食堂でエミヤ特製のプリンを食べていると、ラフな格好をしたモードレッドがやって来た。誰かを探しているらしく、入り口できょろきょろとするも、なまえと目が合うなりムッと不機嫌な色を浮かべてずかずかと足音を立てて傍へとやって来た。
どかりと前の席に座ると、モードレッドはじっとなまえを見据える。なまえはちょいと首をかしげると、そっとプリンを差し出してみた。
「食べる?」
「いらねぇよ」
「でも、あきらかに"イライラなう"って感じだよ?」
うっ、とモードレッドは一瞬口ごもる。黙っているのは性に合わないのか、クソッ、とこぼして頭をガシガシとかく。ドンッとテーブルを叩くと、あのなぁ! とモードレッドは唇を開いた。
「あれだけサーヴァントとは契約出来なかった癖に、ちゃっかりセイバーと契約してんじゃねぇよ! しかも、よりにもよって異世界の父上ってどういうことだ!?」
どういうことと言われても……、となまえはパクリとプリンを口に含む。同期の藤丸立香は既に多くのサーヴァントと契約をしている。モードレッドもその一人で、カルデアでは古参の一人だ。人理修復を行うにあたって、なまえにもマスターとして、そしてレイシフトの資格はあったものの、サーヴァントとの契約に関しては何故かはわからないが出来ずに居た。だが、立香一人では補いきれない魔力供給をダ・ヴィンチ特製のある装置を身につけて行っている。
そんななまえだったが、つい先日、ようやくサーヴァントと契約を交わすことが出来た。契約をしたのはセイバークラスのサーヴァント、名前を"アーサー・ペンドラゴン"――目の前に居るモードレッドの父親にあたる人物だ。しかし、モードレッドと何か繋がりがあるというわけではない。何故なら、契約をしたアーサー王はこの世界とは別の世界のアーサー王なのだ。この世界のアーサー王であるアルトリア・ペンドラゴンは既に立香が契約をしている。そういえば初めて対面した時、二人のアーサー王は驚いてはいたものの興味深く話をしていたのを覚えている。
変わらずきょとんとした色を浮かべて返事をしないなまえにモードレッドはとうとう痺れを切らしたらしい。腕を伸ばすと、プリンを食べ終えたなまえの頬をむぎゅっとつねった。痛い痛いと訴えるも、モードレッドはやめようとはしない。ペシペシと手を叩いて抵抗するもなかなか離してはくれない。厨房からチラッとエミヤが様子を伺う。エミヤと思わず目が合い、なんとなく気まずくなってモードレッドは渋々といった風になまえの頬を開放した。
頬をさすり、なんでつねられたんだろうとなまえは眉を八の字にする。単刀直入に言うけどな! とモードレッドは少し声を荒らげた。
「オレは、お前とはかなり気が合うと思ってンだ! それになッ、連中の中じゃあお前とは一番仲が良いと自負してる!」
だからその、とモードレッドは軽く深呼吸をする。息を吐くと同時に、気持ちは落ち着いたのか力なくテーブルに額をのせた。
パチパチとなまえは目を瞬き、頭をたれたモードレッドを見やる。なまえは頭の中で先程の言葉を整理してみた。確かにモードレッドとなまえは気が合う。波長が合っているといえば良いのか、以心伝心する時もある。特に戦闘中は立香に代わり大量の魔力供給を行っていた。好みのものも似ており、時間があれば二人でお茶会を開いたり剣の稽古をつけてもらうこともあった。一番仲が良いと思ってくれている……それは即ち、なまえだけが抱いていたものではないことを指していた。
顔を上げたモードレッドの頬はほんのりと赤く染まっている。ふいとなまえから視線を逸らすと、つまりだ、と続けた。
「オレは、お前の……親友の一番最初のサーヴァントととしての契約を結びたかった。すぐにでも可能なら、オレは立香(マスター)との縁を切り契約をする。……いや、契約をしたい」
逸らしていた視線をなまえに向け、お前はどう思うんだよ、と尋ねる。すると、なまえはふにゃんと表情を崩し嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、モードレッド。あなたの気持ちを聞けて、わたしすごく幸せ」
でもね、となまえは言葉を添えた。
「立香とは契約を切らないで、このまま協力をしてあげて。わたしは正式にモードレッドのマスターではないけれども、今まで通り、立香を通して魔力は供給するから」
ネックレス型の補助装置にそっと指で触れてみると、ほのかに温かみがあった。
「マスターではないけれども、わたしはあなたの……カルデア(ここ)で出来た初めての親友だから――お願い」
ふわりとはにかむと、モードレッドは肩をすくめた。次にテーブルに身をのりだすと、今度はこつんとなまえの額を叩いた。
「――仕方ねぇ。"親友"にお願いをされちゃあ聞いてやらないわけにはいかねーよな!」
ニッと歯を見せるモードレッドの表情は嬉々としていた。なまえは何気なく腕を伸ばす。モードレッドはなまえが何をしたいのかを感じ取ったのか、同じく腕を伸ばすとパシリとその手を握った。かたく握手を交わすと二人は大きく笑った。
食堂の入り口に深くフードを被ったアーサーが立っていた。中から聞こえてくる会話に、ふわりと微笑を浮かべていた――。
アイビーが送る花言葉
(剣を、名誉を預けよう。騎士として、我が親友に――!)
愛子||180417(title=空想アリア)