「どうせ放課後にたくさん動くんだから大丈夫ですー」
「動くっつっても俺等以下だろ」
「……それでも動いてるもん」
顔を顰め、ぽりぽりとなまえはお菓子を頬張り続ける。倉持は知らねぇぞと忠告した後、腹が減っているのか一つくれと手を差し出した。仕方ないなぁ、とやれやれと肩をすくめると、なまえはお菓子を一つ手に取るなり軽く口に挟む。唇に挟んだそれを、んっ、とそのまま差し出した。
「……は?」
倉持は固まりぱちぱちと目を瞬く。だがなまえはにこにこと笑みを浮かべ、早く食えと言わんばかりに目をキラキラとさせる。数秒程黙っていた倉持だったが、人をからかっていることに気づき、先輩である小湊亮介の手刀を力を抑えて見よう見真似でなまえの頭に落とした。するとなまえは今度はむすっとした色をし、良いじゃん冗談なんだからさー、と唇に挟んでいたお菓子をぽりぽりと食べながら小言をこぼした。洒落になんねぇよ、と倉持は返しなまえの手にある新しいお菓子を一つ奪うようにして取った。
「ねえ御幸、倉持は絶対ヘタレだよ。いざという時にポッキーゲームが出来ないヘタレだ!」
「誰がヘタレだ! お前一回シメんぞ!?」
視線を上げ、前で騒ぐ二人を見るなり御幸は苦笑する。
「倉持がヘタレなのは分かりきってることだろ?」
「あ、そっか」
「だから誰がヘタレだ! それから納得すんじゃねぇよっ」
鋭い眼光で倉持はなまえと御幸を交互に睨む。倉持を指差し笑っているなまえに、なあ、と御幸は声をかける。
「俺も腹減ってんだ、一個くれよ」
するとなまえは待ってましたと言わんばかりに先程、倉持にしたことと同じをする。それを見た倉持は、知らねぇぞ、とズボンのポケットに手を入れ呆れた表情を浮かべた。御幸はなまえの冗談に付き合うことにしたのか、顔を近づけるとお菓子の端側だけをぱくりと齧る。なまえは満足したのか、頭を下げようとした時、御幸の表情が変わった。
先程とは違う、マウンドに立っている時のような真剣な色だ。驚いてなまえは動きを止める。一瞬の隙をつき、御幸はなまえの頬に手を添えると更に顔を近づけた。瞬きをした刹那、御幸の顔がなまえの目の前にあった。唇には柔らかな感触。しかしそれはほんの数秒のことで、ゆっくりと二人の唇は離れる。御幸は含んだお菓子をぽりぽりと食べ、チョコレート甘っ、と顔を眉根を寄せた。
穏やかな休憩時間は一転し、クラスの中に居た誰もがなまえと御幸に目を向けている。静まり返った教室の中に音が戻ったのは、顔を真っ赤にしたなまえだった。
唇に忠告
「じょ、じょ、冗談って言ったのに! き、キスまでする!?」
「あれ、冗談だったの? 俺には誘ってるように見えたんだけど」
「御幸(バカ)ーっ!」
「コラコラ、沢村みたいに読むな」
「(コイツ等さっさと付き合えば良いのに……めんどくせぇっ)」
愛子||190331
(title=星屑Splash!)
(倉持→友達←ヒロイン→好き←御幸 みたいな図かも)