SS
×××SS_無双(晋)
三國無双_司馬昭+王元姫はあ、と彼女は憂鬱な色とともにため息をついた。幸せが逃げるぞぉ、と前の席で王元姫にどっさりと渡された書物に目を通しながら、彼女の兄――司馬昭は言う。面倒くさそうに頬杖をつき、いつになったら読み終えることができるのかと、無意識にため息をこぼした。
そんな司馬昭をちらりと一瞥すると、彼女は再びため息をつく。
「あーあ。わたし、男に生まれたかったなぁ」
「えらく唐突だな……」
「そうしたら、元姫お姉さまは面倒臭がりで愚痴しか取り柄のない子上お兄さまではなく、子元お兄さま似のきっちりとして格好いいわたしに嫁いでいたかもしれないのに。あーあ、残念だなぁ」
「それは遠まわしに俺のことを貶しているのか?」
「あら、そう聞こえませんでしたの? だとしたらなんてすばらしいお耳をお持ちなのでしょう!」
お前なぁっ、と司馬昭はヒクヒクと顔を引きつらせる。彼女が弟だったならば、今頃はヘッドフックをかけ参ったというまで小突いてやるのだが、父の司馬懿をのぞき、妹にそんなことは出来ない。
「本当に、お前が男なら俺も嬉しかったよ。色んな意味で」
「色んな意味ってどういうことです?」
ハッとなり彼女は顔を青くし続ける。
「もしかしてお兄さま……男色趣味だったんですか!?」
「ちげーよっ!」
間髪入れずに否定をすると、面白くなさそうに彼女は舌打ちをした。おい、と司馬昭は突っ込む。本日三度目となるため息をついた時、コンコン、と扉が外側から叩かれた。どうぞー、と司馬昭の代わりに彼女が返事する。中へ入ってきたのは、蓋を閉めた小さな容器を片手に持った元姫だった。ガタンッと彼女は立ち上がる。どうした? と司馬昭は手を止め、元姫に尋ねた。
「えっと、その……」
ふいと視線を逸らしたが、すぐに元姫は二人を交互に見やる。
「今日は、ばれんたいんでーっていう日らしいの」
「ばれんたいん、でー?」
聞きなれない言葉に彼女と司馬昭は同時に首をかしげる。思わずくすっと笑いそうになったが、元姫は紡ぐ。
「ばれんたいんでーっていうのは、大事な人に食べ物を贈る日。だから、」
と、一度話を区切ると、元姫は手に持っていた容器の蓋を開けた。中には、小ぶりの肉まんが二つ入っていた。はい、と元姫は容器を前に差し出す。
「子上殿と、あなたに」
ふわりと元姫は微笑む。司馬昭はふっと口元を緩める。彼女は頬を赤らめるなり、満面の笑みを浮かべた。
Happy Varentine!
「お姉さま大好き!!」
「きゃっ!? もう、危ないでしょう。もう少しで落としそうになったじゃない」
「うふふっ、ごめんなさぁい!」
「まったく……これだから、子上殿と一緒で目が離せない」
「ちょっ!? 俺とこいつは同じ扱いなのかよ!?」
「酷い……わたし、子上お兄さまみたいに愚痴々々とお姉さまに愚痴ったりしない良い子なのに……」
「妹よ、ちょっと今から腹ごなしに鍛錬でもするか。けど兄ちゃん、手加減できるか自信ねーぜ」
「あら、良い案ですわお兄さま。めったんめったんのギッタンギッタンにして差し上げます」
「まったくもう……二人とも」
「なんだ、元姫。用なら後にしてくれ」
「お姉さま、これは兄妹の真剣勝負で」
「今すぐここに来て正座しなさい。しないのなら――お仕置きよ」
「「すみませんでした」」
再掲載||180218
(2018/02/18/BACK)