予定ピッタリの時間。
待ち合わせの場所に行くと、すでに颯太がそこにいて。
「ゆき乃さん!」
片手を上げて、嬉しそうに掌を小刻みに振った。
女子高生かっ!
そう言いたくなるようなテンションの颯太と私の温度差は明白だった。
別に私の機嫌が悪いとかそんなんじゃない。
そもそもデートしたくないような毛嫌いする相手ならここに来ない。
そうじゃなくて…颯太のテンションが異常に高いんだと思う。
「よかったぁ!来てくれて」
「一分でも遅刻してたら帰ろうかと思ってたのに」
「するわけないやないっすか!もう楽しみ過ぎて一時間待機してました!眠れへんくて」
「早すぎだから!」
少し早くは来てたんじゃないかって予想はしてたけど、まさかそんなに早く来てたとは思ってなくて。
可笑しくて笑いながら颯太の腕をパシパシ叩いたら…颯太の胸が大きく動いた。
若干顔も赤くて、口許が緩んでる。
「ゆき乃さん、初っ端からこれじゃ自分もたないっすよ」
「え?何が?」
「いや…何もないっす。い、行きましょう!」
私をチラッと横目で見て、映画館があるビルへと歩き出す。
だから私も、当然その後に続くわけで。
――完全に無意識の行動。
私にはそれが自然で、違和感のないものだった。
意識してないからこその…自然な形。
「……」
だけど、颯太の表情が固まって、ピタリと足が止まった。