緩めた。

足を痛めて散々だったけど、いい事が無いわけじゃかったから良かったと、安心しながら眠りについた。

アッサリと腕の中で寝息を立てるゆき乃に溜息を漏らしながらも、顔を緩めた実弥は、彼女を自分の方へと更に抱き寄せて目を閉じた。

本当、彼女にはトコトン優しい男だ。



〜完〜

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