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×××SS_dia(小湊亮)

ダイヤのA 小湊亮介 春市双子夢主設定


冬休みに入り幾日か経った日、兄の亮介が帰って来た。両親には既に連絡を入れていたそうだが、突然の帰宅に春市の双子の妹は驚きとうれしさのあまりに全員の前で号泣した。
ある日、リビングでテレビを観ていた亮介の近くで妹は出された課題をしていた。何の教科なのかと何気なくたずねると、数学、と拗ねた色で答えた。昔から理数系は苦手で、春市と同じく文系が得意だ。頑張れと声をかけテレビに目を戻すと、うーっと妹は頭を抱えてうなった。程なくして再び視線をやると、妹の顔には助けてとかかれてあった。
やれやれと亮介は肩をすくめると腰を上げ傍へ行く。隣に腰を下ろすと、妹は瞳をキラキラと輝かせていた。

「どれがわからない?」
「これ。解き方書かれてるけど、ぜんぜんさっぱり」

むすっとした表情でわからない問題文にシャープペンシルで薄く丸をつける。問題文を読んだ亮介は少し考えると、基本から教えることにした。
亮介の言うことはとてもわかりやすく、頭にすっと入ってくる。教わった基本をもとに改めて問題文を読むと、ずっと考えて難問だったはずなのに、すんなりと解くことが出来た。出来たじゃん、と褒める亮介に妹は感動のあまりに頬を紅潮させた。
次は自分で頑張れよ、と微笑むと、腰を上げてもといた場所へと戻った。しばらく黙って課題をしていた紅潮だったが、唐突に亮介の名前を呼ぶ。またわからない問題でもあったのかと思い、腰を上げて傍に座る。今度はどれだと尋ねると、問題のことではないと妹は頭を横に振る。

「あのね、亮ちゃん。明日、暇だったらデートして」

いきなりだなと思うも、明日は特に何もない。緊張した面持ちで返事を待っている妹に、いいよと頷いた。ぱあっと顔を明るくし、それじゃあっ、と明日のことについて話そうとする妹に、ただし、と水を差す。

「この躓いてる問題を自分で解けたらの話」
「うぐぬぅっ!?」

女の子とは思えない声を上げた妹に小さく笑う。シャープペンシルを片手に頭を捻り、うむむ……と問題とにらめっこをはじめた。少し様子を見ていたが、どうしてもわからないらしく、手は止まったままだった。仕方がないと亮介は息を吐くと、一つ一つ丁寧にヒントを出した。
しばらくして、わかった! と声を上げると妹は問題を解き始める。答えを見た亮介は、正解、と一言。妹は両腕を上げてガッツポーズをした。

「ありがとう亮ちゃん! すごくわかりやすかった!!」
「俺はただヒントを言っただけ。解いたのはお前の実力だよ」

照れたように妹は体を小さくすると、今日の分の課題を終えたのかテーブルの上から片付ける。片付けながら、ねえ亮ちゃん、と呼んだ。

「デートのことなんだけど、」
「わかってる。約束だからしてあげるよ」

そう言うと、妹はほんのりと頬を赤くしにこにこと笑顔を浮かべる。どこへ行くのかと尋ねると、駅近くのショッピングモールだと答えた。何でも期間限定で冬物セールをしているらしく、新しい服等を買いたいのだそうだ。自分も新しい服が欲しいと思っていたところだったから、快く了承した。

「それじゃあ、明日はよろしくね! 亮ちゃんっ」

わかったと頷くと、亮介は昔と変わらない優しい手つきで妹の頭をくしゃりと撫でた。


酸素欠乏症候群
「あう……わたし、いま死んでも良いかも……っ」
「コラコラ、死ぬ宣言しない」
「あうっ。この手刀も久しぶりで嬉しくて酸欠になりそう」
「なに言ってるんだか」

再掲載||180218(title=たとえば僕が)

(2018/02/18/BACK)