SS

×××SS_ブラクラ(双子)

ブラックラグーン ヘンゼル&グレーテル


無邪気に遊ぶほかの子ども達をぼんやりと眺め、ヘンゼルとグレーテルは扉の前に並んで座っていた。ふと、グレーテルは空を仰ぐ。曇った空、高い塀――いつまで経っても変わらない景色にため息が出る。

「二人とも、何をしているの?」

扉が開くと同時に背後から声がかかる。二人は振り返ると、にこりと微笑む。

「「ママ!」」

と、呼ぶと二人は立ち上がり抱きつく。瞬間、バランスを崩しその場でしりもちをついた。

「もうっ、突然抱きついてくるのはだめよ。危ないじゃない」
「先に抱きついたのは姉さまだよ」
「あら、違うわ。先に抱きついたのは兄様よ」

どちらが先かでもめている二人に、小さく肩をすくめる。くしゃりと双方の髪を撫で、視線を前にやる。

「二人はみんなと遊ばないの?」

視線の先には子ども達が無邪気に遊んでいる。やだ、と即答したのはグレーテルだった。

「だってつまらないんですもの。いつも同じ遊びばかり」

そう言うと、グレーテルはぎゅっと彼女に抱きつく。

「わたし、みんなと遊ぶよりママと一緒がいい」
「あ、ずるいよ姉さま。僕もママと一緒がいいっ」

グレーテルと同じようにヘンゼルも彼女にぎゅっと抱きつく。こんな甘えん坊に育ったのは誰のせいかしら、と彼女は苦笑交じりに呟く。すると二人は声をそろえて、ママのせい! と答えた。

「わたしね、大きくなったらママみたいな人になりたいわ。誰にでも優しい、温かくて大きな、絵本で見たぽかぽかとする太陽みたいなママに!」

満面の笑みを浮かべて自分を称えて言うグレーテルに、少し恥ずかしくなる。照れながら、ありがとう、と微笑んだ。

「あなたならなれるわ。私以上の、みんなのママに」
「わあっ、本当!? ありがとうママ! わたし、がんばるわっ」
「うん、頑張ってね」
「僕も僕もっ」

グレーテルに負けじとヘンゼルが声を上げる。

「僕も大きくなったら、みんなのパパになるっ。ママ、応援してくれる?」

不安げに首をかしげるヘンゼルに、もちろん、と頷く。ぱあっ、とヘンゼルは表情を明るくすると、再び抱きついてきた。

「ママ、大好き!」
「まあっ、兄さまったら!」

ヘンゼルに負けじとグレーテルも抱きつく。二人は上目で顔を見ると、ニコリと白い歯を見せて無垢な笑顔を浮かべた。

「「ママ、愛してる!」」

その言葉に、知らずと口元が綻ぶ。私もよ、と返事をするなり、ふとに薄鈍色の空を仰いだ。

bienveillance divine
(神よ、どうかこの子たちが優しくてすべてを愛する大人になれるよう、私とともに見守っていてください)

再掲載||180218
(本当は双子の名前は出さずに頑張ろうと思ったけど、数行で断念。ちなみにヒロインは施設内に定期的にやってくるシスターという設定。シスターって呼ばせようか考えてやめました。ママの方が個人的に萌えたので←←)

(2018/02/18/BACK)