SS

×××SS_ブラクラ(エダ)

ブラックラグーン エダ(イディス)


次に出発する飛行機便のアナウンスが流れる。スーツの袖で涙を拭う部下にエダは、いい加減泣き止みなさい、と苦笑した。

「だって、だってぇっ……!」
「一生の別れじゃないのよ?」
「分かってますぅっ!! けど、けどぉっ」

うわあんっ、と彼女は声を上げると、引っ込みそうになっていた涙が再びポロポロとこぼれだした。もうっ、とエダはため息をつくと、ポケットからハンカチを取り出し涙を拭ってやる。時間をかけて化粧をして来たから最高の笑顔で送り出しますね、とメールでいっていたくせに、くしゃくしゃになっていた。

「先輩っ、ロアナプラって場所に行っても、わたしのこと忘れないでくださいねぇっ……!」
「はいはい。忘れないわ」
「約束ですよぉっ」
「ええ、約束よ」
「たまにはCIAにも顔を出してくださいねぇっ」
「ええ、もちろんよ」

先ほどから何度この会話を繰り返しているのだろう。

「せんぱぁいっ!」

ぎゅうっ、と彼女が抱きついてきた。もちろん、背中に腕を回し、抱き返す。ポンポンと頭を撫でる。しばらくそうしていると、アナウンスが鳴った。乗るべき便の出発時間が迫ってきた。

「……私が居なくても、しっかりやるのよ」

こくっ、と彼女は腕の中でうなづく。そっと体を離し、もう一度、頭を撫でた。彼女はぐすっ、と鼻をすすり、涙を拭う。

「笑顔で見送るって、決めたから……」

そう言うと、彼女はふわりと笑った。

「行ってらっしゃい、先輩……!」

くしゃくしゃの顔だが、最高の笑顔。エダは、「私」から、いつも彼女にだけ見せている「あたし」に変わり、歯を見せて微笑んだ。

綺麗な世界でまた会おう
(じゃあな、行ってくるよ)

再掲載||180216(title=リコリスの花束を)

(2018/02/18/BACK)