プロローグ

――忘れられない恋はありますか。

 世の中のどれ程の人が、その問いにYesと答えるだろうと考えたことがある。
 初恋、禁断の恋、一世一代の恋。その形は様々あると思う。それが永遠に続いているものかどうかは別として、心が燃えるような恋をした人は一体どれくらいいるのだろう。


「一目惚れしたって言ったら、信じてくれる?」


 光を反射し輝く金色を靡かせながら、その碧眼を真っ直ぐに向けた彼はそう言った。
 幼さを纏うその瞳だったが、向けられた眼差しから伝わる想いは、私の心を熱くさせるのには十分だった。

 忘れられない恋。
 果たしてそれが恋と呼べるのかも分からない、たった一日だけの関係。もう、四年も前の事なのに、今でも鮮明に覚えている。
 声も体温も、あの瞳も。



 忘れたいのに、忘れられない恋。


- 1 -
 
novel / top
ALICE+