大人の階段04


《side 実弥》


日付が変わって、もう寝静まってる玄関を静かに開けて入る。

ベタついた汗をシャワーで流してから、二階の自室へと向かった。

明日の講義は午後だったはず。

早く寝てレポートは朝にすっかなぁ。

そんな事を考えながら部屋を開けると、暗くても分かった違和感。

自分の部屋なのに、何か違う。

電気をつけようと手を伸ばした時、その違和感に気づいた。

微かに香る甘い匂いと、ベッドの上で丸くなってる物体。



「…ゆき乃」



何してんだ。

思わず出た声に、「うーん…」と寝返りをうつゆき乃の格好に思わず目を見開いた。

ダボッとしたシャツに太腿が見えるくらいのショートパンツ姿で、俺の布団にくるまって寝てやがる。

――何考えてんだァ、コイツは!

その格好と今のシチュエーションに若干ショートしていた頭を振って、ゆき乃の起こそうとベッドに近づいた。

勝手に部屋に入んじゃねェ!

人のベッドで寝てんじゃねェ!

そう言うつもりだった。

デコを突いて起こそうとした指が勝手に止まって、目に掛かってる前髪にそっと触れた。

風呂上がりの、ゆき乃の素肌。

変なメイクなんてする必要ねぇのにな。

何度か意味もなく髪を触っていると、モゾっと足が動いて俺が腰掛けている方へ寝返りを打つ。

その脚から…少し膨らんだ胸元から鎖骨、それから半開きの唇へと俺の視線が動いた。


――何を、考えてんだ俺は。


ずっと、妹みたいな存在だった。

玄弥の幼馴染で、同じように付き纏って、俺にとってはそれ以上でも以下でもない。

慕われてる、好かれてるのは分かっていた。

だけどそれは単なる憧れに過ぎない気持ちだって、ゆき乃はいつか気づく。

だから俺にとって、ゆき乃の立ち位置は変わらない。



そう、思っていたんだがなぁ。

伸ばした手がゆき乃の髪を掬い、それから頬、下唇へとなぞっていく。

こんな風にまじまじとゆき乃の見たのは、初めてかもしれない。



「…男の部屋で、無防備に寝てんじゃねェぞ」



逸る鼓動を隠すように、俺はゆき乃を背中で担いで窓を開ける。

実弥お兄ちゃん、と声が聞こえ、起きたかと思ったらすぐにまた寝息が聞こえて思わず顔が緩む。

熱くなった体を冷やすかのように、外は柔らかな風が吹いていた。

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