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×××SS_dia(前園,成宮)

dia前園,成宮ss
成宮は長編夢主設定です。


■ 前園と夏の話

「ねーゾノ、夏で嫌いなものってないの?」
前園「なんやねんいきなり。特にはないけどな」
「えーうそーまじでー? 本当にー?」
前園「ほんまや。そういうお前はあるんか? 夏で嫌いなもん」
「ある」
前園「即答やな!?」
「聞く? 聞く?」
前園「お前、暇やから話したいだけやろ……」
「おーいやー。おーやー」
前園「せやったらさっさと話せ」
「わたし、あれとあれが嫌い」
前園「主語つけろ! わからん!!」
「あのね、地面に落ちてる蝉。死んでるのかなーって思って真横通ったらいきなり、ジジジッ!! てその場をぐるぐる動き回る通称セミ爆弾」
前園「あー……あれは確かに吃驚するな」
「虫が苦手な人には嫌なやつですぜ」
前園「せやな。で、他はなんかあるんか?」
「後ね、低空飛行してくる蝉」
前園「また蝉か!」
「あいつ等、問答無用でぶつかってくるじゃない。本当にやめろって思うのよね」
前園「許したれや、蝉はこの時期でしか輝かれへんねんから……」
「!? ゾノは! 蝉の味方だったか!! 裏切り者!!!」
前園「何が裏切り者やねん!? って、コラ!! 人のデコ叩いて立ち去ろうとすな!! 待て!!!」


■ 成宮とバレンタイン
 
ふと気づくと、見慣れたいつものグラウンドの風景。しかし周りには誰も居らず、ただ一人佇んでいた。何故ここに居るのだろうかと考えるも答えは出てこない。とりあえず近くのベンチへ向かい、空いている席に適当に腰を下ろした。
ふうっと息を吐くと、あーっ!! という聞きなれた声。驚いて目を見開くと、いつの間にそこへ居たのか、両手に可愛らしいラッピング袋を持ち、肩で息をしているマネージャーの姿があった。やっと見つけたとでも言うかのように、ほっと安堵の色を浮かべると、きょとんとしている成宮の傍へとやって来た。なんだか今日はいつもと違うような気がする、と成宮は思うも、マネージャーに会えて嬉しく感じた。

「そんなに急いでどうしたのさ」
「どうしたって……鳴を探していたのっ」

俺を? と首をかしげると、マネージャーはこくんと頷く。成宮の隣の席に腰掛けると、あのね、と言うなり手に持っていたものを差し出した。

「今日は……いつも鳴にはお世話になっているから……これ、」

成宮はハッと思い出した。今日は2月14日――バレンタインデーだ。恥ずかしそうにじっと上目で見つめてくるマネージャーを見つめ、程なくして成宮の胸は大きく高鳴り始める。もらってくれる? と一呼吸置いて言うマネージャーに、もちろん!! と即答し、差し出されていた物を受け取った。さっそく中に入っている物を食べようとした時、まって、とマネージャーの一声。開封しようとした手を止め、なに? と成宮は二、三度目を瞬いた。
マネージャーは瞳を伏せ、ほんのりと頬をりんご色に染める。数秒間を置いた後、ゆっくりと唇を開いた。

「あの、ね……実は、もう一つ……受け取ってほしいものがあるの」

軽く首を傾げたと同時に、マネージャーはそっと成宮の膝の上に手をのせる。少し体重をかけると、成宮に顔を寄せた。

「チョコレートと一緒に、わたしも食べて……?」

成宮は全身に雷が落ちたような気がした。まじで? これは夢? 本当に現実? と頭の中で自問自答を繰り返す。固まっている成宮に、いらない? とマネージャーは囁くように尋ねる。
瞬間、成宮の理性は吹き飛び、マネージャーの両肩を掴むとその場に押し倒した――。

「――っていう俺得な夢を見たんだけど、現実になんねぇかなー」

食堂で朝食をとりながら、成宮は大きく息を吐いた。成宮の見た夢の話を聞かされていたカルロスと白川は箸を止め、微妙な表情を浮かべている。すっげぇ良い夢だったんだけどなぁ、と呟く成宮に、いやいやいや、とカルロスは軽く手を振った。

「鳴、もしそれが現実に起こったとしてもだ」
「それ絶対起こらないと思うけど」
「冷静に突っ込むなって。もしもの話な」

白川は冷めた表情で再び箸を動かし朝食を食べ始めた。何度目かのため息を吐いた成宮に、カルロスは呆れた色で言う。

「もしそういうことが起こったとしても、絶対に雅先輩の前で言うなよ。まじで殺されるぜ」
「けどさ、夢でもマネージャーほんとに可愛かったんだよねぇ。俺の下でないてるところとか特にそそって、」
「……誰がお前の下でないてるって?」

成宮の言葉をさえぎったその声は、一瞬にして場の空気を変えた。そら見ろ、と場を弁えずに夢の話をした成宮に心の中で合唱すると、カルロスと白川は朝食を載せた盆を手に別の席へと移った。
ギギギッと首を動かし、顔を引きつらせて声のした方を振り向く。背後には仁王立ちし、尋常ではないオーラを醸し出している原田の姿があった。おはよう雅さん、と笑顔し、さっきのは夢の話だって! と続ける。しかし、その夢の内容が実に気に入らないのか、原田は厳しい表情のままだ。
このままではまずいと思った成宮も、自身の盆を手に取り席を移動しようとする。だが、それは原田によりすぐに阻まれた。

「ちょっと表出ろ、鳴」

その笑顔は誰もが凍てつく程のものだった。数秒と経たず大きな音が鳴り、雅さんの馬鹿ーっ!! という成宮の声が稲実野球部の食堂に響いた。

(2018/08/03/BACK)