壁の掛時計がコツコツと時を刻む音、右頬に触れる寝具の柔らかさ、背中に感じる心地良い圧迫感、腰に絡みつく自分の物よりも質量のある腕…それらを意識した頃、やや温度の低い指先が頬から顎をゆっくりとなぞった。
「おはよう。良い夢が見れた?」
湿度を含んだ吐息が耳元に掛かる。気怠さに返事を飲み込むと、頬から顎をなぞった指先が首から鎖骨、その下の膨らみへと降りて来た。
「夢を見せてくれたことなんて無いじゃない。」
言い終わると、クスっと小さな息漏れが耳に当たり、指先で胸の膨らみを軽く撫でられる。
「目覚めたお前が忘れているだけだよ。」
彼は私を眠らせてくれる。毎夜、背後から私の体を抱き竦め、逃げられぬように抱き竦め、彼の左手が語りかける。お眠り…と。ゆっくりと円を描くように肌をなぞる左手の指先が時折先端に触れると、痺れるような疼きが体の中心を這い上がった。
「そうだね…お前には幸せな夢なんて見せてやらないよ。」
そう囁いた彼の唇が首筋に弱く吸い付く。
「…んっ……」
「こうやって、俺の腕の中に居る時間がお前にとって一番の幸せでしょう?だから、他の幸せなんて与えてやらないよ。」
ここに来たのはいつだっただろう……。
眠れなくなったあの日、彼の左手が囁いた。その異形を目にした瞬間、人成らざる者を愛してしまったのだと悟った。
「そうだね。私は魘夢と一緒に居られれば、他には何も要らないよ。」
「いい子だね、**…。」
骨張った左手で強引に顎を上へ向かせると、魘夢は**の唇に吸い付いた。
眠れない女