ふと空を仰ぐと、雲一つない快晴だった。今日の練習も暑いだろうなあ、と心の中で呟いた。
瞼を閉じ頭を下げる。軽く息を吐き瞼を開けると、目の前に見知った人物――マネージャーのなまえが立っていた。パチパチと瞬きをしているとなまえはニッと笑い、やっほ、と川上に声をかける。川上はイヤホンを外すと、よお、と返した。隣良い? と手に持った弁当を見せてなまえは問う。もちろん川上に断る理由はない。プレイヤーを指先で操作し、音楽をとめるとブレザーのポケットへ仕舞った。毎日暑くなってきたねー、となまえは話を振りつつ川上の横に座った。
「あ、カラアゲ」
「食べる? 冷凍だけど」
「冷凍でもカラアゲはカラアゲだろ? 好きだから食う」
「どうぞー」
広げた弁当をなまえは差し出す。サンキュ、と礼を言い川上は詰められていたカラアゲを指先で摘むと口の中へ入れる。旨っ、とこぼした川上に、寮母さんのカラアゲの方が美味しいでしょー、となまえは小さく笑った。
しばらく他愛の無い話をし、時には笑顔の花が咲いた。いつの間にか二人とも昼食を食べ終わっていた。だがそれでも二人の話は止まず、次々と話題が出てくる。
ほどなくして一区切りついた時、そうだ、となまえは話題を切り替えた。
「ねえ、川上。オススメの曲とかってある?」
「え、なんだよいきなり……」
友人達から色々とオススメの音楽を借りたりしているのだが、なかなか自分に合ったものに出会わないのだとなまえは続ける。どういうものが好みかと川上は尋ねるも、特にないとなまえは言った。
「あ、それじゃあこの曲とかどうだ?」
そう言い、川上は仕舞った音楽プレイヤーを取り出しCDジャケットと曲名を見せる。聴いてみるか? とイヤホンを片方差し出すと、なまえは頷きわくわくとした表情を浮かべた。イヤホンを耳にあてたことを確認すると、川上は少し音量を下げ最初から曲を流す。一番を聞き終えるとなまえは呟いた。
「これ、すっごく好みかも……」
良かったと川上は安堵の色を見せ、これもオススメだと次の曲を流す。何曲か聴き終えると、なまえはイヤホンを外しきらきらとした目で川上に言った。
「このCD、是非貸して!」
「んじゃ、放課後取りに来いよ。寮にあるから」
「本当? ありがとう、川上ー!」
喜ぶなまえに、気にすンな、と川上は照れながら結ぶ。
「CD借りるなら何かお礼考えなくちゃ。ねえ、何が良い?」
「いや、お礼の内容を本人に聞くなよ……」
「だって、要らない物を貰っても困るでしょう?」
「まあ、そうだけど」
「何でも良いから、適当に考えていてよ」
適当が一番難しいんだけどな、と川上は口の中で呟く。お礼……、と心の中で復唱していると、ふと思いついた。
「お礼、だけどさ……みょうじのオススメの曲、貸してくれないか?」
それで良いのかとなまえは目をきょとんとする。しかしすぐにわかったと頷くと、じゃあさ、とパチンと手を叩いた。
「もし良かったら、今試しに聴いてみる? 実はわたしもプレイヤー持っていたり」
スカートのポケットからピンク色の音楽プレイヤーと同色のイヤホンコードホルダーを取り出す。コードホルダーから仕舞っていた白色のイヤホンを伸ばし、ジャックをプレイヤーに接続する。はい、とイヤホンの片方を川上に渡した。川上はそっと耳にあて、曲が流れるのを待つ。プレイヤーを操作しながら、今はこれがオススメかなー、ともう片方のイヤホンを耳にあてるなりなまえは曲を流した。イントロはなかなかに川上の好みをついており、知らずと体はリズムに乗る。無意識になまえに視線をやると、同じようにリズムに乗っていた。
好きな音楽を一つのイヤホンで二人で共有している――少し恥ずかしい気持ちもしたが、不思議と嬉しく感じた。
心音共有
(あ。俺達、いま繋がってる――)
愛子||150604
(title=星屑Splash!)