休憩に入りしばらくして、なまえはなんてことを約束したのだろうと後悔した。こちらを見ている部員達は半分は驚き口をポカンと開け、一部は必死に笑いを堪えている。例外が一人居り、先程から近くでまるで犬のように吠え続けていた。
木陰に入っている為、じりじりとした暑さは和らぎ、時折吹く風に撫でられると随分と心地良い。小さく息を吐き、ふと視線を下げる。芝生の上に座っているなまえの膝の上に頭をのせ、仰向けになって休憩している降谷の姿。気持ちが良いのか目を瞑っていた。
アツアツだな〜、と茶化してくる御幸をキッと睨み、再度なまえはため息を吐いた。
どうしてこうなったのか、となまえは事の次第を思い出す。練習に入る前、マネージャー達が今日は降谷の誕生日だと話しているのを聞き、何かお祝いをせねばとなまえは意気込んだ。グラウンドへ入ろうとしていた降谷を呼び止め、せっかくの誕生日なのだから何か欲しいものはないかと尋ねた。すると降谷は少し考えた素振りを見せると、思いついたのか平然とした色でこう告げた。

「先輩に膝枕して欲しいです」

もっと別のもので欲しいものはないかと聞いたが、降谷は譲らず、そうこうしているうちに練習の時間となってしまい勝手に話をまとめられ今に至る。誕生日という大事な情報はもっと前に知っておくべきものだった、となまえは反省した。ほとんどの部員達からはいつの間にか出来ていた二人、として好奇な目で見られているのがわかる。
降谷とのやり取りを聞いていたはずの御幸と倉持はいじるネタが出来たことに悪い顔をしていた。変われ降谷ー!! と叫んでいる沢村を、同じく話を聞いていた春市が、今日一日だけの話じゃない、と宥めていた。それでも沢村の声は収まらず、皆が許しても俺が許さーん!! とまるで父親のような発言を繰り返している。沢村の声が大きくて眠れないのか、降谷は瞼を開けると不機嫌な色をした。聞いているのか降谷! とまだ続ける沢村に降谷はつーんと無視した。

「ねえ、降谷。誕生日プレゼントがその……わたしの膝枕なんかで良かったの?」

何気なくそう尋ねると、はい、と降谷は答える。不思議な子だとなまえは思った。

「近くにスーパーとかあるし、大したものとかは無理だけれども、言ってくれれば買いに行ったりもしたのに」
「膝枕で良いんです」
「何でそこまでこだわるかね」

ちょいと首をかしげるなまえを降谷はじっと下から見上げると、だって、と口を開いた。

「せっかくの誕生日なので、なまえ先輩に甘えたくて」
「……えっ、」

予想もしていなかった言葉になまえは目を丸くする。降谷は少し照れくさそうにふいと視線を逸らした。

「今日くらいは、自分が先輩を独占したい……です」

そう紡ぐと、駄目ですか? と降谷は寂しそうな色でなまえを見る。その姿が、言葉が、きゅうっとなまえの中の何かを締め付けた。急いで口元を手のひらで覆い隠し昂る気持ちを抑える。
二、三度、大きく深呼吸をすると、なまえはそっと降谷の頭を撫で、まるで太陽のような眩しい笑顔を浮かべた。


太陽に負けない輝き
(誕生日おめでとう、自慢の後輩でありエース候補の降谷!)

愛子||190331
(title=星屑Splash!)