SS

×××SS_ブラクラ(ロットン)

ブラックラグーン ロットン


ああ最悪だ、と思った。買い物を終え、店の外に出ると雨が降っていた。さっきまでは降っていなかったのにとため息をつく。空を見ると灰色の雲が広がっており、太陽は見えず、当分の間、止みそうにない。
ちょうど屋根もあることだし、ここで雨が止むのを待つことにした。
しかし、待てども待てども雨は止む気配を見せない。携帯電話をポケットから取り出し、時間を確認する。買出しに出かけて早一時間。早く店に戻りバオの手伝いをしなくては……と気だけが焦る。じめじめとした空気に、ざーざーという雨の音。ついてないなあ、とつぶやいた時、見覚えのある人の姿を視界の端に捕らえた。黒尽くめの服に、同色の傘に、綺麗な銀色の髪。もしかして……と、目を凝らす。そして、ああやっぱり、と口の中でつぶやいた。
おーい、と手を振るとこちらに気づいたのか、彼――ロットンは小さく頭を下げると同時に傍にやってきた。

「傘、持っていないのか?」

ええ、とうなづくなりロットンにお願いをする。

「お店に戻りたいけれども、この雨だし……だから、」
「それなら、俺の傘に入れば良い」

と、ロットンは言葉をさえぎる。今この瞬間だけ、ロットンが神様に見えた。ありがとう! と礼を言い、さっそく横に並ぶと、二人は歩き出した。
傘を叩く雨音をBGMに、しばらく無言で道を進む。気まずいなあ、と思いながら、横目でロットンを盗み見ると、肩がぬれているのに気づいた。ふと、自分の方を見ると、雨にぬれない様にと傘が少し傾いている。キザだなあ、と苦笑した。

「どうした?」
「あなたはどうしてこの町に来たのかなあって思っただ――きゃっ!?」

空瓶が転がっていたことに気づかず、それに足をとられた。体が後ろに倒れかけた瞬間、ぽすんと両肩を支えられる。ぱさりと傘は地に落ちる。冷たい雫に頬がぬれる。耳元では、静かな呼吸音が聞こえた。
後ろを見ると、すぐ近くにロットンの顔がある。綺麗だなぁ、と思わず見惚れた。

「大丈夫か?」
「あ、う、うんっ。ありがと」

頭を下げるなり、急いでロットンから離れた。ロットンは落ちた傘を拾い上げる。ほら、と呼ばれ、再び肩を並べて傘の中に入った。荷物を抱えなおし、ちらっとロットンを一瞥する。何故かはわからないが、心臓の鼓動が早くなる。いやまさかそんな、と思いながら、もう一度、ロットンに視線を向けた。


平行線上のふたり
「……あ、」
「!? な、なにッ!? ど、どうかしたのっ?」
「雨が、上がったな……」
「あ……本当だ」

再掲載||180218(title=リコリスの花束を)

(2018/02/18/BACK)