次の授業は英語で、確か小テストがあったはずだ。丹波光一郎は机の上に教科書等の用意し、まだ少しだけ痛む顎を軽く撫でる。小さく息を吐いた時、ねえ、と声をかけられた。声をかけて来た人物を見るなり丹波は驚く。声をかけたのは、丹波が密かに想いを寄せている同級生のみょうじなまえだった。

「丹波くん、少し良い?」
「あ、ああ。どうかしたのか?」

緊張した面持ちで丹波は首をかしげる。あのねっ、となまえは言った。

「頭、撫でさせてもらっても良いかなっ?」

突然のお願いに丹波は一瞬動きを止める。数秒程経ちようやく我に返ると、は? と声を出した。

「なんで、頭……?」
「つ、次の英語の授業、小テストあるでしょう?」
「あるな……いやしかし、俺の頭と関係ないだろう?」

なまえはふるふると頭を横に振り、そんなことはないと否定する。丹波は少し嫌な予感がしたが、撫でたい理由を尋ねた。

「小湊くんからね、丹波くんの頭を撫でるとご利益あるよって聞いたの!」

やっぱりか、と丹波は頭を抑えた。小テストに自信がないとこぼしたなまえに、冗談のつもりで小湊亮介は言ったのだろう。だが、根が真面目ななまえはすっかりそれを信じてしまってたようだった。

「丹波くん、駄目……かな?」

寂しそうな色を見せてなまえは問う。本来ならば嫌だと言うのだが、他ならぬなまえの頼みだ。それに、想いを寄せている子に頭を撫でてもらえるというのは、ある意味本望でもある。丹波は緩みそうになった口元をしっかりと引き締めると腹を括った。


これで伝わりゃいいのに
「あれ、面白いことになってるね」
「小湊くん! 丹波くんの頭を撫でさせてもらってるの! 丹波くんのお陰で、なんだか良い点数が取れそうな気がするわっ」
「そ、そうか……役に立てたようで、何よりだ」
「ピカ一郎、顔真っ赤だね。早く伝えて玉砕すれば良いのに」
「え、縁起の悪いことを平然と言うな!」
「伝える? 玉砕?」
「みょうじには関係のない話だっ。気の済むまで撫でれば良い!」
「えっ、良いの? ありがとう、丹波くん!」

愛子||150527
(title=4m.a)
(丹波くんの頭をナデナデしたくて)